11月に見たのは
女神の見えざる手
グッド・タイム
IT "それ"が見えたら、終わり。
ノクターナル・アニマルズ
ブレードランナー2049
マイティ・ソー:バトルロイヤル
セブン・シスターズ
彼女がその名を知らない鳥たち
HiGH&LOW The Movie 3 : FINAL MISSION
マスター
密偵
KUBO 二本の弦の秘密
全員死刑
ジャスティス・リーグ
gifted/ギフテッド
の15本。必死ですね。長くなりそうなので前編後編に分けます。彼女がその名を知らない鳥たち、までの8本。
女神の見えざる手
ジェシカ・チャスティン主演。アメリカの政治を動かしてきた豪腕ロビイストが銃器所持に関する規制法案の実現を目指す。
強い女性主人公と、打倒不可能なほどの巨大な敵。御膳立てとしては最高の構図だと思います。殴る蹴る銃で撃つワンダーなヒロインも好きだけど、みんながそっち方面に進んでも発掘すべき面白さはそうそう残ってませんからね。
結論を言うと、絶賛したくなるような感動は得られなかったです。「今年ベスト!」という意見はよく見かけたし理解できるのですが、見た当日はそれほど絶賛する気にならなかったです。
伏線の回収、フリと落とし所、ミスリードからのサプライズ、そういったテクニックがふんだんに使われているシナリオであり、クライマックスに至っても勝敗の行方が分からないよう、ムードを作る演出も巧み。冷静に振り返るとやっぱりこの映画面白い!!
主人公のキャラクターもユニークで、合法なドラッグでほとんど睡眠を摂らない生活を送りながら、しょっちゅう男娼を呼んで金銭と引き換えにセックスしている。そういった常識外れなキャラクター像を見ているだけでも刺激的で面白いし、その部分にロビイストとしてどんな資質を持っているのかも予感させる。エキセントリックで浮いているように見える主人公だけど作品全体と連携している。ビジネス上の目的遂行のために手段を選ばない人間が性欲解消のために手段を選ばないのは当たり前!
法廷劇映画の切り札になりそうな決め手をいくつもいくつも隠し持った主人公、それでも敵わないかも…と思わせるのがアメリカ最強の圧力団体である全米ライフル協会。スリリングなストーリーを見ながらアメリカの深い闇を認識できるのもこの映画の凄さ。
オチ、これまた私の好みなんですよねえ!「勝つためにはこうするしか無かった」「こうまでしてでも勝ちたかった」そういうメンタルが見えてめちゃくちゃカッコ良い。キャスリン・ビグロー監督ですら引き出せなかった女の強さ。
この映画、語り尽くせないですね。このブログにアウトプットする事でこの映画が大好きになれました。また見なきゃ。☆☆☆☆☆
グッド・タイム
ロバート・パティンソン主演のクライム。長編2作目のサフディ兄弟監督作品。カンヌ映画祭のコンペティション選出。
限定的な情報を元に見に行ったのですが、見てる間にも「この監督すごいなー新しい感性の持ち主だなー」と感じる瞬間が多数。ニコラス・ウィンディング・レフン『ドライヴ』を見た時の印象にとても近かったです。特に音楽の使い方。サントラのレーベルがWARPと知って納得。
ストーリーは、主人公が弟と一緒に銀行強盗を決行し、金は奪えたものの弟だけ逮捕されてしまい、仮釈放のためにどうにか1万ドルを調達しようとする話。しかしこのロバート・パティンソン演ずる主人公は、なんの取り柄も無い…!
とりあえず他人を頼る、それがダメになったのでこうしてみる。やっぱりダメなのでこうしてみる。思わぬ形に転がったのでこうしてみる。ああしてみる。こうしてみる…全てがうまくいかない。しかし脚本として行き当たりばったりというわけではなく、主人公の短絡的思考はちゃんとトレースできる。
演出がとてもクールで、クールという名のカッコよさではなく、すごく冷静な語り口なんだけど、それでいて見応えがあって引き込まれる。なかなか味わい深い作品。Netflixで早くも配信してますよ。☆☆☆☆★
IT "それ"が見えたら、終わり。
ああ、あれね。怖いピエロが出てくるホラーね。日本でも異例の大大大ヒット。スティーブン・キング先生の代表作がリブートで再度映画化。
原作をしっかり根気良く映画にしてみたら原作のパワーがさらに増幅し、立派なホラー作品として世界的な大ヒット。なんだかんだ言ってキングは凄い!なんて思ったりしました。
映画を見ながら恐怖を感じる事はまずありませんが、この映画の表現しようとしている恐怖のクオリティには大満足。子供にとっての恐怖は理不尽で無慈悲。恐怖描写を飛躍させる事を恐れない監督だなーと思いました。ちょっと前置きが長ったらしい感じはしましたけど。
スタンドバイミー的なガキんちょグループの冒険もの(ジュブナイル的)としても素晴らしく楽しい。しかし、あの男子キャラとあの女子キャラがカップリングし…たと思ったらイケメンとくっついた展開にはガックシ。でも伏線張っておいてのセリフには大興奮したのも確か。
満員の映画館で、前後左右のティーンエイジャーがビクビク怯えているのを感じながら見る2時間、最高でした。☆☆☆☆★
ノクターナル・アニマルズ
ファッションデザイナーであるトム・フォードの監督2作目。エイミー・アダムス、ジェイク・ジレンホール、アーロン・テイラー=ジョンソンなど出演者も豪華。芸術家として成功している女性の元に別れた夫から分厚い装丁の小説が送られてくる。
まーーーー、つまらなかったですね。
あらすじ聞いたらすごく面白そうだし、キャストの演技も素晴らしいんですけど、ストーリー部分がまっっっったく面白くない!
元夫から送付された小説の内容が主人公の過去の所業を断罪するようなリンク性もなく、ただひたすら気持ち悪い物語を送ってキモさアピールしてるだけ。
さらにその小説で描かれた物語が、ある一家の妻と娘が拉致されてレイプされて殺されて荒野に放置され、それを夫が発見するという、胸糞悪いだけの話。そんな展開がモタモタモタモタ語られていき、その合間合間に読者としてのエイミー・アダムスが大袈裟なリアクションを挟んでくる。早く話進めろよ!とムカムカムカムカ…
小説を読み終わった後で元夫からディナーデートに誘われ、オシャレしてレストランへ出向く主人公。しかし元夫は現れず、悲痛な顔の主人公を見せ付けながら映画が終わる。なにこれ????くそつまんねえよ。
小説内の物語をそのまま映画にしてくれた方がまだ納得できたかもしれません。それを「こんな小説が送られてきたらキモいっしょ?」と、無意味な外殻を着せる事で映画として格式を高めているつもりなのが本当に腹立たしい。
元夫の復讐劇だとすれば、2人が別れた経緯を描く余地があるはずだし、復讐に対して落とし前を付けるなり、主人公が持っている何かを決定的に喪失するなど、影響と結果を描いてこそ劇中劇の意味があるんじゃ? 2人の過去と未来について、想像の余地を残す事は映画の価値と正比例するわけじゃない。その点で、この映画のアプローチは大嫌いだ。★★★★★
ブレードランナー2049
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、SF映画のマスターピースの続編に挑む。レプリカント(人造人間)回収業=ブレードランナーのKをライアン・ゴズリングが演じた。予告編はあまりワクワクしなかったんですが…
予想以上に面白かったです。ストーリーそのものは進むテンポが悪く、無駄な間が続いているとしか思えない時間の多い映画なんだけど、面白い。けど間延びしすぎ。
なぜ面白いのかといえばやっぱりSFとしての新鮮味が際立っていて、ヴィルヌーヴ監督を中心としたスタッフワークの凄みに圧倒されるから。デザインそのものだったり思考の壮大さだったり。リドリー・スコットが「アイディアの殆どは俺のやつな」とか言ってましたけど、後の祭りなので勘弁していただきたい。
メッセージからのブレラン、この監督はやっぱり凄い。目が離せない才能です。『プリズナーズ』『ボーダーライン』も、後からじわじわ来る作品でしたねぇ…☆☆☆☆★
マイティ・ソー:バトルロイヤル
MARVEL系ユニヴァース映画。マイティ・ソーの単独主演作としては3作目。ソーの姉ちゃんが封印から解き放たれてテンヤワンヤする話。
結論から言うと、2017年に見たアメコミ映画の中ならガーディアンズオブザギャラクシーvol.2の次に評価したいくらい好きです。予告編では駄作の匂いさえ漂ってたのに。
42歳にして初の超大作に抜擢されたタイカ・ワイティティ監督が、楽しくて笑えて面白くてワクワクさせてくれるスーパーヒーロー映画の構築に成功。今作で初めて知った名前でしたが、今後のハリウッドでも面白い事をしてくれそうです。
ギャグ要素が多めのシナリオで、笑いと緊張の相互作用でグイグイ惹きつけてくれる今作。言わずもがなセリフ・会話の面白みだけでなく、アクションや展開自体にもちゃんとファニー性を含んでいる。ソーのキャラクターと笑いって相性良いですからね。ボケ寄りのソーがツッコミ寄りになってるのも面白い。
笑い要素でいうと、全身が岩石で出来た男Korgの面白さが個人的にめちゃくちゃツボで大好きでした。ゴツい見た目なのにか細い声の気弱キャラという古典的なギャップ芸に始まり、そんな出落ちキャラがあれよあれよで超燃え展開の中心にいるところも最高!こんなキャラを誰が演じてるのかと思ってエンドロールに注目してみたら Korg : Taika Waititiって、それ監督じゃん!
楽しくて面白い展開に浸っていたら、いつのまにかソーの進退にまつわる葛藤と成長の過程が組み込まれ、アガりまくりのクライマックスと見事な結末に到達する。そしてアベンジャーズ新作へのブリッジにもなっている!こういう意味でのスケール感を見せられると「やっぱMARVEL最高すぎるぜ?」と思うのです。
私が選ぶ今年の映画流行語大賞はKorgの名セリフ「Revolution has begun !!」です。Korgに会うためにまた映画館へ行きたいなー!とさえ思いました。結局行けなかったけど、こんなに面白い作品を生み出してくれたワイティティ監督には感謝感謝です。☆☆☆☆☆
セブン・シスターズ
近未来ディストピア系SFスリラー。食糧難を理由に、徹底した監視体制と1人っ子政策が施行されている中で1人の身分を共有しながら生きる7つ子姉妹が主人公。養父のウィリアム・デフォーと共に、7人で作り上げた1人の人格を演じてきた彼女たちだったが、姉妹の1人が出勤先から戻らずに行方不明になってしまう…
7つ子を演じたのはノオミ・ラパス。初見でしたが、スウェーデン版の『ミレニアム』主演で名を馳せた本格派女優。『プロメテウス』の主演でもあるようですが、記憶にない…
設定は見事。「映画内キャラクターが別の誰かを演じる」という映画の醍醐味を味わえるシナリオはとても面白い。元のタイトルは"What happened to Monday?”なので「何が月曜日に起こったか?」という意味になる。Mondayは7姉妹の長女の名前でもあるため、whoとwhenのダブルミーニングとなっているのに日本語タイトルは改変されてるのが残念。
タイトル通りミステリー色も強く、SF要素も加わる事でかなり新鮮な印象。網膜で個人を認証しているのに7つ子を同一人物としてしまうところなどはリアリティに欠けるかなーと思いましたが、想像していたよりもダークでノワールな展開が面白かったです。☆☆☆☆★
彼女がその名を知らない鳥たち
いやミスでお馴染み、三浦しをん原作の日本映画。蒼井優、阿部サダヲ主演。ロクに働かないダメ女が色んな男に痛い目を見る話。
蒼井優がセックスとバイオレンスに塗れる泥ミステリ。1つのシンプルな予測を終盤まで引っ張り続ける構成がなかなか退屈でしたが、クライマックスは見応えあり。蒼井優は熱演、だがミスキャストであると感じる。喘ぎ声が子供っぽくてね…
ラストでタイトルにズガーン!みたいな物語のように見えて、大したオチになってないのも嫌い。ミステリ的な真相部分そのものは嫌いじゃないけど、その物語を背負っている主人公自体がクズで馬鹿で股ゆるなので、彼女が悲劇に巻き込まれても「んー、どうでもいいです」感が否めない。
胸糞悪い物語は嫌いじゃないはずなんですが、時間と金とマンパワー使って作る胸糞映画ってほとんどハマらないなーと最近よく感じています。というわけでお疲れ様でした。☆☆★★★
10月の巻はこちらから
https://ameblo.jp/ez-chill/entry-12342457076.html
11月の巻・後編はこちら
https://ameblo.jp/ez-chill/entry-12345279038.html
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