見ました。Twitterで内容に触れると怒られそうなので、思った/感じたことをこちらに書き殴っていこうと思います。
オープニングは、前作『インフィニティ・ウォー』で出番が無かったホークアイの視点でスタート。家族以外に誰もいない、広大で緑あふれる土地で娘・息子・妻との大切な時間を過ごしながら、目を離した瞬間に消失していく家族たち。
壮絶な戦闘の果てに灰となっていったヒーロー達…とは真逆のイメージで、サノスのもたらしたカタストロフの現実味を強調するアプローチに感心しました。
続いてはアイアンマン。前作で宇宙に飛び出してサノスに挑んだ結果、宇宙に取り残されたトニー・スタークは同じ場所で生き残ったネビュラと共に絶望するしかなく、遺言代わりの音声メッセージを録音し続ける3週間。
この2人を地球に帰還させたのが、たまたま通りかかったキャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァース。彼女のスーパーパワーで宇宙船ごと地球にカムバックする展開は、この作品の中でも最大級のチカラ技。
マーベルは全宇宙の難破船を探知する能力があるのかな? それに近い描写を多少なりとも入れて、「宇宙でたまたま」感を薄めるアプローチは欲しかったですね。直近の単独映画でキャプテン・マーベルへの信頼と魅力が描かれているから、細かいところが気にならなくなっている部分もあります。
キャプテン・アメリカ他アベンジャーズの面々は地球でアイアンマンと再会。人数は激減したけどサノスに反撃したいという意思は失っていない面々。
「また負けるだけでは?」という慎重論もアリバイ的に浮上しますが、「アタイがちょっくら殺してくるわ、サノス」「私がいるから余裕っしょ」(意訳)というキャプテン・マーベルの勢いに乗って襲撃が決定的に。
「サノスの居場所が分からない」という重大な問題は、たまたま生き残った(としか言いようがない)ネビュラによって解決。「そういえばあいつ、どこどこの星で余生を過ごすって言ってたわ」と、彼女が都合の良いナビゲートとして機能する事でここの展開を半ば強引に動かします。
この辺りを見るに、「主人公たちの行動に必要な情報をいかに入手するか(させるか)」という部分が綺麗で説得力のあるものになっているかについては、小さな疑問点として記しておきたいところ。
襲撃(反撃)決定の流れで、キャプテン・マーベルの勢いの良さに最も同調していたのが、ソー。予告編でも接近していたソーとマーベルは、性格的にも相似形だったんですね。「こいつ好き」と、マーベルを認めるソーの姿に、「そーでなくちゃ!」と感じた次第です。
アイアンマンは地球帰還後にダウンしちゃったし、ハルクもいないホークアイもいない…というわけでかなり限定的なメンバーしか居ないながらもサノスへのカチコミ開始。
とある惑星でひとりぼっち、見たことないデカ果実をガントレットでむしりとったサノスは、そのままあばら家の中で自炊開始! 理想的なリタイア生活を送っているサノス爺に容赦なく総攻撃をしかけるヒーロー達。
マーベルさんという新戦力(にして究極のスーパーヒーロー)のおかげか、あっけなくインフィニティ・ガントレットのついた腕を切断!出会って20秒で最強ヴィランが無力化!? 驚きながらも、「また幻覚だったり時間戻ったりして、結局サノスには敵わないんだろうな」と思っていたところ…
ソーの新武器ストームブリンガーによって、サノスはあっけなく斬首! サノス死亡! サノス死亡!?ラスボス死亡!!??
この展開、お見事でした。多少の問答はあったものの、単なる御隠居になっていたラスボスは、あまりにも早い段階で打ち破られてしまいます。しかもサノスは、野望のために活用した6個のインフィニティ・ストーンを「原子に戻った」と発言。「ガントレットとストーンをどうやってサノスから奪うか」を考えてきた、全世界のヲタク達もさぞや驚いた事でしょう…
(そうでもない? 予想できた? まあとにかく、映画の構造的にこの場面は最大のサプライズとして描かれていたところです)
暗転した画面に映る、5 YEARS LATERの文字。これまたびっくり。次に映るのは人気のない野球スタジアム。サノスの死と5年の歳月は、生き残った人々にとって何の救いにもならなかったという事が明らかになっていきます。
集団セラピーで市民と自分の心を癒そうとしているキャップ。対してブラックウィドウは、世界の秩序を守ろうと尽力するも、喪失感の大きさから精神的に限界を迎えつつある。髪の色もまだら状態だ。
そんなタイミングで登場する救世主が、ネズミの気まぐれ(aka脚本家の都合)で量子世界から帰還したアントマン。『アントマン&ワスプ』で別世界に存在する事となった彼は、知らない間にゴースト化した地球の街並みを目にして絶望するも、大きく成長した自分の娘と再会。
アントマンによってもたらされた新しい理論でアベンジャーズに光明が見えてくる。過去に戻れるなら、この世界線で消失した人々を復活させられるかもしれない! しかしアントマン自身は超科学的なガジェットの開発能力を持たない。
ここでアベンジャーズは、「アントマンスーツを発展させ、過去に戻れるタイムマシンシステムを完成させる」という具体的な目標を得ることに。さあ、そんな都合よく、頭の良いメカオタクを世界の中から見つけ出せるのでしょうか!?
すぐ見つかりました。アベンジャーズにいました。
延々と繋がれてきたMCUの大河的ストーリーが、「社長=アイアンマンの知能と開発力次第でどうにかなるかも」というポイントに帰結するのは、美しいと言わざるを得ない激アツ展開です。すべての始まりは、2008年に予想外の大ヒットとなった映画『アイアンマン』から始まっているのですから。
社長がゴネたからやっぱりハルクに頼もう、あいつも元は天才的な博士だし…みたいな展開もあるのですが、この寄り道シーンはギャグで客席を温める/柔らかくするのを目的としており、切羽詰まった雰囲気は薄くなっています。
なんだかんだでタイムマシンの諸問題を解決してみせたトニー・スタークが、娘や愛妻と過ごす何気ない一夜で見せる表情の深みを見ると…たとえアベンジャーズへの協力を決意していなくても、彼の中にある正義感/責任感/贖罪意識などが一気に伝わってくるのです。彼の家にはちゃんと、ピーター・パーカーとのツーショット写真が飾ってあるのですからぁ! 忘れる事なんてできっこないんですからぁ!
タイムマシンシステムの完成を経て、お次はアベンジャーズのリクルートフェーズに移行。ホークアイとソーを説得するため。世界へ。
ホークアイは東京でヤクザを殺しまくっており、ソーは港町にニュー・アスガルドという集落を形成して引きこもり/ビール漬け生活。正直言ってこの2人の「現状」描写は、やりすぎ。
シリアスなホークアイとギャグのソーという対称性を強調させたいとはいえ、ホークアイがヤクザを殺しまくる展開にはまったく背景が描かれておらず唐突の極み。コミック順守でローニンという闇落ちキャラである事を描いたシーンらしいですが、それはコミックファンを喜ばせるだけの記号遊びであって、映画そのものの流れやリアリティ、世界観との親和性を考えると無理やりだと思います!
そしてマイティ・ソーよ! 目的もなく自堕落な生活に溺れ、ヒゲボーボー、引きこもり…というところまでは理解できるが、完全なるメタボ体型のデブおやじになってるのはギャグに寄せすぎぃ!
「クソデブからのダイエットで長身マッチョのイケメン雷神ソーが大復活!」という展開があれば燃えただろうけど、結局はそんな描写に尺を使えず、最後までクソデブおやじのまんまって、そりゃねーよ! 脂肪のせいでエンドゲームがエンドできなかったらどうすんだ!
…自分の脂肪を減らしてから文句言えって? あー、はい、それはおっしゃる通りです。だらしないメタボ中年ソーに社長が「どいてくれリボウスキ」と皮肉るのは率直に笑いました。(アイアンマンにも同じセリフがあるとか?)
ソー/ラグナロク(マイティ・ソー/バトルロイヤル)で短髪隻眼最強神として覚醒したソーが大好きだったし、同作で登場した、これまた大好きなキャラであるKorgに再会出来た事はめちゃめちゃ嬉しかったんだからね!? ゆえにデブソー問題の深刻さは有耶無耶になってたけども…
アベンジャーズシリーズ最後の最後にクソデブ化させられたソーには同情を覚えますよ。ソーのファン、クリス・ヘムズワースのファンがルッソ兄弟やケヴィン・ファイギ(総合プロデューサー)に怒りをぶつける事になっても仕方ないよこれは。
メタボ腹には目をつぶって次の展開! タイムマシンできた、メンバーも揃った、次のクエストは、過去に戻って全宇宙に散らばった6つのインフィニティ・ストーンを回収すること! 過去のMCU作品を振り返った結果、3つの時代/3つの場所へ向かえば全てのストーンを確保できると判明。ここでお待ちかね!
アベンジャーズが3つのユニットに別れ、それぞれの時代へレッツゴー!というワクワクが止まらないラノベ的展開に突入していきます。「時代と宇宙をまたにかけたケイパーもの」とでも言えるでしょうか。
ここでヒーロー達は『アベンジャーズ』『マイティ・ソー(ダークワールド?)』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の3作品で描かれた時代へタイムスリップ。
ケイパーものに例えてはみましたが、ストーンの確保にハラハラさせられる正当派サスペンスなのは『アベンジャーズ』篇のみ。『マイティ・ソー』篇でソーとロケットが繰り広げる漫才&ギャグ展開は、最後こそホッコリ要素があるもののほとんど笑いのためのシーン。ハラハラ感は皆無。
対して『ガーディアンズ略』篇は、スターロードのあの名場面の再現に泣きそうになるくらい感動しつつも、後半はホークアイとブラックウィドウが、ストーンを得るために奈落へ身を捧げようとする自己犠牲合戦になっていきます。必死に、死のうとする2人。
「ソウルストーンは自分の大切な人を生け贄に捧げることでしか手に入れられない」という厳然たるルールがあるため、知恵や勇気や愛だけではどうしてもストーンを得られない。脚本家は、どちらかのキャラを自殺させる事でしか話を進められないのです。見ていてどうもスッキリしなかったし、感動できるほど演出がしっかりしていたわけでもなく、後々のフォローもあっさりしすぎで、トータルで納得しづらい場面でした。
そして『アベンジャーズ』篇。つかみギャグを入れつつ、アクションもサスペンスもしっかり盛り込まれており、3つのチームの中ではダントツの面白さ。窮地になった時にヒーロー達が繰り出す「ネタバレ攻撃」は、MCUの歴史の重みと楽しさをうまく融合させた最高の展開でした。
3チームが次々とストーンを集めていく中、『ガーディアンズ略』篇に存在している旧サノス(野望に邁進中)は、未来から来たアベンジャーズの企みに気付いてしまいます。未来で倒したサノスも、過去に戻ってくれば最強最悪のラスボスとして君臨。
過去のネビュラと未来のネビュラ、サノス、ガモーラといった殺戮ファミリーによるストーン奪還作戦がサスペンス性を高めていきます。未来から情報を得たサノスのリアクションに気付かないまま、なんとか6つのストーンを確保して未来(現在?)へ戻るアベンジャーズ。
ブラックウィドウの死を悲しみつつ、インフィニティ・ストーンをガントレットにセッティングし、ハルクの指パッチンで消失した人々の復活を図ると…ビルの中庭の木々の周りでやたらと小鳥が飛び回りさえずっている。差し込む優しげな日の光。ホークアイの携帯には奥さんから着信が…おそらく…世界は元通りになったっぽい…
というタイミングでミサイルがドーン!!!サノス達が過去から時空を超えてやってきちまったよーーー!
ここからクライマックスバトルのはじまり。ストーンのついたガントレットを守りつつ、サノス軍団を撃退しなければならない。
とりあえず崩壊したビルから脱出しようとするくだりがあり、必死に脱出したところでサノス軍が大艦隊で地球に登場、だったかな? (自分が暗闇でとったメモの内容に不信感を抱いております)
肩慣らし的な小さいスケールの乱闘を経た後に大艦隊が出現し、絶望的な量の戦力が画面を覆い尽くしたところで、消失組アベンジャーズが空中魔法陣の中から登場。過去最大スケールの超超大乱闘シーンへなだれ込んでいきます!
まずはアベンジャーズ側のヒーロー達が見せる攻撃を、2〜3のアクション表現にフォーカスしながら次々と数珠つなぎ。あなたのお気に入りキャラは何番目に登場するかな? まばたきしちゃダメだぜ? とばかりに長回し撮影。逆に敵キャラ(中ボス)の強さを強調するような描写は最早皆無!
続けてヒーロー達の連携攻撃を見せるターンになりつつ、超乱闘バトルロイヤルの中で別のクエストが発生。「インフィニティストーン付きガントレットをアントマン&ワスプの量子世界ワープ装置付きワゴン車まで運ぶ」という目標が設定されます。過去から持ち出してきたストーンをもう一度過去に戻さなければいけない。
単なるバトル/大乱闘ではなく、別の目標がある事で観客の好奇心は持続。誰がどうやってガントレットを運ぶのか…ここでも当然、アベンジャーズ達の熱いチームプレイをグイグイと見せつけてくれます。世界最高峰ともいえるルッソ兄弟のアクションデザイン能力が遺憾なく発揮されていきます!
バトルはバトルで、非常に明快なデザインの元に構築されていて最高。スピーディでありながら、わかりやすく、気持ち良い。しかし具体的にナイスアクション!と思った描写は少なかったかな。
鎧の下にメタボ腹を隠したソーも、ストームブレイカー(斧)を持って大暴れ。なんだかんだ言っても、その辺の生物では太刀打ちできない雷神のパワー!
ソーが落としたムジョルニア(ハンマー)が、ソーの元を離れて飛んでいく! その先にいるのは…キャップ!? ムジョルニアをがっちりとつかんだキャップは、具体的な攻撃用アイテムを駆使して獅子奮迅。ソーが「やっぱおまえは使えると思ってたんだ」的なセリフは、過去作で描かれた「キャップとムジョルニアのマッチング」がフリになっておるわけです! 燃えるぜ!
ガントレットリレーにて、ガントレットを持ったスパイダーマンが吹き飛ばされた直後、アベンジャーズの女性ヒーローが全員集合し、可愛いスパイディ君を守ろうとする描写はある種のギャグ笑 でもオッケーオッケー! 女性ヒーロー万歳!
しかし、それでも、ラスボスは諦めない。アベンジャーズはなんだかんだでガントレットを奪われ、サノスはそれを装着! 最強ヒーローのキャプテン・マーベルでさえもそのガントレットを奪い返す事が出来ない! ヤバイ!
…えー、正直に申しますと…この後でアイアンマンがサノスからストーンを取り戻す際の動きが…
理解できませんでした! なにあれ!
つかみかかってきたアイアンマンを振りほどいたサノスが指パッチンする、でも何も起こらない、ガントレットにストーンがハマってない、目の前にいるアイアンマンが右手を翻す、そこにはストーンがハマっている。
アイアンマン、どうやってストーンゲットしたん? あ、もしかして、書いてる今になってようやく気付いたけど…ガントレットにハマってたのは偽物? ガントレットをオトリにして、ギリギリになるまで待って、アレしたの? だからこそ社長の決断が悲壮的だったの? その解釈でよろしいですか? それともストーンだけ瞬間的に移動した? そんなの可能なの? え、どっち?
まあその、細かい経緯はともかく、アイアンマンことトニー・スタークがアレを実行して(ここに来てネタバレ回避!)、サノスに勝利したわけですね。トニー・スタークの大いなる決断によって。アイアンマンから始まったサーガは、アイアンマンによって終わりを迎えた、と。必然的とはいえ、腑に落ちる結末。
どうやって勝利するか、どうやって消失をリカバー(Undo)するか、という大きな目的をクリアしたアベンジャーズ。クライマックス以降は彼らの後日談が、なかなかのボリュームをもって語られていきます。
とはいえアベンジャーズの2軍(途中参加組)についてはほぼノータッチ。家庭持ちのおじさん達はマイホームに帰り、ピーター・パーカーはハイスクールに帰り…
変化球としては、次回作が決定しているガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに、あの人が加わるっぽいところ。あの人の立ち位置がよく分からなくなっているので、正直なところ良い意味での化学反応が予想しにくい。でもジェームズ・ガン監督なら絶対面白くなるんだけどね!
社長のあのシーンは当然しんみりしたんですけど、その延長でハッピー役のジョン・ファヴローが子供と語り合うシーンがあるんですよ。『アイアンマン』の監督として(同時にお茶目な登場人物として)MCUを大成功に導いた彼に対する敬意が感じられて、個人的には社長のアレよりももっと感動しました。
そして、キャップ。彼のルーツと人生を考えると必然的な結末なんですけど、ぼんやり見ていた自分にとってはインパクトがありました。必然的という事は、キャプテン・アメリカというキャラクターに製作者がちゃんと向き合っている証拠ですね。キャップが犠牲にしたものを、彼に返還するシーンでアベンジャーズが幕を閉じる、と。
それに対してブラックウィドウの扱い…地球のために命を捧げたのに…終盤で完全に忘れられてるやん…あかんやん…女性ヒーローの地位をじっくり形成してきたMCUなら、彼女のフォローをするべきでは…
他のキャラクターのいい場面も編集段階でカットされてるのかもしれないけど、11年の集大成!とするには足りていない要素もチラホラ目につくわけで…
そんなところで、アベンジャーズ/エンドゲームの総評ですが。見事であり、天晴れ。長い長い大河的連作シリーズの完結篇として見事な着地を果たしているのは間違いないです。
しかし、各論としては説得力に欠ける面もあるように感じるので、「完璧な映画」「完璧な完結篇」という表現には違和感を覚えます。
ソーはあれでいいの?
ブラックウィドウはあれでいいの?
ギャグシーン多すぎない? などなど。
過去作の印象的な要素をフリに変換して回収する技量には数え切れないほど感心したし、笑ったし、燃えました。イカしたセリフの数々も素晴らしいし、全体のテンポの良さ、最後まで弛みの無いノンストップ感など、ルッソ兄弟の監督としてのセンスの良さに関しては文句なし。
だからこそ脚本の細部に詰めの甘さを感じるのです。具体的な不満点は上記に書いたので、ただのイチャモンではなく、改善の余地を見出したつもりです。
あーあ、見ちゃった…もうエンドゲームを見終わってしまったんだ…私は熱心なMCUファンとは違い、本気でのめり込むようになったのは『シビル・ウォー』以降なんですけど、それでも超楽しかったです。同じくらいワクワクするようなスーパーヒーロー大作映画を、今後のMARVELにも期待していきたいです!