歴史街道 2017年10月号
城を訪れる観光客数は増え続けており「城めぐり」がブームとなっています
今年4月には「続日本100名城」が発表され
このブームはまだまだ続きそうです
そこで今号では、「城」という切り口から、戦国史を捉え直す特集を組みました
戦国時代には、城を舞台に武将たちが存亡をかけた、数々の戦いがありました
また、戦さのための城から権力誇示や領国経営のための城へと
城自体も大きく進化を遂げました
本特集では、写真やイラストを用いて城そのものの魅力を紹介するとともに
城を入り口にして、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康
をはじめとする戦国大名たちの物の見方・考え方や
月山富田城、岩屋城、岐阜城などでの
歴史の流れを決定づけた籠城戦の真相に迫ることで
これまでとは違った戦国時代を浮かび上がらせます
特集2は、「陸軍の至宝・永田鉄山」です
今回の特集は人物ではなく「城」です私の知る限りこの手の特集は初めてかと思います
城の構造や城攻めの方法を見ていくだけでも面白いものはありますし
城をめぐる戦いは歴史の大きな転換点だったりしますからね
月山富田城や岩屋城なんて選択も渋いです
が、今回注目したいのは第2特集陸軍軍務局長の在任中に殺害された永田鉄山
統制派の首魁とされ国家総力戦体制を進めようとした人物
一部では日本を太平洋戦争に引きずり込んだともされています
しかし、永田は当時の陸軍では他に類を見ない人物で彼を失ったから日本は戦争への坂道を転げ落ちていった
という人もいます。軍事だから陸軍だからと毛嫌いせず
しっかり研究することも必要ではないでしょうか
特に永田が陸軍による統制が必要である
と考えたのは政党政治には任せられないと考えたからです
今、政党政治があてにならないと感じる人も多いでしょうその中から小割りk軍のような勢力が出てこないとも限らないですから
八月十五日に吹く風
松岡 圭祐 (著)
講談社文庫
アメリカが敵視した人命を軽んじ易々と玉砕するという野蛮な日本人観が
一人の米軍諜報部員の報告で覆った
戦後占領政策転換の決め手となった一九四三年
北の最果てキスカ島での救出劇
日本は人道を貫き五千人の兵員を助けた
戦史に残る大規模撤退作戦を
日米双方の視点で描く感動の物語
キスカ撤退作戦を題材にしたフィクション人命軽視と思われがちな日本軍の中で
5000人の兵士を救うために信念を貫き通した指揮官
救出作戦を遂行するため自分の任務を黙々とこなした一兵卒
自分の仕事を放棄してでも兵たちを救おうとした記者
敵国である日本人のために尽力した米軍人
それぞれを丁寧に描写して一気に読ませていただきました
キスカと言えば木村少将が大きくクローズアップされることが多いですが
本作は陸軍の樋口中将(北方軍司令官
)にもスポットライトを当てています
樋口司令官と言えば数千人のユダヤ人を救った
と言われるオトポール事件でも有名です
とはいっても杉原千畝氏に比べれば
これも現代日本の軍隊アレルギーの影響でしょうか
著者の松岡氏はミステリーで有名ですね歴史ものを出しているとは思いませんでした
非常に面白かったので前作の義和団事件
を舞台にした作品も読んでみようと思います
この作品で松岡氏のファンの方がケ号作戦について知ってもらい
日本軍にもこういう面があったんだ
ということを知ってもらいたいと思います