仮面執事と銀のギター(今は赤だけど…orz) -19ページ目

ヒキコムリ

自分には、悩みがあるが
その正体が何なのか分からずにいる。

カタツムリである自分は
生まれた時から男であり、女であるから
セクシャリティに関する悩みではない。

葉っぱからコンクリートまで
食べ物はたくさんあるし
天敵のマイマイカブリは
都会にはほとんどいないので
生活の悩みでもない。

ただ、殻から出たくない。

誰も傷つけず、誰にも傷つけられず、
自分の身体の一部である
自分の殻のなかにいたい。

殻の中には、宇宙が広がっている。
とても静かで、死者の夢のようだ。

殻をノックする者がいる。
ゆっくりと殻から出ると
別のカタツムリがいた。

そういえばそろそろ、交尾の季節だ。
どちらかが精子を送り、
どちらかが卵を産むのが、自分たちのやり方。

そして、送る側が刺すトゲによって
送られる側は死に一歩近づく。
トゲの効果によって、生殖能力が衰えてしまうのだ。

自分は殻の中で長生きしたいので
刺す側に回ろうと思った。

しかし相手も、同じことを考えた。

空中でぶつかり合うトゲとトゲが
十字架のように重なった。

同姓婚を嫌悪してやまない一人の神父が
その様子をじっと見ていた。

イメージ 1

儂鰐レボリューション

ワシ、ワニ。

地球との付き合いは
恐竜が絶滅するもっと前から。

噴火・台風・地震・津波
しまいにゃ隕石。
色んなことが巻き起こっても
まだ生き延びとるよ。

あるニンゲンによると
色んな形態に進化してる他の動物に比べて
ほとんど進化してないワシらは
負け組」なんだと。

負け組」のくせに生き残ってる理由が
謎なんだと。

ワシらからすれば
今、生きていることが全てなんだが
勝ちとか負けとか言いたがるあたりが
ニンゲンらしい。

なんでもワシらの身体から
HIVとかいうニンゲンの死病を治す
抗体が見つかったんだとか。

食べられて、皮を剥がれて、
檻に入れられて見せものにされて
ニンゲンには散々な目に遭わされたが

今度は薬を作るために、殺されるのかねえ。

ついさっき、ワシをとっ捕まえようとしたニンゲンを
頭から食ってやった。

ニンゲン流に言えば「純粋な捕食」であり
正当防衛」とも言えるが

ニンゲンには
目先の感情に任せた殺戮衝動」に加え
復讐」という行動がある。

やれやれ。人間の感情は
進化しないのかねえ。

戦争が、始まるのかねえ。

イメージ 1

不毛な荒野に舞う玉虫

世の中にはグレーゾーンの
ままにしておくことが
ベストな選択になることもある。

白黒はっきりつけたい人は大概、
問題とはほぼ無関係の第三者で

そういう人たちは白でも黒でも
実際のところどちらでも良いので
とても厄介。


すぐ側に私がいることにも気付かず
ニンゲン同士が不毛な言い争いを
続けている。

玉虫色」という私の身体の色の特徴を利用した
慣用句があるが
頭に血が上った2人に私の姿は見えない。

ほらほら、私はここにいるよ。
羽を広げてアピールしてみた。

ニンゲンは私をちらっと見て
「何だこの虫」と言った。

2人とも都会育ちで虫の名前などろくに知らず
そもそも「玉虫色」という言葉すら知らないほど
無学であった。

背の低い方のニンゲンが
薄汚い手で私を捕まえようとしたので
私はぱっと飛び立って逃げた。

私は聞こえない声で言った。
「さようなら、ニンゲン」

イメージ 1