落下の王国のすべてThe Fallmania -17ページ目

落下の王国のすべてThe Fallmania

ターセムが紡ぐ現代人のための癒しの千夜一夜物語
2008年日本公開された「落下の王国」について語るブログです
ミュージックビデオを撮るようなシックな監督ですが…
やっぱりインド人
歌って踊るシーン・・・1か所あります

 

アレキサンドリアは本館の教会へ行って、聖餐のウエハーを盗み食いしている。

 

ロイはそれに気づいて、本館の薬収蔵部屋から薬を持って来させようとする。

 

このときの会話はものすごく難しい。

 

5歳の子供が理解できる内容ではない。

 

Are you trying to save my soul?

とロイが何回も訊く。

 

Eucharist(=聖餐)という言葉も何度も使っている。

 

これはわざと。

 

アレキサンドリアが理解できるわけないように話して、

 

彼女の不安な気持ちを煽っている。

 

薬を持って行って本当にいいのだろうか?

 

カティンカの動きもだんだん怪しくなっていく。

 

 

コーヒーがこぼれて、血となって滲みていく。

 

ロイの企みがはっきりする場面。

 

 

 



インド人がその妻の死を嘆き悲しむ場所、

青い部屋
シティパレス内

大きな銀製の壺なんかを見る通常のシティパレスの見学区域ではなく、マハラジャの居住空間域内にある。


内部撮影は禁止


それでネット上にこの部屋の画像が落ちて無かったというわけ。

 

だいたいジャンタルマンタルが世界遺産になったのは2010年で、

この映画の日本公開は2008年だから、誰も知らなかったこんなところ。

見学料はいまは3000ルピー、日本円で5000円ほど。

 

驚くほど高い!

 

だから、ツアーガイドさんも見学、全然オススメしてくれない…

 

それで、ツアーで行ったヒトは誰もここを見ていない…

 

ガイドさんの予定には最初から入っていないんだもん。


見学は

青い部屋

のほかに、

赤い部屋、

黄金の部屋、

ガラスの部屋

の4部屋を見ることができる。
 


 

 

ロイを起そうとする、じゃなかった、

お休みのチュ〜をするアレキサンドリア

病院シーンはとにかく先に撮ってしまった「落下の王国」、
このシーンではカティンカは前歯が生え始めている。

「落下の王国」は2006年に完成しているが、

(撮影期間は4年間というので2002年ぐらいから始まった?)


撮影が始まった時のカティンカ(1997年3月21日生まれ)の年齢は5歳?
だからこれは6歳ぐらいか?

ターセムは親戚の子供たちを見て、演技しないで素のままに動くのは4歳だと感じていて、そのぐらいの子供を探して回っていた。

 

カティンカを見つけたとき、この子が大きくならないうちに映画を撮ると決めた。


このチュ〜のあとは帽子に隠れて見えにくいが、

ロイのアゴにチュ〜する。

 

 

下を向くアレキサンドリア

通常アレキサンドリアはまっすぐ前を見ている。
視線を下に落とすことはまずない。

だからこのシーンはとても印象的だ。


伏し目がちのアレキサンドリアはこれからの話の不吉な展開を予期しているかのよう。

このあとのシーンではカティンカはフレームの外に出てしまう。

これは大変なことだ。


リー・ペイスの一番大きな仕事はカティンカをフレーム内に入れておくこと。

 

なぜってターセムは二人をカーテンの中に入れて

 

カーテンに穴を開けて撮影していたので

 

位置がずれたら撮影できなくなる。

 

************

YOMIURIによるターセムインタビューによると、

「ベッドの周りにカーテンをかけて、穴を開けました。
そのうち撮影されるんだろうとは思っていたでしょうが、

ほとんど2人でただそこでしゃべっていただけという感じです。

それぞれのシーンの方向を教えて、1、2回撮影したらちょっと休憩…。

しばらくしゃべらせていい雰囲気になったらリーに演技を始める合図を送りました。


普通の会話の中で彼が演技を始めました。


それにカティンカが気づいているときもあれば、気づいていないときもありました」

二人をおしゃべりするだけにしておいたターセム。


カーテンで遮られているので、カティンカはリーと二人きりだと思って、ターセムへの文句をたれた・・・

 

 

 

ダーウィンの処刑

こんなに残酷なシーンなのに、このシーンを見ている観客の目には美しく映る。


なぜそう感じるのかと言えば・・・・

これはターセムがゴヤの

「1808年5月3日プリンシペ・ピオの丘での銃殺 」

を意識している結果だ。


観客はどこかで見たことのある芸術を無意識に思い出している。

ターセムは語る
「ゴヤみたいでしょ?」

 

 

ゴヤの

「1808年5月3日プリンシペ・ピオの丘での銃殺 」

はナポレオン支配に抵抗するスペイン市民の処刑を描いたもの。
 

同様に、

イギリス統治から独立するインドの気持ちかもしれない・・・


手を上げているのはキリストを意味するという。

ま、ターセムはインド人だから、

ダーウィンに手を上げさせることはなかった・・・
 

 

 

ドイツのローエンシュタイン兄弟が製作した「落下の王国」中のパペットアニメ。


アレキサンドリアの頭の手術のときに使われる。
ピンで留められている蝶とアレキサンドリア。

 

 

 

パペットアニメを製作したローエンシュタイン兄弟は双子。

1962年3月20日生まれ。


1989年に発表した7分のショートアニメ”Barance”で1990年のアカデミー賞アニメ・ショートフィルムでオスカー受賞。

Balance" by Christian & Wolfgang Lauenstein

 

クリストフとウォルフガング・ローエンシュタインは、一卵性双生児。
1964年にヒルデスハイム(北ドイツ、ハノーバーから南へ30キロ)で生まれる。

1983年に高校卒業し、
クリストフはカッセル大学で、
ウォルフガングはハンブルグアートアカデミーで、

両者ともに映画を学んだ。

共同製作は
「Stranger」1980
「Sidetrip」1982
「Pthecanthropus Erectus」1986
「Balance」1988

そのほか、CM多数。

 

この映画のパペットアニメの製作はクエイ兄弟ではありません。

 

 

不安気なりー・ペイス

カティンカにリアルな演技を求めるターセムは、結局カティンカだけでなく、スタッフの大半を欺くことをリー・ペイスに強いる。
 

つまり、リーは病院のシーンを撮り終わるまで車椅子を降りることができなかった。

介助されるリー・ペイス


リー・ペイスにとって、子供をはじめとして仲間全部を騙すなどとは大きな心の負担になったことだろう。

撮影時のリーは「ソルジャーズガール」のカルぺニアを演じているだけで、まだ無名だった。


事実を知っていたのはターセム、ニコ、エイコ、そのぐらいだった。
脚本家のダン・ギルロイですら知らなかった。


ダン・ギルロイはImdbをチェックして、リーに「リー・ペイスでしょ?」と尋ねたが、事実が発覚するのを恐れたリーは父親のミドルネームに「ロイ」という名前が入っていたことから、「私はロイだ」と答えた(ムチャクチャな話だ〜〜)

ターセムは、物憂げな怪我人のリアルな演技をリーに要求した。


鬱屈したロイの心はそのときのリー・ペイスの葛藤そのものだろう。

 

というわけで

 

病院シーンの撮影中、ロイと呼ばれていたリー・ペイス

ターセムはスタッフたちに”ロイ”は歩けない障害者だと思わせていた。


”俳優”だと知られないよう、実は健常者だとわからせないよう、カティンカはじめスタッフ全員にそれを知られないように名前を伏せた。

リー・ペイスはそれはそれでやはり”ロイ”と名乗っていた。
それがターセムの言いつけだから聞かないわけにはいかないでしょ。

リーの父親のミドルネームが”ロイ”だから、ま、それでもエエのではあるが、リーはそれなりに落ち込んだ・・・
ターセムは鬼だから〜なんでもやる。

<Family Sheet>
リーのお父さんの名前は、
James Roy Pace
(Father: Alton Pace   Mother: Ima Lee Utley)

リーのお母さんは
Charlotte Kloeckler

子供は3人、

Lee Griner Pace   ←リー・ペイス
Sally Jane Pace   ← 妹
William James Pace← 弟

リーは車椅子で過ごし、撮影の8週間ほどターセムはスタッフを欺き続ける。


病院でのラストシーンを撮ってから、リーが車椅子から立ち上がると、カティンカは笑顔を見せるも、あまりのショックに声も出ない、

が、

クランクアップまで秘密にしたということではない。

 

南アフリカでの病院シーンを先に全部撮って、

そのあとロケに出かけた。

 

 

 

 

 

ジョードプルの要塞でエヴリン姫と別れるロイ。

 

姫に言うセリフは

”Follow your heart”

 

どこかで聴いたことあるな~と思ったら、

 

これは2005年にスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で行ったスピーチからとったのだろう。

 

落下の王国は2006年に完成しているので、2005年はまだ撮影中だった。

 

ジョブズはスピーチの中で follow your heartを2回ほど使っている。

 

have the courage to follow your heart and intuition

 

ジョブズのこの言葉はどんなにターセムを力づけたことだろう。

 

自費で映画を撮るって大変なことだ。

 

ターセムは

「年をとって、他人の撮った映画をただ見ているなんてイヤだ」と言っている。

 

 

弾が当たって蓋の開いたロケットの中に

 

父からのメッセージが。

 

Always follow your heart

 

 


インド人は妻を総督オウディアスに拉致され、
その妻が死んだことからオウディアスへの復讐を誓う。

インド人には名前が無い・・・

なぜ名前が無いかというと・・・

”インディアン”という言葉の定義が、最初からロイとアレキサンドリアでは違っていて、ファジーなままに物語を紡いでいるから。

ロイはアメリカ人だから

”インディアン”というのはアメリカインディアン、つまりアメリカ大陸のネイティブインディアンを意味し、

アレキサンドリアはルーマニア移民であるので

”アメリカインディアン”をまだ見ていない。

 

アレキサンドリアのイメージするインディアンは

オレンジ農場で働くシーク教徒のインド人を指す。

そこをわざと曖昧にするべくこの”インド人”には名前がない。

始まりの鉄道シーンにいるのはアメリカインディアンであるし、
最後、果樹園にいるオレンジもぎはインドから来たインド人ということになる。

ロイとアレキサンドリアのイマジネーションは噛みあっていない、というか、映画で描かれるものはアレキサンドリアの視点からのものだ。

 

ロイのイメージするインド人 ↓

眉を掻く

ターセムはここでred indianという言葉を使っている。
彼らが顔や上半身を赤く塗ったことからそう呼ばれているという。

 

つまりアメリカ大陸のインディアン。

 

インド人の”妻”という英単語は”squaw”というアメリカインディアンの女性の呼び名を使っている。


”家”という単語もアメリカインディアンの住居を指す”wigwam”と表現されている。

 

インド、ジャイプール シティパレスで

アメリカインディアンの単語を使って説明している、って…

 

これもコミュニケーションギャップ。