UFC249 フランシス・ガヌーVSジョルジーニョ・ホーゼンストライク 「豪腕KOの裏側」 | 銀玉戦士のアトリエ

銀玉戦士のアトリエ

一応UFC、MMA、海外キックを語るブログ。ゆるーく家庭菜園や食べ物エントリーもあります。

Instagram ID:notoriousginchang

🏟UFC249 (2020 5/9) ヘビー級ワンマッチ🏟

⚪️🇨🇲フランシス・ガヌーVSジョルジーニョ・ホーゼンストライク🇸🇷⚫️(1RKO勝利)

 

 

新生K-1ウェルター級王者の久保優太が、Twitterで自身の試合の攻防におけるフェイントの解説を行っていて、格闘技ファンの間で最近話題を呼んでいる。

 

その中で久保は「覇気」のフェイントについて取り上げているのだが、要するにこれは本命の攻撃(例えば左ストレート)が来るという「覇気」を出す事によって相手のディフェンスの反応の裏を突き、相手がヘッドスリップでストレートを避けるという反応を引き出したところへ、逆方向から真の本命の攻撃(右フックや右ハイキック)でフィニッシュするというテクニックだ。

 

https://twitter.com/K1_Kubo_Yuta/status/1260222621523689472

 

格闘技の一流選手同士の攻防においては、いくらKOできる打撃を持っていようと、安直でワンパターンな攻撃では相手には当たらないので、実質フェイント等を駆使した読み合い合戦を繰り広げる事によって試合が成立していると言っても過言ではない。

 

先日行われたUFC249で、ド迫力の秒殺KO劇が生まれたフランシス・ガヌーVSジョルジーニョ・ホーゼンストライクにおける、ガヌーの一連のフィニッシュシーンの流れも、相手の裏を突いたフェイントが基点となって生み出されたものだ。

 

まずはその一連の流れを解説していこう。

 

📀参考動画🔜https://twitter.com/MMAassault1/status/1259327364670132226 📀

 

ガヌーが左の捨てパンチを見せてから踏み込んで、右のオーバーハンドを放つ。

 

ホーゼンストライクはスウェーとバックステップで右の大砲を避ける。

だが大男が全力でパンチをブン回す威圧とスピードの前に、下がりながらも体勢は崩れてしまっている。

ガヌーも全力で右オーバーハンドを打ったので体勢が前のめりになっているので、ホーゼンストライクが左のインローやカウンターを当ててバランスを崩そうとするが、ホーゼンストライクの打撃を放つ時のフォームバランスが崩れているので、当たっても威力が出ない。

右オーバーハンドを空振りされながらも、なおもパンチを振り回し、突進してくるガヌー。

通常のセオリーではありえない、少々強引な攻撃ではある。

だがスイッチしながら体重移動で左右のパンチを打っており、ガヌーの元々体幹の強さもあって、空振りしながらもキレのあるパンチが打てている。

バランスを崩しながら下がるしかないホーゼンストライク。

ガヌーの空振りの右がパーリングのような形でホーゼンストライクの右腕を下げさせた事で、顔面のガードが空いた形になったところへ、ガヌーの左フックが炸裂しフィニッシュとなった。

 

久保優太のソレと若干解釈が違うのかもしれないが、ガヌーが最初に空振りした右のオーバーハンドも、全力で振り回しているので、「覇気」を込めた打撃と言っていいだろう。

ガヌーは前々回の試合で、カーティス・ブレイズをこの右オーバーハンドでKOしており、ホーゼンストライクとしてもガヌーの右に対しては充分に警戒して対策を講じていたはずだ。

だが、空振りした後のガヌーの突進フック連打に関しては、ホーゼンストライクは想定していなかっただろう。

そのため、ホーゼンストライクは下がりながらも体勢を整える事が出来ず、それよりもガヌーの突進フックのほうが速かったため、フィニッシュに至った。

 

ちなみに中軽量級や並の選手の試合の場合だと、ガヌーの右オーバーハンド空振りからの強引な攻めは「悪手」であると言える。

それこそ、コナー・マクレガーがジョゼ・アルドを13秒で葬った試合のように、相手選手に下がりながら冷静にカウンターを合わせられて沈んでいたはずだ。

だが、フランシス・ガヌーのような身体能力のあるヘビー級の大男の場合だと、突進して空振りパンチを見せられただけでも、相手は相当な威圧感を感じるはずだ。

 

ガヌー陣営がそこまで考えた上でこのフィニッシュシーンを編み出したのかは定かではないが、渾身の右オーバーハンドをも捨てパンチにしてフィニッシュの本命パンチへと繋げていく一連の流れは、まさしくフランシス・ガヌーという、選ばれた星の下で生まれた選手にしか成し得ない芸当であると言えるだろう。