奥深いスロットカーの世界 | モータージャーナリスト・中村コージンのネタ帳

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小学校高学年のころだから、今からもう60年前の話だが、その当時からスロットカーという遊びに嵌まった。当時はプラスチックのボディに金属のシャシーを装着してモーターを介してクルマを走らせるというもの。60年経った今もこれは変わっていない。

高校受験を控えて一旦はこの遊びをやめたものの、大人になって再び始めた。何度かのブームがあり、特に60年代後半はほとんどどこの駅を降りてもスロットカーサーキットがあるような状態だったが、今はすっかり寂れて、全国にも数えるほどしかサーキットが存在しない。

また、当時は専門の雑誌があったりして、まだ何でも自分で作るという風潮があったから、シャシーなどは自作をした。

 

スロットカーの良いところは、ホンモノは絶対に手に入らないようなクルマを作って走らせることができること。所詮おもちゃと言えばそれまでかもしれないが、ミニカーのようにただ置いてある車を眺めてうっとりするのと違い、本気でそのクルマでレースができることである。もちろんクラッシュすればボディがホンモノ同様に壊れるリスクもあるが、それでもドライバーは命の危険がない。

大人になってから始めたスロットカーは、そうした本物のクルマに忠実ないわゆるスケールモデルを使って走らせるレースを楽しんでいたのだが、海の向こうの特にアメリカではスロットカーに特化したいわゆるスケールモデルとはまるで違うスピードだけを追求したスロットカーがある。日本でも60年代からそれは存在していたが、やらなかった。理由はクルマらしい走りをしないから。

ところが、走らせる場がどんどん縮小して遊べるところが少なくなったことを機に、そのおよそクルマらしくないスピード命のスロットカーに手を出してみる気になった。それがどんなものかというと、まずシャシーは↓のようなもの。

抵抗になるという理由もあって前輪は付いていない。ボディはプラスチックではなく、ポリカーボネイト系の素材である。驚いたことにその厚みはたったの0.07mm。まあ紙よりうすい。その形状もまあ一応クルマらしい形はしているものの、それがなんであるかなどおよそ見当もつかない代物が多い。ただ、空力は極めて重要なファクターで、前輪がなく強力なモーターに加え超軽量だから、ボディの空力がモノをいう。そんな世界である。かなり奥は深いらしい。元々スロットカーという遊び自体奥が深いから、クルマ好きには実に面白い世界なのである。

 

全長60m弱のコースを1周4秒もかからずに回ってくる。実車のスピードに換算すれば平均車速540km/hにもなる世界だ。コントロールするドライバーは、目と指先とタイミングだけが命。来月参戦するつもりだが、まともに走れるのだろうか。甚だ疑問である。