未象の庭 ―森へ続く道― その後② | 蝋画塾 Atelier Berankat のブログ

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第二次大戦中に開発された、「蝋画」という描画技法を紹介するブログです。

 

私の住む蓮田市には、鉄道はJR宇都宮線し

か通っていない。大宮から京浜東北線、南浦

和から武蔵野線を乗り次いで新秋津駅で降り

る。駅から15分ほど住宅街が続き、からぼり

川を渡って少し歩くとハンセン病の国立療養

所多摩全生園の入り口に着く。

 

 

園内は緑が多く、木々と建造物のバランスが

心地よい。明治42年、全生病院として出発

した園の歴史を紐解いてみると、この緑の空

間の成立に、国によるハンセン病患者の強

制隔離政策が深く関わっていることを知るこ

とができた。

 

ハンセン病の歴史に関しては、検索すれば多

くの情報が手に入る。一例をあげれば…

 

 

ハンセン病国賠弁護団→http://www.hansenkokubai.gr.jp/history/

厚生省HP→https://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/01/h0131-5/histry.html

 

書物も、実に多くの出版物がある。

東村山市立図書館作成のブックリスト↓

https://www.lib.city.higashimurayama.tokyo.jp/toshow/PDF/inoti_hansen_h21.pdf#search=

 

入所者と植物との関わりに焦点を当て、時代

と共に変化しながらも、植物との関わりを常

に求め続ける人々について記述した、柴田隆

行著「多摩全生園・<ふるさと>の森」が、個

人的には印象に残っている。

 

 

全生園の敷地内にある国立ハンセン病資料館

でも様々な資料が無償で配られている。

http://www.hansen-dis.jp/

 

 

 

 

患者の強制隔離、正式な裁判に依らず懲罰を

下せる懲戒検束権、悪条件での強制労働、優

生手術による断種・堕胎など、90年間にも

渡って国家による人権侵害が続いた。

 

1996年のらい予防法の廃止により、療養所の

外へ出られるようになっても、長期間の隔離

のため社会との絆の回復は困難を極め、元患

者本人だけでなくその家族も、世間の偏見と

差別を恐れ、病歴を隠しながら社会生活を

営むケースも多い。

 

ハンセン病患者の家族として受けた差別被害

に対する訴えを、広島高裁松江支部の控訴審

判決が棄却したのが今年7月のこと。これが

解決に至っていない現在進行形の問題である

ことは、対象が何であれ、他の様々な差別問

題と同じ根を持つからだろう。

 

そのような療養所の一つが身近にあり、多く

の困難に遭遇した人達がいることに私は無

知であったことを内省しなければならないと

思う。この問題に関して、なにか手触りのよ

うなものを感じることができたのは語り部活

動をしている人達の体験談を何度か拝聴し

た後だったと思う。

 

 

かつて全生園の周囲には、入所者の逃亡防止

と外部から視界を遮断するために、高さ3

メートルのヒイラギの垣根が植えられていた

という。常緑樹であるヒイラギは冬でも葉を落と

すことはない。その葉の鋭いトゲが、内と外を

分かつために利用されていた。

 

 

ここから外へ出ることができないなら、せめ

てこの中を居心地のいい場所にしようと、患

者や関係者の手で木々が植えられ、育てられ

てきた。

 

私が心地いいと感じた緑の空間が成立したそ

の背景には、数多くの入所者の思いが絡みつ

いている。その事を考えると、もう一度あの

園内の道を歩いてみたくなる。

 

 

 

今、全生園のある東村山市は「人権の森」構

想を進めている。発病者はほぼゼロになり新

たな入所者はなく、現入所者は高齢化により

減少していく。行政、自治体、住民によっ

て、この場所を地域に開く取り組みが進めら

れている。

 

入所者自治会は、このハンセン病の歴史・人

権の歴史とともにある豊かな緑、ハンセン病

資料館、共同生活を営んできた寮や館、神

社、納骨堂などの歴史的価値を持つ建造物

や史跡、これらすべてをハンセン病記念公園

「人権の森」として保全・保存し、後世に伝

えようと、平成14(2002)年、「人権の森」

構想を立ち上げました。これを療養所の将来

構想として、国へ要請し、東村山市とともにこ

の構想の実現に向けた活動をしています。 

                                                                                                   (東村山市HPより)

 

 

 

 

今年3月に埼玉会館で展示した作品「未象の

庭―森へ続く道」。

 

 

 

そのテーマになった蓮田市黒浜の大クヌギの

直系の子孫の苗を3本、入所者自治会との何

度かのやり取りを経て、全生園へ寄贈・植樹

することが決まった。

 

 

黒浜の大クヌギは道路拡幅工事のため伐られ

てしまったけれど、人権の森としてこの場所

がその歴史と共に将来も保存され、人々が集

う場所になり、大きく育ったクヌギに会える

日が来ることを願っている。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

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簡単なものですが、蝋画技法の初歩を図解したPDFファイルを配布しています。

実習を伴う教室等で受講者に配布しているものですので、この資料を見ただけで蝋画

が描けるようになる保障はありませんが、よろしければ下記アドレスからご請求下さい。

https://ssl.form-mailer.jp/fms/0af30761220259