Photonic Computing・Photonic EngineeringのPh.Dを目指す高校生のためのアメリカ大学選び
1. 世界トップクラスのPh.D.課程へ進学するための学部進学戦略
AIの急速な発展に伴い、GPUやHBMを中心とした現在のコンピューティング技術は、消費電力や通信帯域の限界に直面しつつある。その有力な解決策として世界中で研究開発が加速しているのがPhotonic Computingである。
Photonic Computingは光を情報伝送だけでなく情報処理にも利用する新しいコンピューティング技術であり、シリコンフォトニクス(Silicon Photonics)、集積フォトニクス(Integrated Photonics)、光インターコネクト(Optical Interconnect)、光AIハードウェア(Photonic AI Hardware)などの研究分野を包含している。今後10〜20年間でAIサーバー、データセンター、スーパーコンピュータなどの基盤技術として急速に発展することが期待されている。
2. PhotonicかOpticか?
大学によって研究組織の名称は異なる。例えば、
University of Rochester は Institute of Optics
The University of Arizona は Wyant College of Optical Sciences という名称を採用している。一方、Boston University は Photonics Center、University of Central Florida は CREOL, The College of Optics and Photonics として知られている。
歴史的には Optics(光学)が学問分野全体を指し、Photonics(フォトニクス)はレーザー、光通信、シリコンフォトニクス、光集積回路、光コンピューティングなどを中心とする比較的新しい工学分野である。
しかし現在では、Institute of Optics や Optical Sciences を名乗る教育・研究機関でも、研究内容の中心はフォトニクスへと発展している。この記事では、OpticsとPhotonicsを厳密に区別せず、Photonicsを広義の総称として用いる。
3. 最終目標は世界トップクラスのPh.D.課程
Photonic Engineering・Photonic Computing分野で世界をリードしている代表的な大学院には、次のような大学がある。
MIT、Stanford University、Princeton University、Cornell University、Columbia University、University of Pennsylvania、Boston University、UCSB、UC Berkeley、Caltech
これらの大学では、光集積回路、シリコンフォトニクス、ナノフォトニクス、光AIアクセラレータ、光通信などの最先端研究が行われている。
これらの大学のPh.D.課程へ進学するために最も重要なのは、学部時代に優れた研究経験を積むことである。アメリカの博士課程の選抜では学部研究、卒業研究、教員からの推薦状、学会発表、論文、インターンシップなどが総合的に評価される。したがって、学部進学先を選ぶ際には、「大学の知名度」よりも、「研究経験を積める環境」を重視すべきである。
4.具体的な応募先候補
Category I Photonics教育の世界的拠点
このカテゴリーの大学は、Photonicsを専門分野として体系的に学べる、世界有数の教育・研究機関である。
University of Rochester(Institute of Optics) 1929年、Eastman KodakとBausch & Lombの資金提供により設立された、米国初の光学専門教育機関。現在も米国で授与された光学関連学位の半数以上をこの学科が占めるとされ、NSFのREU(Research Experience for Undergraduates)プログラムを含め、学部生が早期から研究室に参加できる体制が整っている。
The University of Arizona(Wyant College of Optical Sciences) 1964年にOptical Sciences Centerとして創設。現在は米国最大かつ最も多様な光学教育・研究プログラムとされ、90科目以上を提供する。
University of California, Santa Barbara(UCSB) Integrated Photonics(集積フォトニクス)の世界的中心地。AIM Photonics(米国製造業拠点イニシアチブ)の西海岸拠点に選定されており、大学幹部が「シリコン上へのレーザー集積において世界的リーダー」と公言している。
University of Central Florida(CREOL, The College of Optics and Photonics) レーザー工学から光通信、フォトニック集積回路まで幅広い研究分野を持つ、米国最大級のフォトニクス教育機関。
Boston University(Photonics Center) 235,000平方フィートの専用施設に60名の教員、100名超の大学院生・ポスドクを擁する。学部生向けのPhotonics Center Programs & Outreachを通じた研究参加の道も用意されている。
Category II Photonics研究を牽引する総合研究大学
これらの大学は、専門のPhotonics学部・学科は持たないものの、電気工学、材料科学、ナノテクノロジーとPhotonicsを融合した研究で世界をリードしている。研究規模・研究費・教員層はいずれも世界トップクラスである。
Purdue University
University of Illinois Urbana-Champaign
University of Michigan
Georgia Institute of Technology
The University of Texas at Austin
Texas A&M University
University of Wisconsin–Madison
University of California, Berkeley
Category III 学部研究に優れた大学
これらの大学では、学部生が比較的早い段階から研究室へ参加できる。また、日本人高校生にとっても現実的な進学先であり、Ph.D.課程へのステップアップを目指しやすい。
Rochester Institute of Technology
Chester F. Carlson Center for Imaging Science、Center for Detectors、Lobozzo Photonics and Optical Characterization Labなど、フォトニクス・イメージングに特化した学部横断の研究拠点を複数持つ。University of Rochesterとの共同研究(レーザー分野)実績もある。
University of Massachusetts Lowell
UROC(学部研究制度)のもと、Laboratory of Optics、Multiscale Photonics Laboratory、Advanced Biophotonics Laboratory、CPENなど、フォトニクス関連の学部研究室が具体的に設置されている
以上、Photonic Engineering・PhotonicsComputingの研究者を目指すのであれば、「どの大学に入学したか」よりも、「学部4年間でどのような研究経験を積んだか」の方が重要である。そのためには、学部生が研究室へ参加できる制度、教員との距離の近さ、卒業研究の充実度、Ph.D.課程への進学実績を重視して大学を選ぶべきである。