仮面執事と銀のギター(今は赤だけど…orz) -20ページ目

ブルージー金魚

一番古い記憶は
赤色の仲間であふれかえった
養殖場の生け簀。

おしあいへしあい泳ぎ
ニンゲンがエサをまく気配がしたら
一斉に水面に向かう。

仲間が多くて、エサを逃したら
飢えるから、こちとら必死。

次の記憶は、
提灯が夜空にぶら下がる、
金魚すくいの屋台のたらい。

ポイに追い回され
運よく破れたら逃げ切れるが
逃げられないと
ニンゲンに捕まって連れ去られる。

おれは運が悪かった。

次の記憶は、金魚鉢。
おれを連れ去ったニンゲンの子供は
おれの世話にそうそうに飽きて

滅多に掃除しない金魚鉢は年中コケだらけで
エサは子供の母親が食べ残しをくれたが
食べられないものが多くて、辛かった。

一番最近の記憶は、下水。
身体の赤色は抜けて
普通のフナとして大きくなったおれは
子供の母親にトイレに流された。

ようやく解放された。
下水の世界には
ニンゲンの糞尿と、ニンゲンのゴミと、
ニンゲンの骨があった。

骨にはまだ肉が残っていたので
軽くつついてみると、下流へと流されていった。

そのガイコツは
金魚鉢の横にある家族写真に写っていた
子供の父親に少し似ていた。

イメージ 1

うたた寝とあい気

陽気に眠気が止まらない。
干し草を反芻して、あくびをひとつ。
平和である。

あたしは、牛。
遺伝子組み換えで、乳が普通のよりも
たくさん出るように、ニンゲンに作られた牛。

外敵からも病気からも守られ
乳を与える代わりに、毎日餌をもらえる
完全なる世界で、何不自由なく生きている。

そこにあるのは、終わらない惰性。

ニンゲンは退屈すぎると
つまんなことを考え過ぎて自殺するらしいけど
あたしは牛だから、そんなことしない。

青空を見上げて、ゲップをひとつ。

あたしらのゲップとかフンとかから出る
メタンとやらが、地球をあっためてるトカ。

地球があったまると自然災害が増えて
ニンゲンがたくさん死ぬんだトカ。

ニンゲンが絶えたらどうするカネ。

野生には戻れないし、心中することになるのカネ。

それもまた、平和はハナシじゃないか。
ああ、眠い。

イメージ 1

アフター・スワン

たまたま別の鳥の卵に
混ざって生まれたわたしは
その灰色の羽をからかわれ、なじられ、
さげすまれたものだが

大人になって、その評価が一変した。

羽が生えかわり
真っ白な白鳥になったわたしは
その見てくれをほめられ、たたえられ、
せんぼうのまなざしで見つめられた。

それまでわたしを見下していた者たちは
自分たちがしてきたことを肯定したいのか
それともただねたんでいるのか
今度は見てくれとは違う部分を攻撃してきた。

あいつはそもそも協調性がないだの、
声が耳ざわりだの、息がくさいだの、
あることないこと並びたててくる。

今までのわたしなら、ただ口を閉じて
耐えていることしかできなかったが
今はわたしをたたえる仲間たちがいる。

わたしは今まで自分の中でおさえてきた
言葉を、仲間たちと一緒にあびせた。

ぶすどものひがみほどみにくいものなはい。
他人を評価するしかくが
そもそもおまえらごときにはかけらほどもない。

次から次へと言葉があふれ
数もこちらが圧倒的で
わたしをさんざんこき下ろしていたはずの連中は
ついに反撃する言葉を失い
なかには泣いてゆるしをこう者さえいた。

いい気分だった。その瞬間だけは。

イメージ 1