2022年3月のMVP | 銀玉戦士のアトリエ

銀玉戦士のアトリエ

一応UFC、MMA、海外キックを語るブログ。ゆるーく家庭菜園や食べ物エントリーもあります。

Instagram ID:notoriousginchang

 

 

 

 

 

☆2022年3月 月間MVP☆

 

🇧🇾チンギス・アラゾフ 🇧🇾(K-1 WORLD GP 元スーパーウェルター級世界王者)

 

【ONE championship フェザー級キックボクシングGP VS シッティチャイ・シッソーピーノン戦 dif 3R判定勝利】

 

 

2017年6月に新生K-1のスーパーウェルター級トーナメントに参戦し、圧倒的な強さで優勝して日本のファンに衝撃を与えたチンギス・アラゾフが、激戦区70kg級の世界の強豪達が集うONE championshipフェザー級キックボクシングGPに参戦。

 

 

 

 

サミー・サナ、ジョー・ナタウットをそれぞれ1R KOで沈め、期待を裏切らない強さで決勝の舞台へと駒を進める。

相手はムエタイ王者、元GLORYライト級王者であり、ジョルジオ・ペトロシアンに匹敵する鉄壁の距離感を誇るサウスポーとしても知られる、シッティチャイ・シッソーピーノンだ。

 

 

 

1R、アラゾフはオーソドックスに、シッティチャイはいつものようにサウスポーに構える。

奥足へのローキックを当て、前足(右足)を上げるフェイントを見せるシッティチャイ。

アラゾフは中間距離をキープしながら、コンビネーションをガードさせてサウスポーにスイッチしての右フック、再びオーソに戻し左ハイキックをヒットさせる。

アラゾフらしいスイッチからの攻撃が見られたところで、シッティチャイは自身の生命線とも呼べる攻撃である左ミドルをヒットさせるが、アラゾフはミドルの打ち終わりに踏み込んでワンツーをヒットさせる。

アラゾフの右ストレートを喰らい少しフラつくシッティチャイ。アラゾフは軸足へのインロー、右ミドル、右ハイキックと打ち分け、シッティチャイのミドルの打ち終わりに右ストレートを再びヒットさせ、左の前蹴りを当てる。

通常のオーソドックス構えのファイターならば、サウスポースタイルに構えるシッティチャイの距離感と絶妙なフットワークによって攻撃が悉く空転させられるが、喧嘩四つの構えでの相手の左ミドルの距離でも届く長身のアラゾフの伸びのある右ストレートや蹴り技が当たった事によって、アラゾフがイニシアチブを取った第1ラウンドだ。

 

2R、左の上段前蹴りをヒットさせるアラゾフ。

シッティチャイは接近して組み付くが、クリンチの展開からアラゾフが右のショートアッパーをヒットさせる。

ベラトールキックボクシングで行われたジョルジオ・ペトロシアン戦では、クリンチ際の攻防が課題となり敗北を喫してしまったが、今回は課題をしっかりと修整してきた形だ。

 

 

 

 

そこから打ち合いの展開になるが、前に出るシッティチャイに対してアラゾフの意表を突いたバックブローがヒットする。

待ちサウスポースタイルがシッティチャイの普段の戦い方だが、シッティチャイより7cm背が高いアラゾフの多彩な攻撃を被弾し、自ら懐に入らなければいけない状況に。

シッティチャイは踏み込んで左ストレートをヒットさせるが、打ち終わりで足が居着いているところへアラゾフが右フック、右アッパーをヒットさせる。

アラゾフは右ミドル、ハイキックと当て、シッティチャイが前に出たところへ再びバックブローを合わせる。

相手の攻撃の打ち終わりを狙って、右ボディストレートなどの強烈な攻撃をしっかりと返していって攻撃の主導権を握るアラゾフ 。

シッティチャイはムエタイの首相撲の習性で近距離になると両手を伸ばしていくが、そうなると顎の側面や下のガードが空くので、そこへアラゾフが的確に右フックをヒットさせる。

このラウンドもアラゾフが取っただろう。

 

3R、ラウンドを取られもう後が無いシッティチャイのプレッシャーが強くなる。

前に出て左ミドルを当て、アラゾフは下がりながら右ボディストレートを当てるが、シッティチャイは首相撲からの膝蹴りをボディに当てる。

攻め疲れからやや疲弊した様子が見られるアラゾフ。シッティチャイは奥足ローから左ストレート、左ミドルをボディに効かせ、左ショートフックのカウンターを合わせ反撃するが、アラゾフもサウスポーにスイッチして右フックを見せてからバックハンドブローをヒットさせるなど、こちらも負けていない。

キックボクシングの世界トップファイター同士の高度な激闘となった決勝戦、アラゾフはいつもの試合と比較すると構えをスイッチしたシーンは少なかったものの、距離の魔術師でもあるシッティチャイを相手にしても自分の攻撃が届くギリギリの中間距離を基本キープし、ここぞの場面でスイッチや意表を突いた攻撃をヒットさせ、クリンチ際の攻防でもしっかりと攻撃を当てていたという、理詰めでムダの無い戦術が功を奏した形か。

判定はチンギス・アラゾフに上がり、ONE championshipフェザー級キックボクシングGPの第2代王者に戴冠した。

 

 

 

生まれはジョージア出身で、国籍はベラルーシ。

かつてK-1で活躍したアレクセイ・イグナショフが所属するチヌックジムの門を叩いたアラゾフは、少年時代からアマチュアキックボクシングで200戦以上の試合をこなし、16歳でプロデビュー。

若くして豊富なアマチュアキャリアに裏打ちされた卓越した技術は、アラゾフが10代のころから既に、K-1MAX王者ジョルジオ・ペトロシアンからも高く評価されていた。

70kg級裏最強とかねてから囁かれていたアラゾフだったが、2017年6月、K-1 Sウェルター級トーナメントにまさかの参戦。初めてキックボクシングの大舞台で実力を披露する事となったアラゾフは、下馬評通りにトーナメントを3試合勝ち抜き、K-1 WORLD GP Sウェルター級王者に戴冠。

その後も70kg級世界トップファイターの一角として強豪相手に勝ち星を積み重ね、ONE championshipフェザー級キックボクシングGPを制覇した。

 

 

身長181cmのロングリーチと、高い身体能力を駆使し、伸びのあるワンツーと叩き付けるようなミドル、ハイキックを得意技とする。

タイでの試合経験があり、ムエタイルールも得意である事から、中間距離での制空権の支配力は抜群の強さを誇り、蹴りでイニシアティブを取りつつ、アップライトに構えた上段のガードで相手のパンチをブロックし、蹴り足を取る。

最大の特徴は、まるで中軽量級トップMMAファイターさながらに頻繁に構えをスイッチングしてくるスタンスで、中距離でも距離感や攻撃を惑わしたり、コンビネーションの際にもガードしている相手の裏をかいて、倒す攻撃を当てる意図で使われる。攻撃に強弱と緩急を使い分け、蹴りとパンチの繋ぎ目の時間が短いので、相手としては非常に反応がしずらい。

また、ショートレンジでの細かいコンビネーションやカウンターで倒すスキルも身に付け、更にはオープンガードでステップを駆使しながら、躍動感に溢れたスタイルを披露するなど、キックボクサーとしての引き出しの多さは、まさに留まるところを知らない。

従来のキックボクシングの既成概念を破壊した変幻自在のスタイルでK-1、ONE championshipの二つの大きなトーナメントを制覇したアラゾフ。

次なる目標は勿論、現ONE championshipフェザー級キックボクシング王者、スーパーボーン・バンチャメックの首を取る事だ。