仮面執事と銀のギター(今は赤だけど…orz) -28ページ目

蟹の行方

みんなまっすぐ歩くことしかしないから
ワタシは横に歩くことにした。

みんなと違う歩き方をすることで
新しい景色が見えた。

みんなと違う歩き方をすることで
みんなが見る景色は、見えなくなった。

みんなが知っていることを、ワタシは知らない。
みんなが知らないことを、ワタシは知っている。

みんなが好きなものを、ワタシは好きじゃない。
ワタシが好きなものを、みんなは好きじゃない。

ワタシの肉を愛してくれる者はいても
ワタシ自身を愛してくれる者はいない。

ワタシは、みんなから見るとかわいくないから
かわいいと思われたくもないから
甲羅のトゲを研ぎ、誰にも触れさせない身体を以て
ひとりぼっちで、歩いていくのだ。

ワタシは誰も歩いたことのない道を歩く。
誰も歩いたことのない道だから
雑草だらけで、石ころだらけで、歩きにくい。

道なき道を、たくましく歩いていくワタシを
ワタシはヒジョーに、愛おしいと思っている。

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モグラと理想郷

まっくらな土の中が、僕らモグラの世界。
闇はとてもやさしく、土は冬でもあたたかい。
24時間、母の愛に包まれているようだ。

ずっと闇の中にいるから、目はほとんど見えない。
見えなくていい。見る必要がない。

きたないものを見なくて済むし、
きれいなものは想像すればいい。

僕らはすぐに腹ペコになる。
12時間以内に何か食べないと飢えてしまう。

ミミズの取り合いでケンカになって
負けた奴が地上に逃げて、
帰り道が分からずにくたばることもある。

そこは気をつけなければならない。
そこにさえ注意すればいいとも言える。

ただ僕は、生まれつき地上を理想郷と信じている
セミの幼虫たちの物語を聞きすぎてしまった。

青空と白い雲の下
緑の木々たちに見守られながら
たくさんの生きものが生命を謳歌している世界。

視力の弱い僕が地上に出たところで
何も見えないということは分かっていても
どうしても地上に行ってみたいと
考えるようになってしまった。

地下世界での満たされた生活に
飽きてしまったというのもある。

あとひとかきすれば、地上だ。

そこで待っているのは
夢のような新世界か
悪夢のような死の世界か。

不安でくたばるモグラもいるが
僕にはかけらほどの不安もない。

僕にとっては、どちらも正解なのだから。

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あたくしの家

あたくしの家はそれはもう立派なもので
そりゃ世界を見渡せばもっとすごい家は
あるんでしょうけれども

あたくし的にはこれ以上ないってほど
素晴らしい家なのですのよ。

みて下さいなこの色合い
ほかのどのヤドカリも見たことのない
ビビッドな感性に満ちているでしょう?

触れてみて下さいなこの手触り
ほかのどのヤドカリも持っていない
硬すぎず柔らかすぎない質感をしているでしょう?

内装だってほらごらんなさいな
あたくしの身体にぴったりフィットして
肌ざわりもばつぐんですのよ。

ここにはヤドカリがいないのかしら?
いつもなら聞こえる
まぁうらやましい」の声が聞こえないのだけれど。

で、相談なんですけれどもね。
このお家、アナタに差し上げようと思うの。
ここからおろして、海に帰してくれたらの話よ。

海の竜巻に巻き上げられて
気が付けばこんなお花の中。
このままではからからに干からびて死んでしまうわ。

あたくしだって、
家よりも命の方が大事だってことくらい
理解しているんですのよ。

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