仮面執事と銀のギター(今は赤だけど…orz) -26ページ目

2本の足で3歩

3歩あるいて忘れるの。

そうすれば迷わなくてすむ。


ニンゲンが申し訳なさそうに告白した。

かつてニンゲンの先祖は

あたしたちの身体の油ほしさに

あたしたちを大勢捕まえて

大鍋でぐつぐつ煮たんだってさ。


ああなんてむなくそわるい話。

3歩あるいて忘れよう。


ニンゲンが申し訳なさそうに懺悔した。

そうやって取った油は

ランクの低い油とされて

石鹸とか灯油とかに使われたんだってさ。


ああなんて吐き気をもよおす話。

3歩あるいて忘れよう。


ニンゲンが申し訳なさそうに教えてくれた。

油と、お金目当てに片っ端から狩られた

あたしたちペンギンの総数は

大体、500万羽だってさ。


ああなんてハラワタ煮えくりかえる話。

3歩あるいて忘れよう。


そういえばアナタはだあれ?

ニンゲンていうの、へえそうなの。

良く分からないけど、なんかムカつくから

3歩あるいて、忘れるわ。

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その蝉が鳴く理由

後悔なんてない。

あそこに転がっているモグラが
地上に出て力尽きたのは
ぼくのせいじゃない。

ぼくは土の中で長い間生きる。
太陽の光がふりそそぐ地上の世界を羽ばたいて
高らかに生を謳歌して、死ぬためだ。

ぼくがあいつに教えたのは
セミとしての地上への憧れで
モグラのそれとは違うのに
あいつはすっかり、ぼくの話に魅せられてしまった。

地上に出たら羽でも生えて
空を飛べるとでも思ったのだろうか。

いよいよ地上に出る日が来て
ぼくがさなぎから羽化しようとしたら
ぼくが出てきた穴の横から
あいつが出てきたのには、びっくりした。

まさか、ぼくを追いかけてきたのか…?

思いつく可能性は、もうひとつある。
モグラはいつも腹ペコで、年中ミミズを食べてる。
ぼくを餌だと勘違いして、追いかけてきたら
地上に出てしまったのかもしれない。

どちらが正解なのか、もう誰にも分からない。
件のモグラは、太陽に当たって
自分の体温で熱くなりすぎて、死んでしまった。

あいつのせいで、ぼくはこの場から動けない。
堂々巡りの思考が頭から離れず
このうつくしい地上の世界にとどまって
ミンミンと鳴くことしかできない。

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顎の代償

最初の頃は良かったんですよ。

オス同士の相撲で
誰にも負けない、強くて大きな彼のアゴは
それは雄々しくてステキでした。

クワガタにとって、アゴの強さは絶対でしょう?
彼に惹かれないメスはいなかった
でも彼は、このワタシを選んでくれた。

嬉しかった
それほど美しい点刻を持ってるワケでもないワタシを
選んでくれたんですもの。

でもね、交尾して、ワタシが卵を産んでから
あの人は変わってしまった。

いいえ、元々の性格が
表に出てきたっていうほうが
正しいのかもしれないね。

アゴを向けてくる相手が、他のオスじゃなくて
ワタシになってきてね。
しまいには卵に向かって
振り回すようになってきたの。

あの人もたまたま大きなアゴに生まれて
仲間内のケンカには勝てていたけど
クワガタってそもそも気が弱いのが多いのよ。

不安だったのかしらね。寂しかったのかしらね。

どちらでも、もう構わない
だってあの人、ワタシを挟もうとしたところを
ニンゲンの子供に捕まえられて
虫カゴで持っていかれてしまったんだから。

ほんっと、せいせいした

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