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歓迎会の帰り道ある光景が気になり二人して立ち止まった場面よりの続き…
夜も更け人気のなくなった小さな公園からキィキィとブランコを力なく漕ぐ音が聞こえる…
何の気なしにブランコへ目を向けると黒い影がユラリユラリと揺れていた…
『ん!?…おぃ…あれサブさんとちゃうか?…』…
『う…うん…そうみたいやがどうしたんやろぅ?…』…
どうにも気になり近寄ってみると間違いなくサブさんだった…
いつものように俯いて缶ビールを片手に持ちブランコに身を委ねている…
まるで夜風に身を任せユラユラと揺れる柳ように…
しかし柳は揺れるだけで決してその場からは動けない…
たとえ動きたくても…
『サブさん…なにやってんすか?…飲み足りんのならつき合いますよ…』…
サブさんはビクッとしてこちらを振り向いた…
『あぁ…ジブンらかぁ…
今日は折角の歓迎会やったのに…すまんなぁ…』…
チーフとの件で場がシラケたことを詫びているようだ…
『なに言ってんすか…
あのクソ野郎っとっとぅ…
あ…あのチーフがいつもながら鬱陶しいだけっすよ…
なぁケンちゃん…』…
頷きながらサブさんの傍らに目を移すと何だか黒い塊が置いてある…
『それよりサブさん…
なんであんな野郎にペコペコするんすか?…
サブさんのほうが年上でしょうに…』…
『別にペコペコしてるつもりはないんやけどなぁ…
確かにちょっと年上やけど仕事上は彼が責任者やし…』…
柳に風?…
そんな飄々とした受け答えだがなぜか背中が哀しげだ…
『サブさん…俺たちアイツに言わせりゃ中学しか出てねぇバカだけど…
なんかワケアリってことぐらいわかるっすよ』…
『い…いや本当に…ワケなんかないんや…』…
『サブさん…もういいじゃない…話してあげたら…』…
聞き覚えのある声に振り返るとそこには醒めた表情のポーラが立っているではないか…
『は…話すって何を?』…
『この子らだってあの人の横暴に堪えてるんだし何より仲間じゃない?…
サブさんが話さないんならワタシが話すよ…』…
サブさんが苦しそうな表情を浮かべ言う…
『俺…口下手だから…
ナオちゃんが話したほうが…』…
ナオちゃんと呼ばれたポーラが静かに頷き醒めた眼をして話しはじめた…
『本来ならサブさんが店長になるハズだったのよ…』…
『えっ…じゃあなんであの野郎がチーフでデカイ顔してるんすか?…
チーフより店長のほうが上でしょうが…』…
『サブさん…辞退したの…』…
サブさんの実家はある地方都市の有名な老舗洋食店でサブさんはその跡取り息子だという…
『なんで辞退なんか…』…
二代目である父親の意向でフランス料理の修行を積んでいたが事情があり父親の友人であるオーナーが営む今の店で3年前から働いている…
『自分は店長なんて器じゃないし…
それにコウちゃんがチーフするならそれが一番自然だと思ったし…』…
コウちゃんと呼ばれたチーフはオーナーの甥であり子供のないオーナーにとって一人息子のような存在らしい…
『あの人は…お店のことなんて一つも…』…
チーフは受験に失敗し1年浪人後東京の大学に入学したものの現在は休学中で地元に戻りブラブラしていたが半年ほど前から店を手伝いはじめたという…
『ケッ甘え腐ったお坊っちゃまってやつかよ…』…
諸事情は聞けたもののどうもスッキリしない…
なぜなんだろう?…
チーフの暴虐無尽…
スタッフの沈黙…
オーナーの静観…
サブさんの哀しい背中…
ポーラの醒めた瞳…
この違和感はなんなのだろうか?…
そう考えているとハッと気付いた…
はじめてチーフと眼と眼が合った瞬間に感じたあの違和感と同じだと…
このままにしておくと取り返しのつかない結果を招いてしまうような不安からくる違和感だったのだろうか…
四人はなぜか沈黙している…
これから起きるであろう出来事を四人の意識が重なり合い予感しているかのように…
すべての真実のカタチが露呈し決着をつけることを…
四人は望み待っていたのかも知れない…
そして…最終回へ…

