アバター3D…家でじっくり見るととんでもない情報量が | ちょっとそこまで☆増刊号

ちょっとそこまで☆増刊号

週末のプレシジョンスポーツ&ドマーネ4.5親父★fairleader

さてアバター3Dブルーレイのレビュー。映画そのものが面白いかどうかでなく、自宅テレビで見る3Dがどんなものかという視点で書いていく。この映画が好きで何度も見ているような人にとって、3Dでどれだけ世界が広がるかだ。

だからネタバレもあるし、シーンの細かい解説も含む。まだアバターそのものを見ていない人は、通常版を見て気に入ったら読んでみてほしい。なんじゃこの映画は?と思った人は読む必要がない。基本路線は「やっぱりアバターすげー!」なので、そのつもりで。

本当は画像をたくさん載せたいところだが、さすがにそれはまずいので、文書ばかりになる。ご理解下さい。

●3Dは奥行の表現
2時間の尺で見せる映画は、テーマパークのように目の前に過激に何かが飛び出してくることはほとんどない。基本的に、画面の少し手前から奥に向かって仮想空間が広がっている。モニターの平面がどこにあるかは分からなくなっていて、手を伸ばすと指が画面に当たって初めてそれと分かる。画面が溶けてなくなっているようで面白い。

だから、突然ナイフが目の前に突き出される、みたいな手前飛び出し方向の演出を期待していると肩透かしになる。あくまで自然な立体感だ。前景、メイン、遠景が効果的に並べられ、望遠レンズのボケが実際に遠近感をともなって描写される。

アバターでは、冒頭でコールドスリープから覚めたときにジェイクの目の前に浮いている水滴。雨ではないので数は少ないが、無重量状態を表すとともに、一人用のコンパートメント空間の狭さも表現している。(この水滴、何なんだろう。ジェイクが口を動かしているから、覚醒時の給水とか?)

そしてそのあとの巨大な船内のシーン。はるか向こうまで吹き抜けが続く空間は、狭いコンパートメントとの対比が鮮やかで、3D本領発揮の演出だ。

船外からのシーンでは、3Dになることで船の構造がすっきり見える。2Dだとゴチャゴチャ重なって分かりにくくなる細かい構造物が、きちんと把握出来るようになるので、結果的に情報量も増える。実物と言うよりまるで模型のような精密感が、実際にミニチュアを所有しているような気分にさせてくれる。

●空間に浮かぶ立体テクスチャ
たとえば雨粒や雪、霧や煙、飛び散る火の粉や灰、無数に飛んでいる羽虫。これらは3D映画の空間では、空間そのものを表現する立体テクスチャとなる。無色透明な空気は見えないので、空気そのものを立体表現することはできない。しかし、そこに雨粒や無数の羽虫を浮かべることによって、空間の表現が可能になるのだ。飛出しびっくり効果でなく、時々さりげなくかなり手前に定位するこれらの映像にはっとさせられたりする。

ジャングルのシーンで普通に見られる無数の羽虫は、入念に作り込まれた生態系の設定を表すだけでなく、立体感を出す効果も担っている。そして時々、かなり手前を飛んでいて、思わず手で払いのけそうになる。

クラゲのような聖なる木の精が、ジェイクのまわりを無数に飛ぶシーンも見事だ。タンポポの綿毛のようにはかない生物が漂う、繊細で緊張感のある空気感は3Dならではのものだ。

●ガラス、水槽、キャノピー
これらは透明な素材でできている。綺麗に掃除されていれば、そこにガラスやアクリルがあることは分からなくなるはずだが、3Dでは綺麗にしてはいけない。ほどよく汚れているのが驚くほど立体感を増すことになる。

アバターではこれを熟知して、演出効果としてわざと汚しが入っている。手のあとや泥汚れ、くもり、流れる雨粒など、視界の邪魔になりそうでならないさじ加減が絶妙だ。

アバターを培養していたタンクを洗浄するシーンは、特にストーリーに影響しないラボのルーティーンワークだが、ここも3Dの効果が良く出ている。

ガンシップでホームツリーを破壊するシーンでは、飛んでくる矢尻が操縦席のキャノピーに傷をつけている。実際に傷が付くという設定なのか、傷ではなくただの汚れなのか、演出上の嘘なのか、いずれにせよ立体感が増すことには変わりがない。

シャトルのコクピットや基地の管制塔にある各種モニターは、透明なディスプレイに明るい文字やグラフィックが浮かび上がっている。そのパターンが2Dのものと3Dのものがあることに気がついたのは、自宅で3Dメガネで見てからだった。さすがキャメロン監督。とことん作り込まれている。モニターを一つ一つチェックするだけのために、このシーンを何度かリプレイした。オモチャ箱を探しているような楽しさ。映画館で見ているときには、とてもそこまでチェックするだけの余裕はない。ジェイクがホームツリーの構造を説明するホログラムのメインディスプレイは、2Dでもそれと分かる古典的な表現方法だ。

3Dで見ないと気づかないものは他にもある。ハレルヤマウンテンのモバイルリンク施設。ここにグレイスが村で学校をやっていたときのスナップ写真が貼ってある。これがホログラムの立体写真なのだ。2D版でそれを説明する演出が省略されているので、3Dで見るまで全く分からなかった。例えば押井監督のイノセンスでは、ホログラムの少女の写真を回して見せて表現している。アバターはこういう非常に細かいところまで3D前提で作られている。

その他、飛行シーンや高い山から見下ろすシーンなど、3Dの王道的な見せ場はいちいちあげていたらキリがない。キャッチコピー通り、見るのではなくそこにいる体験となる。公開当時、ネットで「パンドラに行ってくる」という表現がされていたのも納得できる。こうして書いていても、また繰り返し見たくなってくる。

にほんブログ村 PC家電ブログ AV機器へ
にほんブログ村