He stopped smoking.のsmokingは目的語ではない! | 量子コンピューター時代の大学進学と英文法

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以下の説明はThe Cambridge Grammar of the English Language特有の文法用語に慣れていないとチンプンカンプンだと思います。その為、読む気がしないかもしれません。が、しかし、それ等の文法用語の一つ一つにはHuddlestonや共著者のPullum等の血と汗が滲んでいるのです。

 

─ The Cambridge Grammar of the English Language に基づく科学的分析 ─
学校の教科書や参考書では smoking は「目的語 (Object)」と説明されますが、現代言語学の標準的文法書 CGEL(Huddleston & Pullum 2002) によれば、全く異なった説明になります。


stop は aspectual catenative verb でありcomplex-intransitive 構文をとる動詞です。従ってsmoking は Direct Object ではありません。He stopped smoking.全体としてはSubject-control を伴う catenative verb construction です。smoking の文法的性質をCGEL的にまとめると以下のようになります。
Major element:Complement
Function(構文上の分類):catenative complement
Realisation(実現形態):non-finite clause(-ing clause)

Direct Object ではないと言える理由
① Subject-control 構造
He stopped ⇢ He が [smoking] を行う
(目的語ならこのコントロール関係は成り立たない)
② 名詞句への置換が不自然
× He stopped his smoking.
× He stopped a smoking.
→ 名詞句 (NP) ではない

③ 補語内部に動詞句的拡張が可能
He stopped smoking outside / quickly.
→ Clause の性質を持つのでobjectではない

同じ種類の動詞:Aspectual Catenative Verbs
stop V-ing(終了)
keep V-ing(継続)
continue V-ing(継続)
start / begin V-ing(開始)

これらは 事態の局面(aspect)を表す動詞であり、すべてS + catenative verb + non-finite clausal complementという共通構造をとります。