2017年に見た映画総まとめ11月の巻・後編 | 冷やしえいがゾンビ

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めっきりノータッチですが、メインは映画に関する垂れ流し。

11月に見た映画は


女神の見えざる手

グッド・タイム

IT "それ"が見えたら、終わり。

ノクターナル・アニマルズ

ブレードランナー2049

マイティ・ソー/バトルロイヤル

セブン・シスターズ

彼女がその名を知らない鳥たち

HiGH&LOW TheMovie3 : FINAL MISSION

マスター

密偵

KUBO 二本の弦の秘密

全員死刑

ジャスティス・リーグ

gifted/ギフテッド


の15作品。ハイロー3以降の7本について、感想を書きます。前半8本の感想はこちら。



HiGH&LOW TheMovie3 : FINAL MISSION


EXILE TRIBEを中心とするLDHファミリー勢揃いのアクション大作。ベテランから若手まで豪華キャストが参加。SWORD地区に吹き荒れる最終戦争の嵐!


TheMovie2は日本映画史に残る大傑作アクション映画でありつつ、ラストシーンで次作への期待感を大きく膨らませる作りだったのですが、その期待を、見事に、完膚無きまでに、崩し去り、燃やし尽くして灰と塵にするような最悪の映画になりました。まあ、こういうのでも楽しめるファンはいるんでしょうが…


とにかく全部ダメなんですよ。信じられないくらい。


メインの話が新鮮味ゼロで全然面白くない。ヤクザが悪いことしてるのをマスコミにチクる話。その悪い事とは都市開発による環境汚染。なんじゃそれ。今やる意味あるかそれ? そういうストーリーラインを膨大なセリフ量で説明し続ける構成も下手すぎるし、ビジュアル面も退屈極まりなし。


アクションはそれなりに頑張ってるけど、前作からかなり失速しているし、ボリュームも乏しいし、戦っているのが主要キャラと雑魚なモブキャラの取り合わせばかりなので燃えない。


主要キャラクターの行動原理が理解できなさすぎるために絶えずムカムカさせられる。散々縄張りを荒らされた後で現れるSWORDのトップ連中。特にRUDE BOYSは目の前で家族が拐われているのに逃走を優先しているのを見て呆れ果てました。


これだけ喧嘩しまくってきたシリーズのクライマックスなのに、ボスらしいボスキャラが出てこず雑魚とのじゃれ合いばかり見せられ、街を破壊するような大爆発を防ごうとする幼稚でしょうもないサスペンスごっこをやっている。愕然、絶望、落胆、意気消沈。


最終回っぽく、一通りの主要キャラにカッコよさげなスピーチタイムを与えてファンを喜ばせているつもりかもしれませんが、セリフ全般の日本語が幼稚で聞くに堪えないし、長いし遅いしクサいし、マジでスクリーンを直視できなかったです。


前作で新たに登場した魅力的なキャラクター達が今作で無意味な顔見せに終始してる点にもガッカリしたし腹が立ちました。「あれだけ激しく戦ったあいつらが仲間になったりして…!?」みたいな期待を完全無視。


ヒール側のヤンチャ連中Mighty Warriorsの皆さんはスピンオフとして発売された映像ソフトの方にいっぱい出てるから今作には出なかったみたいですね…馬鹿じゃねえの??こちとらそんなソフト買ってらんねえよ!!


恐ろしいヤクザに喧嘩を売った前作だったはずが、ベテラン俳優たちが演じた幹部連中はほとんどアクションもやらない。体を張るのはLDHメンバーと一部の若手俳優だけ。若手に含まれるはずの窪田正孝は前作と今作でアクションシーン無し。つまり参加してるキャスト自身がハイローの価値を信じてないんだから、そんな映画に期待する方が馬鹿だって事です。


公開されるのがこれほど楽しみだった作品は他に無いけど、それ故にエンドロール見てる時の脱力感と非現実感は凄まじかったです。どうしてこうなっちまったんだよ琥珀さーーーん!!!★★★★★



マスター


ハリウッド進出も果たしたイ・ビョンホンと、近々ハリウッド大作に出演するという噂のあるカン・ドンウォンが共演。マルチ商法の超大物を逮捕するためにエリート刑事が立ち上がる。『監視者たち』のチョ・ウィソク監督作。


韓国映画全体的に、悪を打倒してカタルシスを感じさせる作品が上手い。そのジャンルの中でも『監視者たち』は傑作に位置付けられる一本なので今作にもかなり期待していました。とても満足度の高い濃密な作品でした。


まずテンポがやたらと早い。キャラクターの説明から始まって、端的かつ軽やかにストーリーを展開させていく。警察側も、マルチ商法のトップ3も、キャラクターが濃くて楽しい。特にイ・ビョンホンのラスボス感、サイコパス感、アンモラル感。やはりこの人すごいです。


こんなに早くクライマックス来るの!?と思ったら二部構成のように一旦クールダウン。イ・ビョンホンは海外逃亡に成功し、カン・ドンウォンは失敗の責任を負わされて警察内で失脚。カン・ドンウォンに復讐心を背負わせる方法として、この「スタートダッシュからの敗北」という展開は面白い試み。


二部になってもテンションは落ちず、海外が故の捜査の難しさや、幹部を失ったマルチ商法チームの瓦解など、ドラマ性もたっぷり。キャストの魅力もしっかり引き出しての真クライマックス!最高でした。☆☆☆☆★



密偵


ソン・ガンホ主演。1920年代、日本の支配下にあった韓国。日本軍に雇われ、反政府組織に潜入するソン・ガンホと、反政府組織のリーダーであるコン・ユが見せる、駆け引き、友情、裏切り、覚悟。監督は『グッド・バッド・ウィアード』『悪魔を見た』『ラストスタンド』のキム・ジウン。


2015年にチェ・ドンフンの『暗殺』という作品が似たような時代背景で似たようなテーマだったため、どうしても比較してしまうし、結果的に見劣りしてしまった。


日本人という立場で見ているとはいえ、正義と信じて施政者に立ち向かう人々は応援したくなるもの。しかしこの映画は、彼ら革命家たちがその意志を踏みにじられて消耗し駆逐されていくのを見せられる構図。つまりカタルシスは無い。


映画という枠ゆえの制約でもあるのですが、政府を打倒しようとする人たちが爆弾テロにこだわり続ける話なんですよ。「爆弾1つで何が変わる?」というアンチテーゼが作中で投げかけられているし、そういう視野の狭さによって自滅していく虚無感そのものが作品のテーマになっているのですが、キャラクターはそれでも爆破テロにこだわらなければいけない。


もちろんサスペンスの切り口としては爆弾の他にも沢山用意されてるんですけど、結局のところ「キム・ジウン監督はこの映画で何を描こうとしているのだろう?」と、つかみきれないままダウナー気分で見終えました。もろもろの理由で『暗殺』の方が好きです。☆☆★★★



KUBO 二本の弦の秘密


ストップモーションアニメで有名なスタジオライカの最新作。日本を舞台にした時代劇。


If you must blink, do it now. (まばたきするなら、今だ) というナレーションから始まるところは最高&最高にクールで、その後で主人公のクボが見せる三味線吟遊アクションシーンは最高&最高にホットなアニメーションを堪能。序盤からとんでもないスピードで展開。しかもそれを手作業の積み重ねで作るストップモーションアニメで見せている。感動しまくり。


ただ、中盤以降のロードムービー的な冒険ストーリーの部分であまりワクワクしなかった。何かを入手したり誰かと出会うようなストーリー上のポイントが、主人公の主体性とは無関係に、向こうから勝手にやって来るような、なんだか都合良く行き過ぎじゃない? みたいな違和感がありました。ファンタジー性の濃さとリアリティのバランスがいまいち飲み込みきれなかったです。アクションもそんなに興奮せず。


しかしラストに提示されるテーマの尊さがこの映画の価値と意義を大きく高めていると思います。物語の語り手だったクボが、なんのために冒険に出たのか? 映画狂いの私たちにとって心地良く染み渡るような結末。とても良い気分で映画館を出ました。☆☆☆★★



全員死刑


自主制作映画『孤高の遠吠』で映画ファンを驚かせた小林勇貴監督の商業デビュー作品。北九州一家殺害事件の犯人として、一家全員に死刑宣告が下された一家の次男へのインタビューを元にしたノンフィクション書籍の映画化。


とんでもない映画を作ってきたとんでもない男がとんでもない題材で監督デビュー。今時の日本には珍しい美談ですね。『孤高の遠吠』は静岡の不良をキャスティングしてリアルで面白すぎる暴力映画で、映画館で見られなかった事を物凄く後悔しました。だから今作に関しても公開が楽しみで楽しみで仕方なかったです。


実在の人物であることすら信じられないくらい短絡的で暴力的な一家が他人を巻き込みながら地獄へ滑落していく話なのですが、正直なところ、もっと面白くてもっと笑える映画だと思っていたのです。


期待を裏切られたように感じた大きな要因のひとつは、主人公一家が逮捕されるまでの経緯を描いていないところ。馬鹿な犯罪者の実録映画を見る時って「こいつらこんなに馬鹿だから逮捕されたんですよ」という視点によって笑いたい、笑って済ませて別世界の出来事であると思いたい、という心理がある。その欲求は満たされなかった。残念。


あとはもう、笑いのセンスの違い。上から目線で評するつもりはないけど。笑うための映画と決め付けてるのもどうかと思いますが、後半になると暴力もエロも愚行も慣れて感覚が麻痺してくるから面白みが薄くなってくる。犯罪行為の矛先も、主人公一家のご近所レベルに終始してて物足りないし、そうなってくると原作そのものが映画で面白くなる余地をそれほど残していなかったのでは?と思えてくる。


もう少し別の意味で爆発的な化学反応を感じさせてくれるような映画を期待していました。次回作に期待!なんて思っていたら1ヶ月もしないうちに小林監督の新作を見られたのですが、それはまた別のお話…☆☆☆★★



ジャスティス・リーグ


簡単に言うとDCコミック版アベンジャーズ。バットマンやワンダーウーマンが地球を守るために新たなスーパーヒーローのスカウトに奔走する。


とりあえずTwitterから感想をコピペ。


敵の目的を阻止しないと地球の危険が危ない!系スーパーヒーロー映画。既に共闘していたブルースとダイアナによるスカウト要素、地球のあちこちに拡がったアクション要素が適度なバランスで配置されていて楽しい。DCの割にギャグへの柔軟性が増してキャラが魅力的に!


いきなりバットマンのアクションシーンで「また同じ過ちを…」と不安にさせておいて、そこからアマゾネス軍団の超ハツラツピーカンアクション!そしてワンダーウーマン様の大暴れで平伏!さらには超高速童貞フラッシュがスパイダーマンばりの存在感で空気を創っていく。ナイスなチームだこれ。


と、ツイート。概ね好感触でした。バットマンvs.スーパーマンは年間ワースト級と酷評したので[当時のブログ記事]、あれに比べたらかなりマシ。話のテンポが格段に良い。しかしどんな敵がどんな意図で地球に現れたのか、そういった部分をほとんど忘れてしまっている事に気付きました。敵の存在感が薄すぎ。


とどのつまり、ワンダーウーマンが大活躍するならそれだけで楽しい、それは偽らざる事実でございます。ガル・ガドット万歳!!☆☆☆★★



gifted/ギフテッド


『(500)日のサマー』マーク・ウェブが久々に監督した新作。死んでしまった姉の代わりに姪の養父として同居する男をクリス・エヴァンスが演じる。7歳の姪は数学の才能が飛び抜けている天才。そんな姪とどう向き合っていくべきか主人公は悩み続けていた。


泣けそうな映画だなーと予感していたものの、泣けそう、泣ける、どころか大泣き大号泣! いい年して父親はおろか既婚者にもなれない自分にとって、子供と付き合っていく事、育児、共同生活に関する物語はガツンと響いてくるジャンルなのです。


義父と小さい娘の関係性・距離感を丁寧に描きながら、「何故姉は死んでしまったのか?」「主人公は何故姪にギフテッド教育を受けさせようとしないのか?」という謎を明らかにしていく構成も巧みでシナリオとして魅力的。


「親としては全員がビギナーズ」「完璧などない特に人の育て方には」と歌う日本語ヒップホップ曲もありましたが、親として不器用で、娘を傷つけて自分も苦悩し葛藤しながら最適な距離を探そうとする主人公の姿がとても人間らしくて愛おしい!


予想だにしなかったクライマックスと見事なカタルシスまで用意され、エンディングの頃には涙の流しすぎで目がヒリヒリと痛みました。


無駄なシーンがなく、無駄なキャラクターもいない、物凄く洗練されたシナリオ。しかも普遍性を持ったテーマ性これくらいの作品を生み出すには数年間の準備期間があって当然なのかなーとも思います。


主人公と姪は勿論、脇役の存在感も素晴らしいし、さらには片目のトラ猫Fredも可愛い!低予算ながら細部まで綿密にデザインされた傑作。今後も、こういう優れた映画を見逃さないようにしたいです。オススメ!!☆☆☆☆☆

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以上、11月に見た15本の感想でした!