• 面接を済ませホッと一息つき覚えるように指示されたメニューを開きギョッとした場面よりの続き…





    『おいおいお~い…ちょ…ちょっとこれ見てみろや…』…





    『えっ…な…なによケンちゃん恐い顔して…

    あっゴメンゴメン恐い顔はいつものことやったなぁ…』…





    『うるさい…お前に言われたないわオコゼにプロポーズしたら逃げ出しよるぞこの顔面凶器がぁ』…





    『オ…オコゼて…ブツブツ…逃げ出し…よるて…ブツブツ』…





    『ええから…落ちこんどらんとこっち来て見てみいや…』…





    トボトボと近寄りメニューを見た情報屋の目が点になっている…





    このメニューときたら上から下までビッシリ並んだパフェやらサンデーの名前…名前…名前の大行進…





    それも長~いのなんの…





    バナナ&ストロベリー&ピーチのコンビネーションナッツチョコレートパフェだの…


    アップル&マンゴー&キウィのプリンヨーグルトサンデーだの…


    柿と梨と白桃の和風抹茶生クリームパフェだの…


    (・◇・)…





    《《覚えれるか~い》》…





    自慢でないが九九がギリギリ~アルファベット完璧に覚えていようもんならインテリ扱いの連中なのだ…





    時は無情に過ぎてゆく…





    そろそろ開店時間だと更衣室から出ようとすると男が一人入って来て我々を一瞥し言った…





    『新入りかぁ?…

    サッサと行けよ足引っぱんなよ…』…





    すれ違いざまに目と目が合ったが他のスタッフには感じなかった違和感のようなものを覚えた…





    兎にも角にも開店時間となりバイト初日が幕を開けた…





    オーダーは伝票に手書きし厨房窓口に復唱し置く…





    笑顔のいらっしゃいませ~♪にも引きつりながらも少しづつ慣れるものだ…





    平日だったのでオーダーのほとんどが朝はモーニング昼はランチで何とか無難にこなせた…





    取り敢えず初日と二日目は朝10時から夕方の6時まで働き明日ははじめての週末を迎る…





    更衣室ですれ違った男を皆チーフと呼んでいたのだがあれ以来彼にとって我々の存在は空気に等しいのかまったく無視されていた…





    ところが金曜に我々の仕事上がりをワザワザ見計らい更衣室にやって来てこう言った…





    『お前ら…この二日間の仕事ぶり自己評価してどう思うよ?』…





    『ど…どうって…言われても…なぁケンちゃん…』…





    『まだ慣れてないもんで…これからいろいろ教えて下さい…よろしくお願いします…』…





    『いやいや教えるったってこんなもんバカでも出来る仕事だろうが…

    チーフなんて呼ばれてるけど俺だって入店して半年ぐらいのもんよ…

    明日は土曜だし今日よりは少々客も多いけどなぁ…

    まぁ明日こなせないようなら日曜は絶対無理だから辞めるなら早いうちに言っといてくれや…

    ローテーション組み直すの俺の仕事なんだわ…』…





    カチンときた…





    横の情報屋を見るとオコゼ顔を真っ赤にしているのでソッと背中を叩いて落ち着かせる…





    半開きのドアをノックしてポーラが心配そうに覗き込み…





    『チーフ…もういいでしょ…そんなにプレッシャーかけたら…』…





    チーフがニヤニヤ嗤いながら更衣室を出て行った…





    『ゴメンね…悪い人じゃないんだけど…

    土日は客層が家族連れや若い子が多くなってパフェの注文が増えるから…

    私もサポートするから頑張ってね』…





    明日からが例のパフェがメインオーダーになるらしい…





    『あのクソチーフの野郎~ホンマ腹の立つやっちゃで…

    けどなぁアカンはケンちゃん…


    あんなん覚えられへんわ…

    どないしょう?…』…





    『どないもこないもあるかい…

    どないかせなアイツの思うツボやぞ…

    どうにかせなアカン…

    どうにかなぁ…』…





    そしてはじめての土曜の朝を迎えた…





    店に入るとこの二日間開店ギリギリ出勤だったチーフが既にいて怒鳴る…





    『遅ぇんだよテメェら』…





    他のスタッフもなんとなく緊張感が漂っている…





    急いで着替え準備の手伝いをし朝礼で今日の注意事項とホールの担当割りの確認をする…





    情報屋はカウンター前ブロック担当で俺は死角ブロックを担当しポーラともう一人の女の子がメインブロック担当だった…





    フロアと厨房を繋ぐカウンター内でチーフがそれらを統括する形になっている…





    昨日までの空気扱いと違いジッと舐めるような視線をチーフから感じるのは気のせいだろうか…





    さっそく昼前からお客が増え始めメインブロックから先に埋まってゆく…





    死角ブロックは厨房窓口まで距離があり一番大変なブロックなのだが敢えてそこを担当したのには俺なりの理由があった…





    その理由とは…





    それは…次回にて…



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    いつものオケラハウスでくすぶっているところへ或る情報が持ち込まれた場面よりの続き…





    例の飲食業売り手市場の情報を持ち込んだ仲間がシタリ顔でやって来て開口一番こう言った…





    『ケンちゃん…耳よりな情報やで…』…





    『ふん…前回みたいな絵に描いた餅やったらサッサとウチ帰って犬のエサにでもしとけや』





    『いやいや今回のはビッグニュースやでホンマ』…





    『ビッグニュ~ス~?…

    ビックリでもシャックリでもええから早よぅ教えろや…

    それとも俺が気ぃ長いとでも思ぅてんのか?…

    最近なんやコブシがムズムズむず痒~てのぅ…』…





    『わ…わかった…わかったから…カンベンしてや…

    前回は中途半端な話しでその気にさせてしもうてホンマ悪いと思うとんや…

    けどなぁ今回の店は完璧やで…』…





    『み…店…今度も店かいや…いったいどんな店や?』…





    『それなんやが………

    実は…………』…





    今度の店は不動産持ちのリッチなオヤジが経営する繁華街のレストランなのだが店のコンセプトがかなり面白い…


    【オールディーズ…】


    いわゆる1950年代から60年代の風俗をモチーフに店内装飾からスタッフのファッションに至るまでプロデュースされた店なのだ…





    オールディーズ…ロカビリー…エルビス…ロックンロール…ジェームス・ディーン…ツイスト…リーゼント…





    (゜∇゜)!?…





    《《イケるやんけ~》》…





    取り敢えず仲間を集め緊急作戦会議がはじまった…





    会議の結果やはり男の前に立つ男なら先陣をきるのがスジだと俺と情報屋がまず面接を受けることになった…





    善は急げでその日のうちに連絡すると早速翌日が面接日に…





    私鉄駅前の商店街入口一等地にその店はあった…





    幅広の外階段を上り派手なドアを開けると店内はもっとド派手にディスプレイされオールディーズが流れている…





    『すいませ~ん10時開店でぇ~すもう少し…』…





    水玉のワンピースにポニーテールの如何にもって感じの笑顔の可愛いオネェサンが言う…





    『い…いや…あのぅ…

    昨日電話した…面接受けに来た者すけど…』…





    『あっ…はいはい聞いてます…社長まだだからアチラの席で待ってて…どうぞ』…





    うながされるまま奥の席に向かう…





    ドアを開けると正面にカウンターが伸び奥は厨房向かいはボックスが数席ある…





    ドアの左手側にボックス席が居並び窓からは駅前の雑踏が見えその奥にもカウンターからは死角となる隠れボックスが数席あった…





    建築構造のことはよく知らないが大きなコの字型の店だということだけは解った…





    白と赤を基調にしたインテリアの中を歩きながらなんだかワクワクしてくる自分に気付く…





    ロコモーション♪が流れていた…





    『ケンちゃん…あの子ケッコウ可愛いやん…好みやわぁ…』…





    『アホかぁ鼻の下伸ばすなボケ~…

    打ち合わせどうりに応えるんやぞ…解っとんなぁ』…





    席につきそんなやりとりをしているうちにドアの開く音が聞こえた…





    『おはようござ…社長…面接…奥に…』…





    『おはよう~OK~OK~奥ね~』…





    《来た》…仲間の袖を掴んでいっしょに立たせた…





    『お待たせ~まぁまぁ座って座って~早速だけど履歴書持って来たかなぁ?』…





    『あっ…はい…これです』…





    『はいはい…これねぇ…ふんふん…』…





    『……………………』…





    『ほうほう…履歴書に書くほどでもなかったねぇ…

    あはは…気ぃ悪くしないでね…ウチは学歴や職歴は不問なんだよねぇ…

    大事なのはヤル気とルックス…


    どうヤル気ある?』…





    『はい…あります』…





    『そう…じゃあルックスは気合い入ってていいから合格ね~制服のシャツとエプロン貰って今日から外回り手伝ってね~

    じゃあ頑張って~』…





    社長はそう言うと立ち上がり他のスタッフと簡単な打ち合わせを済ませ開店前に出て行ってしまった…





    『じゃあこっち来て自己紹介して…』…





    さっきのポニーテールのオネェサンが他のスタッフを紹介してくれ我々も自己紹介を済ませた…





    『じゃあこれが制服ね…

    サイズ大丈夫かなぁ…』…





    着てみると二人ともピッタリだった…





    『うん…似合う似合う…

    あっそれとこれウチの店のメニューなんだけど…

    外回りするならある程度覚えとかないとねぇ…

    じゃあ開店時間まで見といて…』…





    そう言ってオネェサンはテーブルセッティングの確認作業に取りかかった…





    『ケンちゃん…やっぱあの子可愛いわぁ…

    そうやポーラって呼ぼう…

    ええやろヘイポーラ~♪…

    なんてよぅ~』…





    アホを無視して差し出されたメニューを何の気なしに開く…





    すると目に飛び込んできたものに一瞬ギョッとしてしまった…





    そのギョッとしたものとは?…





    それは…次回にて…





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    諸事情により一般平均より一足早く社会人となり独り暮らしをしていた十代半ば過ぎ…





    自由はあったが必然的に金がない…





    当時地元パチンコ店の別館で三十台ほどアレンジボールを置いている通称オケラハウスと呼ばれる溜まり場があった…





    ほとんど客の出入りがない薄汚れてさびれた小屋にその日もロクデナシどもが集まっている…





    『はぁ~毎日毎日文無しじゃやっとれんのぅ…

    ジッとしとっても腹は減るしよぅ…やっぱいっそのこと…』…





    『おぅテメェ…この前誓うたとこだろぅが…

    これからは合法的な銭儲けしかせぇへんてなぁ…

    いやなら抜けてもええんやで…』…





    『そうやケンちゃんの言う通りや…

    抜けた奴ら次々パクられとるんやで…

    パクられてブチ込まれるぐらいならまだええ…

    終いにゃあの世行きのヤツまで出とんじゃ…』…





    『わ…わかってるけど…

    俺らみたいなのどっこも雇うてくれんやないか…

    それにバイトしとっても腹へって続かへんわ…』…





    『なんもかんも御法度やがケンカ売られりゃ買わなアカンし…

    腹が減ってはなんとやらやでぇ…

    ええ加減アホらしなってきたわぁ…』…





    『なら抜けろや…

    その代わり明日からツレでもなんでもないで…

    覚悟しとけや…ええなぁ…』…





    議会共和制を採り入れることなど所詮出来ぬ人には飼い慣らされない野獣の群れなのだ…





    そんな野獣どもを従わせるにはチカラしかない…





    のちにそれが間違いだったと気付くのだがそのことはまた違ったエピソードにて…





    『まぁまぁ…ケンちゃん…

    ところでなぁ…近ごろ学生連中が羽振りきかしとるらしいんじゃ…』





    十代といえば仲間うちでも社会的立場が幾つかに分かれている…





    高校に通う者…


    高校をドロップした者…


    進学せず就職した者…


    学生…家業を継ぐ者…フリーター…引きこもり…プータロー…チンピラ…等々…





    呼び名は違えど昔も今もティーンエイジは雑多な人種がごった煮された闇鍋年代と言える…





    大人になれば接点のないはずの人種が混じり合って共生しているのだ…





    十代の多くの若者は生きてゆく意味も目的も方向性も理解せずただ闇雲に突っ走る子供たちなのだ…





    俺たちもそうであったように…





    『ほぅ…なんでや?…

    お勉強そっちのけで銭儲けやっとんのかい…』…




    『そういうこっちゃ…

    誰にも文句言われん堅気のアルバイトや…

    それも聞いたらヌル~くて楽勝のやっちゃで』…





    『ほ…ほんまかいや…

    どんなバイトや?』…





    説明によるといわゆる飲食業界でそれまでなかったスタイルのフランチャイズチェーンが地方都市にドンドン進出し売り手市場で学生アルバイターが引く手数多だというのだ…





    『おぅおぅ…家族連れでチンタラ飯食いに行くドライブインみたいなやっちゃのぅ…

    ナンチャラ寿司とかいうのんも最近よう見かけるわ…』…





    『そやけど…チカラ仕事ならな~んも考えんでええし…人にペコペコせんでええやんか…

    それっちゃ…いらっしゃいませ~とか言わなアカンのやろ?…

    シャバいのが来たらよう言わんわぁ…

    なぁケンちゃん…そやろ』…





    『確かにのぅ…確かにそうなんやが…

    俺らこのままやったら元にもどってまうの時間の問題やで…

    このまんまならなぁ…

    そやからやったことないことやらなアカンのちゃうか?…

    一番やりたぁないことやるんも男っちゅうもんやで…

    それによ…飲食業やぞ…

    飲食業っちゅうたらなに売ってるとこや?』…





    (°□°;)!?…





    《《《食い物や~》》》…





    野獣どももなんとなくイメージ出来たようだ…





    『あはは…まぁそういうこっちゃ…

    仕事内容はヌル~てその割りに時給もケッコウええし役得もあるんやがなぁ…

    ケンちゃん…

    一つだけ問題があるんや…』…





    『も…問題!?…なんや問題て…』…





    『それなんやが…

    実は見た目の問題があるんよなぁ…

    今の俺らのカッコじゃアカンらしぃんや…』…





    サービス接客業のため裏方に至るまでそういったことには非常に厳しいハードルがありお客様に不快感を与えない清潔で爽やかなルックスを求めているらしい…






    金髪…リーゼント…モヒカン…スキンヘッド…眉ナシ…眉紋…タトゥー…ピアス…





    《《アカンやんけ~》》…





    それから数日間あれやこれやと考えた…





    今の状況からの脱出…





    やったことのない仕事へチャレンジする意味…





    すべてのライフスタイルを変えてまでやる価値…





    堕ちていった仲間たち…





    プライドと空腹…





    答えを出しきれぬまま悶々とした日々を過ごしていた…





    そんな或る日いつものオケラハウスで暇を持て余しているとちょっとした情報が舞い込んできたのだ…





    その情報とは…





    それは…次回にて…

    お薦めの加盟店さん紹介します。


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