空はどこから/猫の長靴 -32ページ目

空はどこから/猫の長靴

日記は苦手だけど、何があって何を思ったのか、あんまり分からなくなるのもねぇ(´Д`)
だからちょっとだけ、記録を残します。

人生に影響を与えるようなー冊に出会う事ってある
若い頃に読んでいたら、その後の生き方も違っていたかも知れない、という本がある

サマセット・モーム『人間の絆』
読んだのは、五十を過ぎてから――あまりに遅かった

中学生の頃、英語の授業で教師が語った
I don't mind――
何を言っても誘っても「行ってもいいわ」と投げやりな態度、愛情を受けることに鈍感な女――モームのヒロインのセリフだね

兄が文庫本を持っていたので、中・短編は読んでみた
『雨』『赤毛』…… う~ん、筋の運びが小賢しい。ドンデン返しにドヤ顔が垣間見える。私は好きになれなかった

そして最近になって、あの時の教師の言葉が気になりだした
I don't mine――向けられる愛情に無頓着な女――その正体ってなんだろう


どの小説か分からなくて、とりあえず『人間の絆』を読んでみた
これはモームの自伝的な小説、これを乗り越えなければ、次のステップに進めない、という強いこだわりで書いたという。
主人公フィリップの幼少時から始まる、出口の見えない散漫なストーリー展開、でも「書かずにいられない」執着心を感じる作品だ。

この小説じゃなかったのかな?と思いながら読み進めた中盤――

ついに「彼女」が登場する!

ミルドレッド



主人公フィリップは、彼女によって、人生を散々に掻き乱される。
その献身に対して、ミルドレットは冷淡そのもの「あなたを好きだったことなど一度もない」と平気で言い放つ
そしてフィリップを誉める言葉はただ一つ「本当の『紳士』はあなただけよ」

ウェイトレスとして登場した彼女は何度も彼を裏切り、姿を消す
そして現れる度に身を持ち崩している

街娼になった姿をフィリップが見つけ、なけなしの財産を切り崩して生活を保護する。
ミルドレットは、その「親切のお礼」に身体を与えようとして、フィリップに拒絶される
――歯を剥き出し唾を吐いてフィリップを罵った末、家中の家具を破壊して出奔する

それでも、夜の街でフィリップの目はミルドレットの姿を追い、面影の似た女に はっとする

この小説中、ミルドレットを賞める表現はひとつもない。

痩せすぎで血色が悪く虚言癖があって無教養――
フィリップが自らを犠牲にして彼女に尽くす理由は全く明かされない

この蒙昧さはなんだろう
何故フィリップはこんなにも愚かになれるのか

その理由を考えてみて、やがて気がついた。
フィリップがミルドレットに惹かれる理由?
――「理由」なんて、元から「無い」のである

長所と短所を数え上げ、比較して好きだの嫌いだのと判断する
こういう人だと思ったのに違ったから裏切られたと思う
そんな損得勘定など とっぱらって、ただ一方的に盲目的に大切だと想う

そういうことって、あっていい
人間は「考える生き物」を気取りながら、一皮剥けばポカンと「考えない生き物」にもなれるのだ


フィリップは等身大のモーム、自意識過剰で高慢、その一方で救いがたい劣等感を抱える臆病者――人間らしい矛盾を山ほど抱えた人物である
悪意に満ちた描かれ方をする人物像(実際、モデルがいるのだろう)が次々と登場する

その中で、ミルドレットは異彩を放つ――
モームにとって、描かずにいられなかった人物――自分史の総括として


でもミルドレッドに関する限り、フィリップの一途さはモームの理想像だ――
彼自身がこんなに透徹した純粋さを持っていたとは思えない――
モームはフィリップのように成りたかったのだ

一体、彼は実体験で、どんな「ミルドレッド」に出会っていたのだろう……


何も求めない
たとえ地を掘り下げてでもゼロであってマイナスはない

思考の停止した、一方的にして挫けない愛着の情
跪いて請うことは、自分の愛情への見返りではない、この女性が幸せでいることだ


どうしてそんなに優しいの?

……「ミルドレッド」だから



モームによって、私は「ひたむきに想う」という魔法の言葉を手に入れたのである



このブログネタ用に、イメージ写真を撮っておいた
当人が見たらキョトンとするだろねw

まあ、妻の写真でも良かったんだけど……




〈付記〉
なお、この解釈はおそらくモームの創作意図を相当に歪曲している
モームにとって、この小説が「自分史」であるように
私にとっても、このブログは身勝手な「自分史」なのである
妻がおめぐを予防接種に連れて行った時、医者に言われたそうだ
「この子の顔、右がミケで左がキジですね」

なるほど、確かに左右で色が違う、しかも真ん中に条が入っている

真ん中で分かれて違う顔って……
あしゅら男爵かっ!?(古いね)



あしゅらキャットって!?
にゃによ!



左右アンバランスの模様と言えば、月子がそうだった

「月子」は私たちが勝手に付けた名前、あっきと けいたの母親である

月子は野良猫根性の染み付いた烈女だった。
エサを置くと食べるくせに、私たちには全く馴染まなかった

でも、良い母親だった。どうやって食糧を得ていたものか――あっきもけいたも飢えた感じがなかった。

引き離す気になれず、子離れ親離れを待つ内に、月子の野良教育はチビ達にすっかり染み込んだ。
だから あき・けいは未だに人間を警戒する「家庭内野良」である

やがて月子は次の妊娠をして子離れが始まり、私たちはチビ達を保護(捕獲)した

その後も月子はエサを求めて裏庭に現れたが、もはやチビ達に関心を示さなかった。
チビ達も甘える様子がなく、月子が食べる皿に手を伸ばしてエサを掻き寄せたりしていた。
あんなに仲睦まじかったのに――猫の情愛ってどうなっているのだろうと思った。

やがて、月子のお腹はペシャンコになった。
妻は、次に月子が仔猫を連れてきたら、丸ごと保護しようと考えていた。
雌猫は妊娠を繰り返して寿命を縮める、去勢してのんびり長生きさせるのが幸せなんだ――妻はそう信じていた
「きっと2匹いるよ」妻は月子の伸びた乳首を数えて予想した。

仔猫は早い内なら里親が見つかるだろう。
私も何となく、月子があき・けいと3匹丸くなって、我が家で寛ぐ姿をイメージした。

そんなある夜、月子が病気になって現れた。鼻水を垂らし、エサが飲み込めない
「このままなら、死ぬね……」
私たちは洗濯ネットに月子を追い込んだ。
あの烈女が、信じられないほど呆気なく捕まった。
そして車で夜間病院へ向かう。
私が月子の背中を撫でたのは、この時が最初で最後だった。

病院で何本も注射液を流し込み、家に戻ってからも月子はうずくまって動かなかった。
夜は更けていく――私たちは何処かで母親を待っているであろう仔猫が気になった。
そして、12時にガラス戸を開けた。
月子は心細けに闇の中に消えていった――


仔猫はついに現れなかった
やがて月子も我が家から遠ざかった。
生きてはいるらしい。妻は何度か近所で月子を見かけていた。
私も一度だけ見た。裏庭の塀の上に突然現れた。でもそれ以上は近づいて来なかった。


時が経ち――おめぐが現れた
猫風邪で痩せこけ、鳴く元気もなかった……

その姿は、保護を求めてきたとしか思えない――妻が言う

きっとこのコは月子の子供だよ
病気が重くてどうしようもなくて、私たちのところに連れて来たのよ
そして保護されるのを隠れて見ていたのよ

(巨人の星の)明子さんみたいにかい?
私は笑って聞いていたが、妻は真面目に信じている


猫好きな私たちは猫好き故に多少の無理を重ねてきた
まして妻には喘息の持病がある。仔猫の毛で息が出来ないこともあった

「あの人たちなら大丈夫」
月子はきっと思っている。私たちを信じている
――これは猫好き故に妻が夢見た猫童話である



人間を頼ることを覚えた おめぐ――今は私の膝の上で和んでいる

本当に月子の子(あき・けいの妹)なら……
月子童話は完結する
書き遅れたネタ、先週の土曜日(7日)である
台東区入谷で、妻のフリーマーケットに付き合った。

基本、妻一人で店は開けるのだが、インフルエンザ明けで身体に自信がなさそうだった。
予防接種はしていたのに罹った。なんでもAとかBとかタイプがあって、ワクチンが効かなかったらしい。
病院に行ったら「〇〇市で第ー号ですよ。パイオニアですね」と言われたらしい(汗)
治ってからも何日かは外出してはいけないらしくて、妻の身体は鈍りに鈍っていた。

私にしてみれば、こういう時に付き合っておくと、後々都合が良い……いろいろとね

電車で行くつもりでスーツケースに荷物を詰めていた妻に「まあまあ、運転してやるから」とケースを車に積んでいる姿は……何とまあ良い旦那さんw


車で一時間弱、会場は小さいけれど結構な混雑、既にお客が並んで開場を待っている



イベント名はこれ
「手ぬぐいマーケット」



フリーマーケットは何度か付き合わされたけど、これほどコンセプトが明確なのは初めてだ。
日本手拭いに特化した市。だから明確な目的を持って、手拭いファンが行列を作るのだろう

妻が並べていた商品

「北海道唐草」
これ……自分の作品じゃないの?
札幌の友達に頼まれた?

むう~
俺は知らない人の手拭い売るのに付き合わされたのか


こんな札を胸に付けて――
妻が席を外す間の店番
お愛想も出来なきゃ商品知識もない(汗)

ところが苦虫を噛み潰したような顔――寅さん風に言うと「うんち食べたみたいな顔」――の私が座っていても、商品が売れるんだ
さすが手拭いファンの集まる市だね

隣りのブースは若い女の子が一人で座っていて、角だから斜め前、つまり私の方を向いてじっとしてるんだ。
女の子相手に話題なんかないから、間が持てなくて困った。
黙っていたら向こうから話かけられた――
いつもは文房具のデザインをしてネット販売しているけど、直にお客さんと接してみたくて初めて参加したらしい

北海道の話を振られて
「北海道の人にはスキヤキよりジンギスカンの方がご馳走なんですよ」
というネタは受けなかった(汗)

この子が吉祥寺に住んでいると聞いて
「以前、井の頭公園に行ったら、マンガの読み聞かせをしている人がいてね。アベックが仲良く座って聞いてるんだよ、可愛いかったなぁ~」
ああ、そうそう!
と、このネタは受けた(笑)

話が盛り上がりかけた所で妻が戻ってきて退座


後は、妻の様子を時々確認しながら、開場廻りをうろうろ
チラシを見ると――ここって公民館なんだねえ


「現代の公民館」――横文字なんだ!?
私の幼少の頃、町には映画館がなくて、年に何回か公民館で上映会があった。
東映マンガ祭りも東宝チャンピオン祭り(ゴジラ)もドリフターズの映画もそこで観た。商工会の割引券持ってね。

笑っちゃうのが、私が初めて『2001年宇宙の旅』を観たのがこの公民館。
この映画、分かんないよ~子供達には(汗)
上映数十分後には会場はガラガラ。子供達は外で雪合戦で遊んでいた。
小学校低学年の私はマセてたから、頑張って最後まで観た――後日観たら、冒頭の猿とか、輪の内側を逆さまになって歩くところとか、トイレでテレビ電話を使っているところとかを思い出して「ああ、あれは2001年だったんだ!」と分かった。

などと思い出にふけってみても、時間はなかなか潰せない
何か散歩ネタでもないかな、と考えて――ハタと気づいた


故郷以外の地名なんて、聞いたことはあっても何処にあるやら分からない

その手は桑名の焼きハマグリ
なんで有馬の人形筆
おそれ入谷の鬼子母神
……あれ?
ここ、入谷じゃん!?


歩いて数分の処に、鬼子母神のお寺があった――

ところが、塗装工事中。お参りしていると、目の前の足場組から職人さんの足が垂れてくる

うーん、ここが『あの』鬼子母神かあ~
作務衣を着たおじさんがいたので聞いてみた
「あの本堂に鬼子母神が祀られているんですか?」
「ええ、でもこんなもんですよ(と指先で大きさを示して)」
「特別拝観できる時とか、ありますか?」
「ありません」

何か、風情がないなあ……

しょんぼりと境内を出ると、歩道に木の実が落ちた跡


ん?……見上げると

おお~!
鬼子母神の食べ物、人肉の味――
柘榴(ざくろ)が植わってるじゃないかあ~!?


ほっほーいw

恐れ入谷の鬼子母神!