FOMM | モータージャーナリスト・中村コージンのネタ帳

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モータージャーナリスト中村コージンが、日々乗ったクルマ、出会った人、趣味の世界を披露します。

FOMMとは、ファースト・ワン・マイル・モビリティーの略。去る2月19日に発表された短距離移動用の電気自動車です。まあ、ずいぶん驚かされました。

まずはこちら↓



なにやら、ずいぶん人が出てきます。見えにくいですが後ろにも二人乗っていました。つまり4人乗りです。しかしこのクルマ、3サイズは2495x1295x1550㎜でしかないのです。実に全長はスマートよりも短い。それでいて4人乗りです。とりあえず。

次に↓



ボディをよく見てください。ドアから上。アルミのパイプフレームがむき出しです。さすがに全幅が1295㎜しかありませんから、側突は法規に対応できませんが、前突はちゃんと法規を満たしているそうです。

それにしても、この全長でどうやって4人乗りを実現したか。そこには二つのからくりがありました。一つはこちら↓



まさにバイク感覚の運転席周り。右のグリップを回せばアクセルです。ブレーキはレバーで。こうすることでペダルが必要なくなり、その分ドライバーは前進でき、後席を確保したのです。

次がこちら↓



駆動はインホイールモーターで行います。だから、本来モーターやインバーターなどが収まるスペースが不要になってさらに、キャビンを拡大できたというわけです。


ここまででも十分新鮮な驚きがありましたがさらに・・・

このクルマ、水に浮きます。ただし、水陸両用車ではありません。あくまでもエマージェンシーのためのものだそうです。ではどうやって推力を確保するか。それがこちら↓



ブレード型になったホイール形状で、ゆっくりながら前進できるそうです。

そしてさらに↓



グレーの円筒形状のもの。著熱式の簡易クーラーで、最低限の冷気をスポット的にドライバーに当てることが出来ます。


このクルマは、元スズキ自動車で活躍された鶴巻日出夫さんが立ち上げた株式会社FOMMのコンセプトカー。まだ、いくつか克服しなくてはならない課題があるそうですが、主としてタイやインドネシアなど、水害が多く、自動車が高嶺の花の地域に向けて作り上げた電気自動車です。カセット式のバッテリーを最大3つセットでき、その航続距離は最大100km。カセットは一つがなくなると次が作動するようになっていて、3つすべてを積む必要はないそうです。もちろん家庭用電源としても対応するとか。

何より驚かされたのはこのクルマが水に浮くと言うこと。そして浮いた状態でホイールを回し、水のないところまで移動できると言うことです。ドアは一番最初の写真を見ればわかる通り、スライドドアで、シールをしても当然水の侵入は避けられません。しかし鶴巻さんによれば、ある程度の水の浸入は織り込み済みで、後からドレンで水を抜く構造にしているそうです。

日本では後席を取り払わないと、超小型車としての認定はとれません。あくまでも新興国向けとして想定しているそうですがアイデアとしてはなかなか秀逸でした。面白いものを見せてもらいました。