諸事情により多くの皆さんよりチョット早く社会人デビューした十代であった…
前回デタラメ中学篇では新聞配達からグッズ販売へと展開しそれなりの結果を残した…が…
誠もなければ信もない烏合の集たちはあっという間に崩壊し何も残らなかった…
中学時代に蔓延してたシンナーや薬物が卒業後も仲間うちを蝕み問題を起こす者があとを絶たず果ては亡くなる者まで…
そこで残った仲間が集まりそういったモノから縁を切る誓いをたて手始めに合法的な仕事につくことにした…
とは言うものの何の資格もなく自動車免許すら持てない年齢だったので職種は当然限定される…
師走で年末に向けトラック助手や荷物の仕分け作業員のバイトを急募してたのでやってみることにした…
だいたいは倉庫で荷物を配達先別にコンテナに積み込む作業に従事し助手の順番が回ってくるとトラックに乗り込むのだ…
後で解ったのだが助手は運転手の指名制なので運転手に気に入ってもらうと退屈な仕分け作業から解放される確率が高くなるのだ…
『お~いボク…これ積み込むから手伝うてくれるか!?』…
『あっ…はい…』…
待ってましたとばかりに張りきってコンテナをトラックに積み込み助手席に乗り込んだ…
『さぁて出発進行や…』…
運転手は四十絡みの中年男、大柄でガッシリした体躯、太い首にエラの張った四角い顔がのっかっている…
短く刈り込んだ髪と太い眉にギョロ目は睨まれると威圧感満点だろうがいつもニコニコしていた…
気は優しくて力持ちって感じの人の良いオッチャンだった…
『ボク…幾つやねん?』…
『今年十六っす…』…
『ほなまだ免許がないんやのぅ…
そんならなかなか仕事も見つからんわなぁ…
オッサンも免許とるまでホンマ苦労したで…』…
『…そぅっすかぁ…』…
彼も諸事情で早くから社会人デビューしたのだが今の職業に落ちつくまでかなり紆余曲折あったらしい…
彼に気に入られ専属助手として数日過ごした或る日のこと…
その日は師走にもかかわらずポカポカ陽気の小春日和だった…
昼前に下ろす予定の荷物が小型トラックしか入れない場所にありしょうがないのでかなりの距離を二人で運んだ…
連絡事項のミスだったが後の祭りで運び終えたときには二人とも汗だくになっていた…
『ボクよ…下着の着替え持ってへんやろ?…
こんなとき着替えな風邪ひくんやで…
ワシの貸したるから着替えや…』…
そういって彼は替えの下着を渡すと自分はトラックを降り視界から消えた…
何となく気になり着替えながらサイドミラーに目をやるとトラックの陰で着替える彼の姿が見える…
上半身裸になった彼を見て一瞬息を呑んだ…
彼が着替え終わり運転席に乗り込みトラックを発進させる…
『さぁ飯でも行こや…
この近くにしっぽくうどんの旨い店があんねん…
そこでええか?…』…
『あ…はい…いいっすねぇ…』…
店は昼時をかなり回っていたので人気店だが意外に空いている…
二人ともしっぽくうどんの大盛りといなり寿司を頼み待っている間に彼がポツリと呟いた…
『背中のお絵描き見えてしもぅたんやろ?…
顔に書いてるで…
冬はだいたい大丈夫なんやが…
ビックリさせてすまなんだなぁ…』…
『い…いや…そんなビックリはせんですけど…』…
『そぅかぁ…ボクが元気者なんはす~ぐにわかったがなぁ…
悪いことは言わん…
オッサンみたいなまねしたらアカンで…
こればっかりは一生背負わないかんからのぅ…』…
『……………………』…
彼も若かりし頃かなりの元気者で故郷を飛び出し都会でその世界に入った…
所属していた組が抵抗虚しく巨大組織に呑み込まれ冷や飯喰いの立場が我慢ならず組を抜け故郷に舞い戻ったのだ…
結局ただの負け犬だと自嘲する彼…
だが故郷に帰ったところでそんなヤクザ者を世間がすんなり受け入れてくれる筈もなく辛酸を舐める日々…
しかし彼は諦めず流れ流れてこの地に辿りついたのだ…
どんなことがあろうとも諦めなかったのには理由があった…
それは世間から疎外され続けた辛い時期を陰になり日向になり支えてくれた存在…
そして親を知らずに育った彼の人生感を決定的に変えた宝物を生みだした存在…
そう奥さんの存在があったからなのだ…
そして奥さんの一途な愛に必死で応えようとした彼の真っ直ぐな愛…
ガキだった自分にもその存在の大切さがぼんやりとだが理解できた…
彼と過ごした期間はほんの短いものだったが…
客と揉めた俺の腕をぐっと掴み押し留めてくれた彼…
その客のクレームで上司に呼び出された時も自分の責任だと庇ってくれた彼…
食い盛りなんだからと言って昼飯を毎日腹いっぱい食わせてくれた彼…
いつも奥さんと子供の写真を見せては自慢気に家族の話しをしてた彼…
なんとなく格好いいと思えた…
バイト最終日に彼を食事に誘った…
ビールでも奢らして下さいと言うとニッコリ笑いながら彼はこう言い返した…
『ナマ言うなよボク…
せっかく稼いだバイト代や大事にせないかんで…
早いとこ免許とってまた来いやそん時までビールはお預けや…
それにのぅ正直言うと早よ帰って飯食わな嫁はんに噛みつかれるんや…
がはははははは~
じゃあな…あんまりヤンチャせんと親孝行せなアカンで…またなぁ…』…
そう言って手を上げ帰っていった…
その晩は南国には珍しく酷く冷え込んでいた…
《親孝行…かぁ…》…
身を斬るような冷気の中をバイクで突っ走って帰る…
なぜか寒さを感じなかった…
熱き心で…前へ!前へ!
お薦めの加盟店さん紹介します。
アクトタウン加盟店 Replay
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