あの日の金糸雀
老夫婦には、子供がいなかった。
理由はない。ただ、作らなかった。
老夫婦は、つがいのカナリヤを飼い
ある年齢を迎えてから
毎日お経を唱えるようになった。
ナンミョーホーレンゲーキョー
ナンミョーホーレンゲーキョー
お経を唱えるようになってから
人に尽くしたいと考えるようになり
自分たちに子供がないぶん
地域のボランティアに参加して
色々な子供の世話をした。
ナンミョーホーレンゲーキョー
ナンミョーホーレンゲーキョー
ある子供には、親がいなかった。
幼い頃に捨てられた子供だった。
ふびんに思った老夫婦は
自分たちがあと何年生きられるか分からないが
その子供を引き取ろうと考えた。
ナンミョーホーレンゲーキョー
ナンミョーホーレンゲーキョー
子供は老夫婦の前では
「聞き分けのいい子」を演じたが
裏では、老夫婦のお経を覚えたカナリヤを
気味悪がって、いじめた。
ナンミョーホーレン、クソキメェ
ナンミョーホーレン、クソキメェ
カナリヤが子供の悪口を覚えたせいで
子供の性格が老夫婦にばれた。
元々、子育ての経験のない老夫婦は悩んだ。
強く叱るべきか、優しくたしなめるべきか
手をあげたら虐待になりはしないか
何も知らないふりをしてやりすごすのも一つの手か。
ちょうどその時、「あれ」がおこった。
善人も悪人も、金持ちも貧乏人も、美人も不細工も
幸福も不幸も喜びも悲しみも
怒りも不安も強いものも弱い者ものも
「あれ」は全てに対して平等に、無慈悲に、
水に流し、灰に帰し、死病にして奪った。
カナリヤは運よくカゴから逃げ出し、
波間に浮かぶ家々の屋根を止まり木にしながら
南へと逃げた。
奇妙な鳴き声で、鳴きながら。
ナンミョーホーレンゲーキョー
ナンミョーホーレン、クソキメェ
理由はない。ただ、作らなかった。
老夫婦は、つがいのカナリヤを飼い
ある年齢を迎えてから
毎日お経を唱えるようになった。
ナンミョーホーレンゲーキョー
ナンミョーホーレンゲーキョー
お経を唱えるようになってから
人に尽くしたいと考えるようになり
自分たちに子供がないぶん
地域のボランティアに参加して
色々な子供の世話をした。
ナンミョーホーレンゲーキョー
ナンミョーホーレンゲーキョー
ある子供には、親がいなかった。
幼い頃に捨てられた子供だった。
ふびんに思った老夫婦は
自分たちがあと何年生きられるか分からないが
その子供を引き取ろうと考えた。
ナンミョーホーレンゲーキョー
ナンミョーホーレンゲーキョー
子供は老夫婦の前では
「聞き分けのいい子」を演じたが
裏では、老夫婦のお経を覚えたカナリヤを
気味悪がって、いじめた。
ナンミョーホーレン、クソキメェ
ナンミョーホーレン、クソキメェ
カナリヤが子供の悪口を覚えたせいで
子供の性格が老夫婦にばれた。
元々、子育ての経験のない老夫婦は悩んだ。
強く叱るべきか、優しくたしなめるべきか
手をあげたら虐待になりはしないか
何も知らないふりをしてやりすごすのも一つの手か。
ちょうどその時、「あれ」がおこった。
善人も悪人も、金持ちも貧乏人も、美人も不細工も
幸福も不幸も喜びも悲しみも
怒りも不安も強いものも弱い者ものも
「あれ」は全てに対して平等に、無慈悲に、
水に流し、灰に帰し、死病にして奪った。
カナリヤは運よくカゴから逃げ出し、
波間に浮かぶ家々の屋根を止まり木にしながら
南へと逃げた。
奇妙な鳴き声で、鳴きながら。
ナンミョーホーレンゲーキョー
ナンミョーホーレン、クソキメェ

ロクデナシの瞼
ボクは昼でも夜でも起きてるよ。
時間がもったいないからだよ。
ずっと起きてると、
寝てると見えなかったものが
見えてくるよ。
年中ジョギングしてるあの人は
下着ドロボーの常習犯。
誰とでも寝るあの子は
病気をみんなにばらまいてる。
酔っぱらってるあのおじさんは
みんなのお金を盗んだ人で
ふらふらしてるあの少年は
お母さんを刺した自分をなげいてる。
眠らないと疲れが取れないなんて
ボクにはあてはまらないかな。
色んなロクデナシがたくさんいて
それに比べて自分は
どれだけマシなんだと確認できて
ドーパミンが出てるのかもしれないね。
向こうからすれば
他人の生き様をのぞき見してるだけのボクもまた
ロクデナシに見えるのかもしれないけどサ。
270°回る首で
地平線をぐるりと見てみる。
どんな角度から見ても
ロクデナシはロクデナシのままだったよ。
時間がもったいないからだよ。
ずっと起きてると、
寝てると見えなかったものが
見えてくるよ。
年中ジョギングしてるあの人は
下着ドロボーの常習犯。
誰とでも寝るあの子は
病気をみんなにばらまいてる。
酔っぱらってるあのおじさんは
みんなのお金を盗んだ人で
ふらふらしてるあの少年は
お母さんを刺した自分をなげいてる。
眠らないと疲れが取れないなんて
ボクにはあてはまらないかな。
色んなロクデナシがたくさんいて
それに比べて自分は
どれだけマシなんだと確認できて
ドーパミンが出てるのかもしれないね。
向こうからすれば
他人の生き様をのぞき見してるだけのボクもまた
ロクデナシに見えるのかもしれないけどサ。
270°回る首で
地平線をぐるりと見てみる。
どんな角度から見ても
ロクデナシはロクデナシのままだったよ。

日々、擬態 -Urban chameleon-
みんなが家族で、みんなが仲間で、
みんなが助け合い、監視しあい、
なんでも筒抜けの住みかは
善意がうるさいことも少なくないけど
結局のところ、居心地がよくて
外の世界への憧れもなかったし
住みかから抜け出して生きるなんて
想像もしていなかった。
しかし住みかは、巨大な前足によって
前触れもなく、あっけなく壊された。
新天地を目指さなければならない。
環境が変わることへの恐怖はなかった。
すぐにとけこむことができるのが
あたしの能力。
あたしは森から、街へと住みかを変えた。
みんなが他人で、みんなが敵で、
みんなが揚げ足を取り合い、顔すら見ず、
すぐ側にいる人にも興味を持たない住みかは
無関心にそら寂しさを覚えることもあるけれど
結局のところ、すぐに慣れて
森よりも居心地がいいような気すらして
あたしは街にとけこんだ。
あたしは景色と同化して誰にも見つかることなく
エサを狙い撃ちして、
長い舌を使って、一瞬で食べる。
消えても誰も探さないようなエサを選んで
闇の中から命を奪う。
せいぜいみなさん、気を付けて下さいな。
あたしのエサに、なりたくなければね。
みんなが助け合い、監視しあい、
なんでも筒抜けの住みかは
善意がうるさいことも少なくないけど
結局のところ、居心地がよくて
外の世界への憧れもなかったし
住みかから抜け出して生きるなんて
想像もしていなかった。
しかし住みかは、巨大な前足によって
前触れもなく、あっけなく壊された。
新天地を目指さなければならない。
環境が変わることへの恐怖はなかった。
すぐにとけこむことができるのが
あたしの能力。
あたしは森から、街へと住みかを変えた。
みんなが他人で、みんなが敵で、
みんなが揚げ足を取り合い、顔すら見ず、
すぐ側にいる人にも興味を持たない住みかは
無関心にそら寂しさを覚えることもあるけれど
結局のところ、すぐに慣れて
森よりも居心地がいいような気すらして
あたしは街にとけこんだ。
あたしは景色と同化して誰にも見つかることなく
エサを狙い撃ちして、
長い舌を使って、一瞬で食べる。
消えても誰も探さないようなエサを選んで
闇の中から命を奪う。
せいぜいみなさん、気を付けて下さいな。
あたしのエサに、なりたくなければね。
