ACA138 感想 | 銀玉戦士のアトリエ

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今回はロシアのMMA団体「ACA」のレビュー記事です。

 

元々は「ACB」という団体名で活動していて、2010年代中盤辺りから急速に勢力を拡大していったロシアの新興MMA団体として、当ブログでも記事で取り上げていました。

 

https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12144466563.html

 

一時は世界進出を目指し積極的に海外興行を開催していた時期もありましたが、金満経営で多額の赤字を出してしまい、2017年に活動停止の危機に追い込まれてしまいます。

しかし2018年、チェチェン共和国の独さ・・・ゲフンゲフン、ラムザン・カディロフ首長が、ACBとWFCAというMMA団体を合併する事を発表。団体名も「ACA(アブソリュート・チャンピオンシップ・アフマット)」と改名し、ACB時代の反省を踏まえてロシア国内での興行開催を主体とする事で、リージョン(地域)に根付いたMMA団体へと発展を遂げていきました。

 

ACAはACB時代から「Young eagle」という若手育成興行を定期的に開催しており、育成枠から這い上がって強くなった選手達がACAをハイレベルな凌ぎ合いを削る舞台へと昇華していきました。実際UFCで活躍しているピョートル・ヤンやザビット・マゴメドシャリポフは元々ACB出身の選手ですし、パッと試合を見る限り北米や日本では無名の選手ばかりとはいえ、UFCやベラトールで通用しそうな選手がゴロゴロ居るように思います。ACAは北米MMAとはまた一味違う技術戦を繰り広げる事から、極々一部の超ハードコアMMAマニアから熱烈な支持を受けていたりします。

 

今回はそのACAから、3月26日に開催された「ACA 138」をピックアップ。

この大会ではウェルター級、ヘビー級、バンタム級の3大タイトルマッチが行われた他、ライト級グランプリの試合も5R制で行われました。

 

 

 

🏟ACAヘビー級タイトルマッチ🏟

⚪️👑🇷🇺サリムゲレイ・ラシュロフVSトニー・ジョンソン🇺🇸⚫️(1RKO勝利)

 

試合動画🔜https://youtu.be/Sb3QPxOHu74

 

ACAヘビー級王者トニー・ジョンソンはONE、ベラトールとビッグプロモーションを渡り歩き、極東ロシアの地でACAヘビー級のベルトを巻いたという異色のアメリカ人です。

対する挑戦者サリムゲレイ・ラシュロフは、ハビブ・ヌルマゴメドフと同じダゲスタン共和国出身の選手。15のKO勝ちがありながら7つの一本勝ちも持っていて、ACAで5連勝でタイトル挑戦権を獲得しました。

 

何だか腹回りが緩い感じの王者ジョンソン。試合はジョンソンのタックルを切ったラシュロフがリードジャブを目の部分に的確にヒットさせ、ジョンソンが一瞬苦悶の表情を浮かべたところで、ラシュロフが右のオーバハンドでダウンを奪いフィニッシュ。

サリムゲレイ・ラシュロフがACAヘビー級新王者に戴冠しました。

 

ラシュロフは堅い拳を持っていながらも豪快かつ正確無比な打撃を得意とする典型的なロシア系ストライカーといった感じで、一方で7つの一本勝ちがあるというサンボ・レスリングベースの強さも兼ね備えています。ACAヘビー級のベルトをロシアに帰還させたラシュロフの次の防衛戦が楽しみです。

 

 

 

🏟ACAバンタム級タイトルマッチ🏟

⚪️👑🇷🇺オレック・ボリゾフVSマゴメッド・ビブラトフ🇷🇺⚫️(5R判定勝利)

 

試合動画🔜https://youtu.be/k2PXFN6J8cU

 

ACAバンタム級王者マゴメッド・ビブラトフはWSOF、UFCと渡り歩いた選手。UFCではフライ級契約で戦っていましたが、ACAではバンタム級に階級を上げ王者に戴冠しています。コンバットサンボ仕込みの寝技と、スタンドでは回転系の技を得意としている選手で、ACAではバックスピンキックによる秒殺KO勝利を納めています。

 

筋骨隆々の上半身が特徴的な挑戦者オレック・ボリゾフは39歳のベテラン選手。一時は3連敗を喫していた時期がありましたが、その後3連勝でタイトル挑戦権を獲得しました。相手を一撃失神KOさせる右のオーバーハンドと、グラウンドではレスリングを得意としている選手です。

 

試合は序盤、グイグイとプレッシャーを掛けてくる挑戦者ボリゾフに対し、王者ビブラトフが左回りのサークリングでアウトボクシングを行使し、下がりながら左ミドルや右ローキックをヒットさせていきます。やや直線的に距離を詰めていくボリゾフに対し、ビブラトフは意表を突いたバックブローもヒットさせていきます。

 

しかしプレッシャーを緩めないボリゾフは3R以降攻勢を強め、アウトボクシングを行使するビブラトフに対し、強烈な内外のローキックと左ボディブローで脚にダメージを与え、スタミナを消耗させていきます。そしてビブラトフが逃げ切れなくなったところへ、ボリゾフが右ストレートをヒットさせます。

4R以降は逆にボリゾフがスタンドで攻勢を掛ける展開が目立ち、ビブラトフをケージ際に追い込みラッシュを仕掛けていきます。

ヘッドムーブでやり過ごしテイクダウンは切っていったビブラトフではありましたが、やはり疲労の色は濃く5Rにテイクダウンを奪われ捕まってしまいます。

ポイントを取られ何とか反撃したいビブラトフは回転系の技を繰り出していきますが、ボリゾフにバックステップされ不発に。

組みのプレッシャーを盾にスタンドでの打撃戦を優位に進め、ビブラトフのアウトボクシングを攻略したオレック・ボリゾフが、39歳にして自身初となるACAバンタム級新王者となりました。

 

 

 

🏟ACAライト級グランプリ🏟

⚪️🇷🇺ユサフ・ライゾフVSハクラン・ディアス🇧🇷⚫️(5R判定勝利)

 

試合動画🔜https://youtu.be/65HKp1eMnu0

 

ユサフ・ライゾフはMMA戦績19勝2敗の26歳のファイター。ACAでは王座経験はまだありませんが、強豪ひしめくACAライト級戦線において未来の王者候補として期待されている選手の一人です。

 

ハクラン・ディアスは元UFCフェザー級王者ジョゼ・アルドらが所属するノバウニオンのベテラン選手で、2012年からUFCに参戦していましたが、3連敗を喫しUFCをリリースされた後はACAで主に試合をしていました。

前戦では元ACAライト級王者アブドゥルアジス・アブドゥルバクホブ相手に惜しくもスプリット判定で敗れましたが、元王者相手に37歳ながら肉薄した試合を繰り広げました。

 

試合は1Rにライゾフがジャブでディアスをぐらつかせ、伸びのある右ストレートでダウンを奪ってポイントを取ります。

2Rは一転してディアスがテイクダウンを奪い、グラウンドで主導権を握ろうと互いにスクランブルの攻防が繰り広げられますが、3RではライゾフがTDに成功。ハーフガードの形から長時間のトップキープに成功し、ディアスのスタミナを削っていきます。

ケージ中央でハーフガードで塩漬けするって久々に観たような気がします。他のプロモーションだったら途中でブレイクが掛かりそうではあります。MM   A  P  LAN  ETさんがいかにも好みそうな攻防ではありますが、客の側からすれば観ていてあまり面白い攻防ではないです。

 

しかし4Rもグラウンドでライゾフに真っ向勝負を挑むディアスはTDに成功し、そこからお互いスイッチ等を仕掛けていきますが、スイープで上を取ったディアスが逆にポイントを取り返します。

シーソーゲームの試合となりましたが、最終5RではライゾフがTDを奪いトップキープに成功。柔術黒帯のディアスも下から足関節を仕掛けていく動きを見せていきますが、ライゾフは冷静に対処します。

 

判定はユサフ・ライゾフが勝利。

ライゾフは一時期フリーエージェントになって、UFCのデイナ・ホワイト宛に「Send Me Location📞」とツイートしていたのは覚えていますが、最終的にはACAと再契約した形となりました。この選手もUFCで観てみたかったんですけどね。

 

 

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 

それにしても、ロシアはこういう国内情勢ではありますが、普通にMMAの興行も行われていますし、ロシア選手のインスタを見てみると普段通りに穏やかな日常を過ごしている選手が多く見受けられます。公人だけに下手に政治的な主張は表立っては言えない立場だとは思いますが、当のロシア国内は「戦時中」と言うよりかは、ウクライナ侵攻は単にプーチンとその支持者達による私怨で勝手にやっているだけの戦争、という認識なのかもしれません。

 

そんなこんなな状況で、ACAは外国人選手の参戦は今後難しくなってきますでしょうし、ACAのスポンサーが矢😝満や🌹ちゃんのバックに居る黒服以上にアレで色々ヤヴァイですし、オクスリの検査がちゃんと行われているかどうかも怪しいところですし、日本人MMAファイターがACAを目指すのはキヨジレベルの選手でも危険極まりないので手を出さないほうが賢明だと思いますが、ACAは今後もリージョンに根付いた団体として、飛躍著しいロシアMMAをボトムから支えていく団体として発展していく事でしょう。

ACAのYouTubeチャンネルでは大会数日後に試合動画が無料でアップロードされているので、余計な不純物が混じっていない高度なMMAの攻防だけをとにかく堪能したい‼️ってマニアの方はオススメです。