☆2021年11月 月間MVP☆
🇺🇸マックス・ホロウェイ🇺🇸(元UFCフェザー級王者)
【UFC FIGHT NIGHT VS ヤイール・ロドリゲス戦 dif5R判定勝利】
今年1月にカルヴィン・ケイターを相手に「MMA版ワシル・ロマチェンコ」と形容しても何ら誇張は無いストライキング技術を披露して圧勝した元UFCフェザー級王者マックス・ホロウェイ。
⭐️マックス・ホロウェイVSカルヴィン・ケイター 試合動画🔜https://youtu.be/kF17C2VKrK4 ⭐️
タイトル挑戦権を更に確実なものにするために、ランキング5位のヤイール・ロドリゲスと対戦する。
1R、ホロウェイはオーソドックスに構える。ヤイールはスイッチでインロー、アウトロー、右ミドルを当てる。
序盤から積極的にカーフキックを蹴っていってホロウェイのボクシングの基点を潰そうとするヤイール。ホロウェイが距離を詰めるとワンツー、キックへと繋げるコンビネーションでホロウェイをバックステップさせ、自分の間合いを作る。
一方のホロウェイもサウスポーにスイッチして関節蹴りでローの軸足を狙い、ワンツー、ボディストレートをヒットさせる。
ボクシングスタイルのホロウェイに主導権を握らせないため、スイッチしながらハイペースで蹴っていくヤイール。ホロウェイが踏み込んだタイミングでカーフキックを効果的にヒットさせ、右ハイキック、ワンツーを当てるが、ホロウェイも伸びのあるワンツーを返してゆく。
https://twitter.com/UFCEspanol/status/1459660198847647750
ホロウェイがスピンキックを放つも、瞬間に距離を詰めて組み付き、バックを取るヤイール。
これは外すも、入念にホロウェイ対策を立ててきたのが分かるヤイールの立ち上がりによって、ホロウェイはローの対処も含めてやや攻めあぐねている印象か。
ラストにホロウェイがプッシングでヤイールを倒し、トップポジションを取ってラウンドを終えるも、1Rはヤイールがポイントを取ったか。
2R、スイッチを繰り返してパンチを当ててゆくヤイール。逆にホロウェイが打ってきたら、ウィービングとバックステップ、サイドステップで柔らかく上体を動かして回避する。
この試合に向けてヨガのトレーニングを行ってきたというヤイール。股関節を柔らかくし、しなやかでキレのある蹴りが放てるようになったり、淀みの無い上体の動きはヨガトレーニングによる成果か。
だがホロウェイもヤイールのカーフキックに対し更に半歩踏み込んでジャブのカウンターを合わせ、ヤイールを下がらせてサウスポーにスイッチし、右フック、左ストレートとヒットさせる。
攻勢の糸口を掴み始めたホロウェイは、ヤイールを金網際に追い込みコンビネーションで攻め立てるが、ヤイールは上体を左右に揺らしながらウィービングを見せ、頭を下げたところへ突き上げるようにエルボーカウンターをヒットさせる。
コリアンゾンビ戦でKOの決め手となった技だ。
だがホロウェイも負けずと攻撃をヒットさせ、ヤイールの金網際でのウィービングの動きに対して、ボディに膝蹴りを当てて対応する。
ホロウェイは続けて首をがぶろうとするが、相手の手首を持つリストコントロールでディフェンスするヤイール。
ヤイールは自らグラウンドに引き込むが、トップポジションのホロウェイがパウンドを当てて、ヤイールも三角締めを狙いに行ったところでラウンド終了。
お互いに見せ場のあった互角のラウンドだ。
3R、ホロウェイはフランク・エドガーがテイクダウンの手段として用いるニータップのフェイントを見せてヤイールを下がらせ、右フック、飛び膝蹴りを当てる。
https://twitter.com/UFCEspanol/status/1459662653492760577
ホロウェイは膝蹴り、サウスポースイッチのワンツーを当て、シングルレッグでTDを取る動きを見せる。
ヤイールのカーフキックを効かされており、スタンドオンリーでは攻略が難しいと踏んだのもあるが、このラウンドに入ってからレベルチェンジを見せて揺さぶりを掛けようとするホロウェイ。
ホロウェイが序盤から手を焼いていたヤイールのローにスティッフジャブを合わせてバランスを崩させ、グラウンドでトップを取ったホロウェイ。
ハーフマウントからパウンドを打ち込み、肩固めを狙ってそのままマウントポジションを取る。
そこから強烈な打ち下ろしの肘パウンドをヒットさせてゆくホロウェイ。そこからバックを取ってパウンドを当て、チョークを狙おうとするが堪えるヤイールもグラウンドで潜る動きを見せて相手の足を取り、バックを取られた状態から脱出する。
ホロウェイはすかさずがぶりの体勢を取るが、リストコントロールで立ち上がる。
立ち上がり際に膝を当てたホロウェイ、ヤイールのパンチが大振りになっているが、何とここでダブルレッグでホロウェイにTDを奪う。
だがホロウェイも負けじとダブルレッグでTDに成功し、ハーフガードからパウンドを打ち込む。
このラウンドはレベルチェンジに成功しグラウンドの展開で支配したホロウェイが取った。
https://twitter.com/UFCEspanol/status/1459664198242390018
4R、明らかに3Rのホロウェイのトップコントロールとパウンドのダメージによって疲労の色が見えているヤイールに対し、ホロウェイは左右のボディブローを基点としたコンビネーションで攻め立て、膝蹴りからスタンディングギロチンを狙い、そのまま組み伏せてグラウンド状態へと持ち込む。
再びトップポジションを取るホロウェイに、ヤイールも下から足関節を取る動きを見せてエスケープを図るも、ホロウェイはこれをディフェンスしてバックを取り、パウンドを当てる。
ヤイールの立ち上がり際にも膝蹴りを当てるホロウェイ。ヤイールは焦りからパンチの振りが大きくなり、得意の回転技が空転する。総合力でホロウェイが試合を支配する展開となりつつあるが、ヤイールもフライングニーを当てたり、負けずに打ち返す。
このラウンドもホロウェイが取っただろう。
5R、ホロウェイも流石に疲労とダメージの色が隠せない中、最後の気力を振り絞り両者が打ち合う。
ヤイールもカーフキックを蹴った足が自ら負傷しながらも、パンチからミドル、ローへと繋げるコンビネーションを当てて反撃に出る。もはやUFCキャリア初期の頃のひ弱な印象の彼の姿は無い。
https://twitter.com/UFCEspanol/status/1459666051302633477
ここで胴回し回転蹴りという奇襲技を仕掛けるヤイールだが、これを難なくバックステップでかわしたホロウェイが、グラウンドに入りトップを取る。
しかし下を取られていたヤイールがここでスイープを成功させ上を取り返す。ホロウェイも三角締めを仕掛ける動きを見せてエスケープで潜り、ヤイールがギロチンチョークを狙うも、ホロウェイはリストコントロールで立ち上がりスタンドに戻る。
ラスト、ヤイールのスピンキックのタイミングにホロウェイが距離を詰めてケージに押し付けたところで最後のラウンドが終了。
戦前はホロウェイ圧勝の声が多かった中、予想外のヤイールの健闘とタフネスぶりに苦戦させられた試合ではあったが、終わってみればタフファイトの中でもMMA的なゲームメイクを行使し、戦況を打破していったマックス・ホロウェイが判定で勝利を手にし、対戦相手であるヤイールと共に健闘を讃え合った。
ハワイ出身。20歳という若さでUFCデビューを果たすものの、初期の頃はコナー・マクレガー、ダスティン・ポイエーといった、後のビックネームを相手に敗北を喫していた。
だが、若さゆえの成長度合いの早さと、持ち前の高い打撃技術を武器に、段階を踏んだマッチメイクを次々とクリアしていくと、2014年以降破竹の9連勝を果たす。
その実績が認められ、2016年12月、UFCフェザー級暫定タイトルマッチを、前ライト級王者アンソニー・ペティスと争い、得意のボディブローを効かせて3RTKO勝利で暫定王者のベルトを巻く。
2017年6月、当時フェザー級正規王者だったジョゼ・アルドと、敵地ブラジルで王座統一戦に挑み、3RTKO勝利で王座統一を果たし、2019年12月に現フェザー級王者アレックス・ヴォルカノフスキーに敗れるまで、通算3度の王座防衛を果たしている。
ボクシングスキルが非常に高く、高身長とロングリーチという、自身の強みを最大限に生かした距離感の良さと制空権の支配力を持ち併せており、左右どちらでもスイッチで戦える事で、あらゆる打撃スタイルに対応した試合運びが出来る。
特にジャブ、右ストレートといったノーモーションのストレート系パンチは相手選手にとっては反応しずらく、正確無比に当てる技術と、蹴りも織り交ぜた上下左右の打ち分けを組み合わせる事で、的を絞らせない。
パンチに無駄な力みが無く、テンポの良いコンビネーションを打ち込む事によって、打ち合いの展開においても一方的に優位に立つ圧倒的なボクシングテクニックを備えている。
更にはムエタイレジェンド、サーマートの指導を受けた事によって、エルボー等のムエタイ技術の習得にも貪欲だ。
近年は練習におけるスパーリングの回数を抑えた事で、キャリアと共に蓄積していく脳へのダメージのケアに務めると同時に、豊富な試合経験とリモートによる練習で培われたポジショニングと基礎動作の反復練習を重点においた「頭を使った練習方法」によって、練習の効率化が上手く図られている。
「追われる側」の有名選手として、研究し尽くした最強のチャレンジャーを経験値と総合力とタフネスで退けたホロウェイの次なる照準は、もちろん現王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーへのリベンジと王座奪還だ。