2020 年に見た映画の中から選んだお気に入りの10本について一通り言及しようというエントリです。
映画館で70本、配信専用映画が9本、配信で見た2020年公開作が1本ということで、合計80本。去年が86本だったので減りました。
そこから選んだ10本を、見た順に語っていこうと思います。よろしくお願いします!
パラサイト 半地下の家族
全国公開が待ちきれず、先行公開で見た作品。1月2日に愛知在住の自分が新幹線に乗って大阪梅田まで足を延ばして観賞。その日のうちに2回見たので大阪グルメを楽しむ間もなく帰りました。
チル@eigazombiechillパラサイト/半地下の家族、見ました。ポン・ジュノ監督作品で一番面白かったのは間違い無い。超展開に振り回される感覚、砲丸投げの如し!それでいて思いっきり笑えるし、観ている側の感情も揺さぶりまくる。クライマックスはスラップスティック構築力に圧倒されるばかり。監督の天才っぷりを再確認。
2020年01月02日14:59
御多分に洩れず最初に見た直後は呆然としました。演技、撮影、美術、編集、音楽…様々な角度から映画を楽しんでいた脳に叩きつけられる緊張。上映時間のちょうど半分が過ぎたところで再登場するあのキャラクター。改めて姿勢を正して見ていても、想像を超える展開にいつの間にか飲み込まれてしまう。
2度目の観賞で作中の様々なモチーフ/シンボルにどんな意味があるのかを理解したつもりになり、色んなイメージを反芻しながら新幹線に乗りました。階段、坂道、境界線、雨、石、ネイティブ・アメリカン。本作がアカデミー賞を席巻すると同時に様々な批評/解説が飛び交ったので、逆に「自分なりの解釈」の余地が残ってないとも言えますね。
エクストリーム・ジョブ
2019年の韓国映画。韓国で歴代興行収入1位を記録したメガヒットコメディ。パラサイトの翌日に見ました。麻薬取締班が張り込み捜査のためにフライドチキン屋に扮するのだが、事態は思わぬ方向に…
チル@eigazombiechillエクストリーム・ジョブ、見ました。5秒に1度のギャグラッシュ! これほど笑いに貪欲な映画は滅多にないですよ? オープニングの刑事ものメタ系ギャグでつかみばっちり。ラスボスがシン・ハギュンの時点で既に笑える。序盤で省略した要素をクライマックスで爆発させる構成に感涙。超痛快コメディだ!
2020年01月03日 15:47
年に1本あるかないか、劇場全体が笑いで一体化するようなコメディに出会えますが、本作はまさにそれ。笑わせるための空気を常にキープしながらクライマックスに向けての流れを作り上げていく。
ツイートで言及した「序盤で省略した要素」とは、主人公チームの背景に関する説明。リュ・スンリョン演じるチーム長以外は家庭環境なども不明のままクライマックスに到達。そこで初めてチーム5人がどんなキャラクターなのかという情報を提示し、アクションシーンの高揚感の爆発につなげています。
状況の描写と会話のやりとりだけで観客を飽きさせないのも高度な技術なのですが、クライマックスでキャラ紹介という手法はものすごく斬新に思えました。5人が5分割になったスクリーンに横並びで勢揃いした瞬間、涙腺が崩壊してしまうのです。
サヨナラまでの30分
2020年最大の大穴枠。日本の青春映画です。とあるバンドのボーカリスト・アキは交通事故で死去。1年後、アキの残したウォークマンを偶然拾った青年・颯太はアキの幽霊が見えるようになり…
チル@eigazombiechillサヨナラまでの30分、見ました。これはこれは見事な青春バンド映画でございます! アヴァンタイトルからして傑作の香りがビンビン。設定も展開もルックも芝居もクライマックスも、全部素晴らしい。こんな邦画めったにないよー! 主演の2人とヒロインが超超魅力的! 見逃し厳禁の大傑作です!
2020年02月13日 17:13
主演2人こそメジャー級ですが、予算としては割と安め(だと思われる)。公開規模も大きくない作品なのですが、見てみたら大当たりでした。バンドもの、ゴーストもの、若者の死といったテーマはそれほど珍しくありませんが、設定/構成がとても上手く、北村匠海&新田真剣佑の高い演技力によってストーリーを自然に受け入れられるのです。
ポジティブな死者=新田真剣佑と、ネガティブな生者=北村匠海というコントラストも明快。ヒロインを含めた三角関係も適度に混ぜつつ、主人公2人が成長することで映画が幕を下ろす流れも美しい。日本映画にありがちな違和感がほとんど見られず、素直に楽しめる感動作でした。是非とも御覧ください。
PMC/ザ・バンカー
2018年の韓国映画。監督キム・ビョンウ、主演ハ・ジョンウの『テロ/ライブ』コンビ再び。ハ・ジョンウ率いる傭兵部隊は南北朝鮮の間にある地下施設で北朝鮮高官の拉致を命じられる。しかし彼らの前に現れたのは…
チル@eigazombiechillPMC/ザ・バンカー、見ました。これめっちゃくちゃヤバくない!?圧倒されながらも面白すぎて。山場の連続っぷりは『EXIT』のようでもあり。政治性も含んだミリタリーアクションかと思ったらジャンル飛び越えてくるし、台詞の殆どが英語なハ・ジョンウ見てるとハリウッド映画にしか思えなかった…
2020年03月05日 18:09
この作品については別個で記事を残したのでそちらをご一読ください。
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY
DCコミックス系のヴィランキャラクターであるハーレイ・クインを主人公にしたスピンオフ作品。自分を悪の道へ導いたジョーカーに捨てられたハーレイ・クイン。後ろ盾を失った彼女は様々なトラブルに巻き込まれていく。
チル@eigazombiechillハーレイ・クインの華麗なる覚醒/BIRDS OF PREY、見ました。うん、DC映画ナンバーワンですね、はい。どこから褒めればいいのこの映画? 個人的にはアクション一推し!『シビルウォー』のルッソ兄弟を思わせる、明るく楽しく激しいアクションデザインが兎に角サイコー!キャシー・ヤン監督、天才かも。
2020年03月24日 19:21
見た直後のテンション↑ほどは評価していないと言わざるを得ませんが、2020年を振り返った際に忘れたくない一作なのは間違いありません。主人公が何人かの女性キャラと(結果的に)連帯/共闘して悪役を倒すストーリーは昨今のトレンドともいえるシスターフッド映画の系譜に数えられるでしょう。
2020年公開作で同系統のものを挙げると『スキャンダル』『チャーリーズ・エンジェル』『パピチャ』などがあり、それらと比較すると本作は明るすぎポップすぎ能天気すぎで、社会問題に対するアプローチとは程遠い内容ではありますが、現時点の自分が最高に楽しめた/違和感なく楽しめたのは本作でした。
香港映画の流れを汲むようなアクションデザインで大暴れする女性キャラクター達。簡単に連帯せず、それぞれが主張をぶつけ合って納得した上で共通の敵に立ち向かうところも大好きです。
脚本のクリスティーナ・ホドソン、監督のキャシー・ヤン、プロデュース/主演のマーゴット・ロビー。エンドロールで3人の名前が並んだ時には感動。観賞直後に購入したサウンドトラックも女性ボーカル曲ばかり。自分は男ですが、ものすごくパワーをもらえた作品でした。
サーホー
2019年インド映画。『バーフバリ』二部作で大ブレイクしたプラバース主演の現代アクション大作。巨大企業のボスが殺され、彼の隠し財産へのアクセスキーを巡る権謀術数が…
チル@eigazombiechillサーホー、見ました。『バーフバリ』主演プラバースが今作では特捜刑事となり、巨大企業のインド進出を阻むべくスケールのデカすぎるアクションを披露!バーフバリにも似た爆笑ポイントがてんこ盛りでまったく飽きないのだけど、バーフバリ以上に大胆な構成には素直に感心。サーホーの正体、必見です!
2020年03月28日 23:32
Wikipedia見てみると本作は批評家から酷評あびまくったらしいのですが、それでも自分は大好きです。バーフバリでスーパーヒーローを演じきったプラバースがハイパーパワーアクションで大暴れしてくれるのは期待通りでしたが、そんな彼のイメージを利用した展開にビックリしました。
現代劇とは思えないでかすぎるスケールのストーリーも、破壊と爆破の規模も、キャラクターの濃すぎる味付けも、全部大好きなんですが、個人的には前述したどんでん返し展開を評価してます。それによって全体の説得力が弱くなってしまっているとしても、チャレンジすることを選択した心意気に感謝しつつ10本に選ばせていただきました。
透明人間
安心のブランド・ブラムハウス製作。古典的ホラーアイコンのモダン化。女性が邸宅を脱出するオープニングから極限の緊張感が止まらない。
チル@eigazombiechill透明人間、見ました。『アップグレード』の監督。プロデュースは安定安心のブラムハウス。ホラーとしてまず凄い。久しぶりに怖い映画を見た感じ。耐性がない人は夜中にトイレ行けなくなるやつ。そして展開もロジカルで、クライマックスとオチは見事!たたみかける感じは『ドント・ブリーズ』を連想。
2020年07月12日 17:22
幸運なことに映画を見ていて「怖い」と思う機会は少ないのですが、本作は恐怖と緊張に飲み込まれそうになりました。束縛から逃げ出した主人公が信じがたい現象の数々に疲弊し、精神的に崩壊していく事で友人の信頼を失って孤立していく展開によって観客のリンクを誘発するんですね。
自分の言葉を信じてもらえず逆に自分が悪いと思わされる「ガスライティング」という現象を、透明人間という古典に上手く融合させているからこそ、ただのビックリ箱ホラーに終わっていない。さらにはCG使いに長けたリー・ワネル監督ならではのショック演出がニヤニヤさせてくれます。ラストの展開もお見事。
ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー
サブタイトルいらんよ…女優オリヴィア・ワイルドの監督デビュー作。卒業を明日に迎えた女子高校生コンビが、勉強ばかりしてきた事を後悔し、友人主催のパーティで(本当は)イケてる自分をアピールしようとするが…
チル@eigazombiechillブックスマート、見ました。高校卒業を明日に控えた2人の優等生女子が卒業式前夜にイケてる自分を証明すべく大迷走。展開は『Superbad』だけど、構造として『The Breakfast Club』を流用し、奇跡的なフィナーレを作り上げる事に成功している。ただのWomansで終わらないところはSuperbadよりも秀逸か。
2020年08月26日 19:37
Netflixで配信されていて再び観賞しましたが、やっぱり最高に面白いですね。イケてるとは言い難い2人が一晩で逆転ホームランをかっ飛ばそうとする話なんて好きに決まってる。展開は『スーパーバッド/童貞ウォーズ』に近いのですがギャグのキレとしてはこちらの方が上か。
同級生のキャラクターも多彩で、人種もパーソナリティも千差万別(ブレックファスト・クラブ的)。それによってお互いに相容れない部分もあるのですが、翌日に卒業を控えているだけあって無意味な衝突が生まれない。展開のスムーズさにつながっています。
クライマックスというよりフィナーレと呼びたい、あの光景。恋愛が成就して万歳!ではなく、同級生全員に祝福を与える広い視野とスタンスを誇る素晴らしい大団円でした。何十回でも楽しめる最高の青春映画です。
ミッドナイト・スワン
主演は新しい地図の草彅剛。監督は『獣道』などの内田英治。トランスジェンダーの凪沙は、従姉妹の娘・一果を預かる事になる。新宿の片隅で始まる共同生活。
チル@eigazombiechillミッドナイトスワン、見ました。内田英治監督×草彅剛主演。人の心がちゃんと感じられる丁寧な脚本に好感を持ったし、ボロンボロンに泣かされた。日陰を歩いてきたトランスジェンダーの凪沙が、光を浴びるべき存在である一果に出会うことで変わろうとする。その心情を思うと涙腺がはち切れた…
2020年09月25日 18:01
国民的スーパーアイドルだった草彅剛が難しい役に挑戦!…と聞いてもさほど期待値は上がらなかったのですが、結果的には目がヒリヒリするほど感涙。
好評の多くが指摘している草彅剛と服部樹咲(新人)の演技が素晴らしい。草彅氏は役を作り込むというより内包するタイプで、服部さんはぎこちなさが目立っており早熟系の上手さがあるわけではない。それでもこの2人が織りなす空気感に目を奪われるのです。
もちろんシナリオも秀逸。常に痛みを伴うような展開は、内田監督によるトランスジェンダーへのリサーチが生かされており、日本におけるセクシャル・マイノリティへの根強い差別意識が残酷なほどに投影されています。そんな社会で凪沙が選ぶ生き方とは…
チル@eigazombiechillこの役を香取慎吾が!?という意味で『凪待ち』は素晴らしかったけど、『ミッドナイトスワン』に関しては「草彅剛が演じなければならなかった役」とさえ思う。光と影。 しかもオリジナル作品だもんなあ。マーケティングというエサに食いつかず、意味のある仕事を選んでいる証拠なのだと思う。
2021年01月08日 22:26
私の選ぶ2020年ベスト映画は本作かもしれません。別個で記事にしたい作品。
佐々木、イン、マイマイン
チル@eigazombiechill佐々木、イン、マイマイン、見ました。ツイートもままならないほど刺さったー!心グラングラン揺さぶられてるー!眼球が乾かない! やい藤原季節! すんげー芝居見せつけてくれたな!あなたのような一瞬の(でも確かな)煌めきを目撃するために俺たちは映画館に通うんだよ!ありがとうございます!😭
2021年01月08日 22:26
最初のツイートでは藤原季節を絶賛していますが、彼が終盤で見せる芝居で一気に心を掴まれたのは事実です。そして彼が演じる主人公がたどり着く場所、クライマックス、圧倒的なきらめきに満ちたラスト。終盤の勢いで映画全体の印象が決定づけられるタイプの作品でした。
中盤まではストーリー面でグッと引き込まれるところがなかったものの、各キャストの演技が見事。監督が若手の素晴らしい演技をうまく引き出していて、彼らのアンサンブルを見ているだけでたまりません。佐々木役の細川岳さんなんて佐々木にしか見えないのですが、他の作品ではまったく違うキャラを演じているらしく、今後に期待したいです。
某有名人さんも指摘されていましたが、この映画は男女の別れをきっちり描いているところが珍しいし、評価したいところです。別れを決意するきっかけがあのシーンで、別れた直後があのシーン…この流れで描かれるクライマックスは今年ベスト級の感動を得られました。見逃すべからず!
以上、10選でした。
というわけで2020年の映画を自分なりに振り返るエントリをなんとか残すことが出来ました。映画感想はTwitterに書き残しておりますので、お暇な方はフォローしてください。
https://twitter.com/eigazombiechill
それではごきげんよう!