蝋画塾 Atelier Berankat のブログ

第二次大戦中に開発された、「蝋画」という描画技法を紹介するブログです。


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入間市の個展から2年半、11月3日(金)から谷中での作品展が始まる。

植物の葉とアルバムの写真を使用した新作「未象の庭 2017」と、

6人の造形作家と共に行なう「未象の庭+(Plus)」、

2部構成での展示になる。

 

入間市の個展では、私が生まれる前の古いアルバムから、

親族と思われるが見ず知らずの人を72人選び、父の形見の屏風に配置していった。

そのため、写真に写る一人ひとりの個人としての側面に触れることなく、

皆が「先祖」という抽象的な言葉の中に溶け込んでいた。

 

 

その後、戸籍の調査から、写真館で軍服を着て立つ人物が大叔父であり、

日中戦争の最中、山東省で亡くなっていることがわかった。

それ以降の2年半は、大叔父を通して見えてきたことを追う期間だった。

 

大叔父は出兵前に東京を離れ、九州の小倉へ移住していること、

小倉で結婚し、妻子は戦後まで生き延びたらしいこと、

荒川区尾久の実家は東京大空襲で焼け、祖父と家族は

埼玉の浦和に移住し、私はそこで生まれたこと…。

 

大叔父 紫陽花

 

父が60歳前後の頃、度々母と2人で荒川区を散策していた時期があった。

生まれ故郷が懐かしかったらしい。一度でも同行していれば、

戦中まで家のあった場所がわかったのかもしれない。

でもその頃の私は、そのようなことに全く興味が無かった。

 

私が過去に個展を行った16箇所の画廊のある町全てが、

例外なく米軍の空襲を受けていたという符合に気づいた矢先、

何の偶然か、空襲で焼けるまで荻野家の在った荒川区の画廊から、

17回目となる今回の個展の声が掛かった。

 

  

谷中霊園 スダジイ              大雄寺 クスノキ

 

一方、広島市が被爆から蘇った樹を保護しているように、

谷中や上野エリアにも空襲を生き延びた樹があり、

その一部は都や区の保護樹木に指定されていることがわかった。

 

今回の展示に向けた作業は、アトリエの中だけでは完結しなかった。

古いアルバムを通して過去に向けていた視線に、

地域も含めた展示空間と、そこに堆積している時間が絡んできたため、

一種のフィ―ルドワ―クのような作業が必要になった。

 

今振り返ると、それはむしろいい方向に作用したのかもしれない。

戦争という重いテーマに寄りかかってしまうことを回避するには、

ア-トと関わりのない場所で戦争という問題に取り組んでいる人達を知リ、

交流することが何よりも必要だった。

 

足を運んだ中で一つあげるとしたら、竹内良男氏の主催する

ヒロシマ2017連続講座だろうか。個人にしろ団体にしろ、

私が想像していたよりも多くの人々が、それぞれの立場で、

自分に何が出来るかを模索していることが実感できた。

 

彼らがどのように課題と向き合い、捉えてきたのか、

問題とその解決の可能性へ向けた営為に触れることができたため、

私は、美術に携わっている立場を一度忘れ、

模索の過程でもう一度表現を見いだす事ができたのだと思う。

 

このプロセスを踏むことがなかったなら、

自分の平面主体の表現を前提として、ア-トに何ができるかを自問し、

その前提の内だけを探し回ることになっていた可能性が高い。

 

 

  

上野公園 ムクノキ              東京都美術館 銀杏

 

作品は、アトリエから出るときはまだ素材の状態で、

その未完の状態から、展示場所で一つの完成に至ったように見えても、

時間の流れは場所にも作品にも否応なく変化をもたらし、

完成という状態の一過性について強く意識するようになった。

 

素材として選んだ植物と、庭の季節変化のサイクルを注視していく中で、

未完の状態の継続が循環に繋がり得る可能性が見えてきた時、

私自身とそれに連なる家系もその循環の一部として繋がり、

葉が落ちて土に還る過程に、古びたアルバムに綴じられた時間が重なった。

 

ありふれた一軒家の小さな庭で機能していた自然の変化に、

亡くなった先祖の画像を投じた時点で、

慰霊や追悼という、宗教的な言葉が示す何ものかが、

制作行為の中にいつの間にか忍び込んでいた。

 

 

 

初音児童遊園地の片隅に、谷中空襲の死者を供養するため

みしま地蔵尊が建立されている。

史跡説明板によると、死者数は70余名。

 

今回の展示には、アルバムから大叔父を含む軍服姿の人物を中心に選び、

有志からご提供頂いた戦争犠牲者の画像と合わせ、

谷中空襲の犠牲者と同数の葉に自然光で焼き付けていく。

 

「谷中で戦争を語り継ぐ会」からご紹介頂いた空襲体験者からの繋がりで、

谷中2丁目にある大名時計博物館の庭に被災樹木があることがわかった。

これまで使っていた家の庭の植物の葉に加え、博物館のご協力の下、

館庭の被災樹木の葉も使用できることになった。

 

 

  

大名時計博物館 椎の木               大名時計博物館 銀杏

 

 

昨年の「かがわ・山なみ芸術祭」で、初めて葉を素材とした作品を展示したが、

廃校になったばかりの校舎の教室が展示場所だったため、

少子化という問題がコンセプトに絡んできた。

 

そのため、現地スタッフを通して教育委員会とコンタクトを取ってもらい、

ご本人や保護者の許可の下、最後の卒業生6人の写真を使わせて頂いた。

家のアルバムからは、子供の画像を中心に抜き出した。

 

 

かがわ・山なみ芸術祭展示風景

 

今回の「未象の庭2017」では、大叔父の素性を知ったことから始まって、

絡んでくるテーマが少子化から先の戦争へ、提供して頂く写真が卒業生から

戦争犠牲者に変わったが、展示場所や地域との関わり方や制作プロセスも含め、

かがわ・山なみ芸術祭の作品の流れを踏襲した展示になる。

 

 

大叔父 アオギリ

 

2部構成のもう一方、「未象の庭+(プラス)」のヴィジョンは、

戦争の歴史を紐解いていく過程で、

川越市を流れるびん沼川の景観との出会いから生まれた。

 

その河原には、旧日本軍が製造した陶製手榴弾の残骸が

無数に散らばっていた。戦後GHQから投棄を命じられ、工場裏手の

河原へ割って捨てられたものが、今も野ざらしになっている。

 

 

埼玉県の管理部署へ尋ねると、大規模な発掘でもしない限り、

特に許可も要らず、拾って持ち帰ってもいいという。

戦争遺産として保護するでもなく、このまま放置しておいていいのだろうか…

そんな疑問も過りつつ、拾ってきた手榴弾片を机の上に置いていた。

 

同じ頃、具志堅隆松氏の本「ぼくがガマフヤ-になったわけ」を読んでいた。

陶製手榴弾を持った沖縄戦犠牲者の遺骨の発掘例と共に、

不発弾処理の安全な部分を扱う仕事を、失業者の雇用に繋げるという、

負の遺産を現代の問題に結びつける優れた取り組みが紹介されていた。

 

 

この本を何度か読むうちに、

手榴弾の作品化の発想が固まってきたのだと思う。

 

手榴弾片 →  作品化  →  販売  →  販売益 → 原爆の図保存基金

 

この流れが成立すれば、人を殺傷するために造られた武器の残骸を利用し、

お金の流れの終着点で、その製造目的を反転させることができる。

 

丸木夫妻の原爆の図については、改めて私がここで書くまでもないだろう。

原爆の図保存基金に関しては、下記アドレスに詳しい。

http://www.aya.or.jp/~marukimsn/top/donation.html

 

これは、私の先祖を基点とした作品群とは異なるため、

私個人の限られた発想に限定されるより、

複数の作家の異なったアプロ-チの作品があった方が意図は伝わりやすい。

そう考え、以下の6人の造形作家の方達にご協力頂いた。

(敬称略・五十音順)

 

田島昭泉(水彩絵の具)

成田浩彰(FRP)

日比野猛(エマルジョン)

古屋菜々(鉄)

松原容子(紙)

松本久恵(植物)

( )内は手榴弾片に合わせて使うメインの素材。

 

負の歴史を背負ったアクの強い素材だけに、イメ-ジが限定しやすい。

依頼を断られるケ-スが一定数あったのも無理はないと思う。

そんな中、制作を快諾してくれた6名には感謝している。

 

 

以下、展覧会の詳細情報。

 

未象の庭2017―荻野哲哉展/未象の庭+(プラス)

 

時間 : 11時00分 - 19時00分 最終日17:00まで

休廊 : 11月8日(水)

場所 : ギャラリー七面坂途中 

      〒116-0013  東京都荒川区西日暮里3丁目14-6

      TEL 080-5224-1565

 

 

個展なび → https://koten-navi.com/node/84323

 

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