2020年6月のMVP | 銀玉戦士のアトリエ

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☆2020年6月 月間MVP☆

 

🇺🇸コディ・ガーブラント🇺🇸(UFC元バンタム級王者)

 

【UFC250 VS ハファエル・アスンサオ戦 dif2RKO勝利】

 

UFC元バンタム級王者でありながら、王座陥落後は3連敗中と崖っぷちに追い込まれ、現在ランキング9位となってしまったコディ・ガーブラントが、復活を懸けての一戦に挑む。

相手はUFCバンタム級で長年に渡り裏最強と称されてきた老獪なベテラン、ハファエル・アスンサオだ。

 

 

1R、互いにオーソドックス、アップライトに構える両者。

じわりとプレッシャーを掛けてくるアスンサオに対し、ガーブラントは右に左にサークリングしながら、右ローキック、左インローを当てる。

アスンサオのローキックに、右ストレートのカウンターを合わせるガーブラント。

ロングレンジで互いにミドル、回し蹴りを放ち、バックステップで避ける両者。

ガーブラント、アスンサオ共に接近戦でのカウンターが得意な選手ゆえに、序盤はキックの遠い間合いでフェイントを掛け合いながら、懐に入って一撃を当てる攻略の糸口を探っていく。

ガーブラントが左リードのフェイントを入れてアスンサオのパンチを誘い、前足に重心が掛かったところでキレのある右カーフキックを当てるガーブラント。

ガーブラントの踏み込みワンツーにアスンサオがカウンターを合わせようとするが、ガーブラントは左のサイドステップでそれを回避する。

終了直前、アスンサオのスピンキックをガーブラントが金網際でノーガードでかわしたところで第1ラウンドが終わる。

ディラショー戦、ムニョス戦と前2試合では打ち気に走り過ぎてしまったのがガーブラントの敗因だったが、今回はアスンサオとの心理戦に冷静な立ち回りで対応しているようだ。

 

2R、いきなりトリッキーな下段蹴りを見せるガーブラント。

アスンサオがスピンキックを放ったタイミングでガーブラントが浴びせ倒してTDを奪い、相手の立ち上がり際にハイキックを放つ。

このラウンドでサウスポーへのスイッチを見せ、距離を撹乱しようとするアスンサオ。

だがガーブラントも対サウスポーに優位なキレのある右ミドルを当て、アスンサオのスピンキックを空転させて、右ストレートも肩でガードする。

 

ここで、上下動に小刻みにダッキングするフェイントでプレッシャーを掛けていってアスンサオを下がらせるガーブラント。

タックルへの移行も兼ねたフェイントで、ガーブラントは近付いて組み付こうとするが、アスンサオも素早く脇を差してディフェンスする。

ガーブラントが左のスティッフジャブで踏み込んだところへアスンサオがワンツーを放ち、それをスウェイバックで避けるガーブラント。

この習性を見抜いたガーブラントがアスンサオの左に右のカウンターを合わせ、フラッシュダウンを奪う。

アスンサオはダイレクトライトや回転蹴りもスウェイバックでかわされ、スイッチのフェイントも効果無く、攻撃のリズムに乗り切れない。

逆にカウンターパンチャーのアスンサオに対しての細かなフェイントが効果的に発揮されているガーブラントは、メイウェザーのような飛び込み左フックを当てるなど、徐々に自分のパンチが当たる距離を掴んできたか。

ガーブラントはドミニク・クルーズを撃破し王座に戴冠した時のような、 https://ameblo.jp/fanroad-gindama/entry-12233983278.html 相手を翻弄する冷静な戦いぶりを取り戻す試合運びを行使している。

 

ラウンド終了直前、アスンサオの右ミドルをガーブラントがキャッチする。

金網を背負うガーブラント。不敵にもノーガードのスタイルでアスンサオを誘っていく。

そしてアスンサオがジリジリと距離を詰めていって右フックを放ったタイミングで、距離のセンサーが反応したガーブラントが大きく上体を沈めて溜めを作る。

そのフェイントに反応して目線を下に落とすアスンサオ。その刹那、ガーブラントが居合い抜きのようにして上体を起こしながら下から上へと振り抜いていく右のスイングフックをヒットさせ、アスンサオは失神。

 

☀️フィニッシュシーン動画🔜https://twitter.com/_jrickz/status/1269476357123330053 ☀️

 

この距離、このポジショニング、この角度、このタイミングならば間違いなく相手が倒れるであろう事を本能的に察知した上で、迷い無く振り抜いた値千金の一撃は、ラウンド終了のブザーとほぼ同時にアスンサオを失神させ、マットに沈める。

難敵アスンサオをKOしたコディ・ガーブラントが、実に自身で3年半ぶりとなるUFCでの勝ち名乗りを受けた。

 

 

 

 

幼少の頃からレスリングを習い、15歳で伯父の元でボクシングも始め、アマチュアボクシングでは32勝1敗の戦績を残す。

2011年にMMAへ転向、2015年にUFC入りしてからは水垣偉弥、トーマス・アルメイダといったバンタム級ランカー達を1RKOで葬る快進撃を見せ、デビューから5連勝で当時のバンタム級王者ドミニク・クルーズとタイトルマッチを争い、2016年12月にUFCバンタム級王者に戴冠する。

2017年11月にTJ・ディラショーとの初防衛戦に臨み、2RTKO負けで王座から陥落。

その後のダイレクトリマッチでも敗れ、ランカーであるペドロ・ムニョスにもTKO負け。勢いに乗っての王座戴冠から一転し、ガーブラントは泥沼の3連敗に陥る。

好戦的でカッとなりやすい性格ゆえに、打ち合いの展開になった時に自分をコントロールできず、そこへ相手選手にカウンターを合わせられて敗北したのが、過去2戦においてのガーブラントの一番の敗因だった。

新たなスタイルを模索するために、元UFCライト級王者フランク・エドガーを育てた名伯楽、マーク・ヘンリーに師事を受ける。

本来の自分のスタイルに新たな要素を加え、冷静に試合運びを行使するエドガーイズムを注入された事で意識改革に成功した事が、今回の劇的な勝利を呼び込むきっかけに繋がった。

 

フック系、ストレート系のパンチ共に、肩関節の稼働域の広さから想像以上に伸びとハンドスピードがあり、その切れ味とアマボク仕込みの精度の高さで持って、幾多のKO劇を生み出している。

MMA的な遠距離用のボクシングとは異なる、相手の死角を突くポジショニングに深く踏み込んだ近距離用のボクシング技術でもって、ナックルを的確に相手の急所に捉える。

ボクサーでありながらジャブはあまり多用しないスタイルだが、ローキックや前蹴りなどの蹴り技でイニシアティブを取り、相手が接近してきたらパンチで仕留める二段構えのスタイルだ。

更にはレスリングをバックボーンに持ち、所属するチームアルファメールでユライア・フェイバーらと強度の高い練習を積んでいる事から、グラウンド&パウンドやTDを取られない腰の強さにも定評がある。

衝撃的なKOで歓喜の勝利を飾り、復活を高らかに宣言した元王者は、新世代の台頭により更に激戦区と化したUFCバンタム級での王座奪還に燃えている。