草間彌生の自伝「無限の網」を読んだ。
これを読むまでは、何か水玉模様のデザインをしているおばさんというイメージしか無かったのだが、そんな凡庸なイメージを覆す活動をしていたみたいでとても驚いた。
その活動については以前、少し言及した。
活動は活動で大変興味深いのだけれど、その次の章に書かれていた草間彌生が愛した男性、ジョゼフ・コーネルが私の好みの男性ドンピシャで大変気に入ってしまった。
https://media.vogue.co.jp/photos/5d30c164c364d4000896abc6/master/w_1280,c_limit/yk03.jpg
首を絞められているのに楽しそうな彌生。
ジョゼフはこんな感じだったと書かれている。
私が「あたし、おなかがすいたから切るわね」と言って、ガチャンと切ると、2分くらいたって、「さっき、言い忘れたんだけど」なんて、またかけてくる。しょうがないから、電話はそのままにして、トイレには行くし、角のレストランへ行ってお菓子は買ってくるし、 あるいは新聞も買ってくるし。でも、ジョゼフはそんなことは全然平気で、少しも気にしない。私がまた電話に出ると、切ってないで、そのまま待っている。
ジョゼフは、私の作品については芸術的に素晴らしいとは言っていた。でも本当は、あの人は自分以外の人の作品にはあまり興味がなかったと思う。ジョゼフ・コーネルは必ず偉い 芸術家になると私は思っていたが、その通りになった。もっとも、私は自分が最高だと思っ ているから、別に関係ないことではあるが。ジョゼフは自分が最高だと思ってるだろうし、 私は私で自分が最高だと思っているのだから。
私がジョゼフ・コーネルから教えられたことは、ずいぶんいっぱいある。とても立派な人 だった。たとえば、神に仕えるために制作しているという態度。彼は、自分のためとか名声 やお金のためとかではなく、神に近づくために制作した。ジョゼフほど純粋な人はいない。 私のすべての美術家の友達の中で、彼は最高だった。
私はこういう他人に興味がない人が好きだ。
ジョゼフはとにかく私の裸が見たいから、裸になってスケッチをしようと言う。それで、「絵を描きあおうね」と言って、すぐに私を裸にしてしまう。 すぐに私を裸にしてしまう。私は「じゃあ、あなたも裸に なってね」と言って、二人とも裸になって描きあうことになるのが、ロングアイランドの冬 は、もう本当に寒くてたまらなかった。家じゅう火の気はなんにもなく、ろくな食べものもなく、彼の洋服はボロボロときてるし、そこらじゅうにゴミは散乱していて汚い。そんな悲惨な有様だった。
ただ、裸にはなるがセックスはしない関係だったらしく、そこはいただけないと思った。
そこで、「ダリは私と逢いたい時、ロールスロイスで迎えにくるのよ。あなただって、最愛の恋人に礼をつくすべきよ」と言った。そうしたら、ものの5分もしないで、年配の女性から電話がかかってきて、「ヤヨイ、私 がジョゼフ・コーネルのところへおともします」と言う。つまり、ジョゼフがそのコーネル の作品のコレクターの女性に、ヤヨイを自分のところにつれてきてくれと頼んだらしかった のだ。待っていると、その女性はベンツに乗って私を迎えにきて、ジョゼフのところまでつれていった。
彌生もジョゼフだけと付き合っている訳ではない。よっぽど腹が立ったのかベンツをよこすジョゼフ。
こうなると、彌生を手放してシカオみたいな歌
を歌ってしまう男性が多いが、ジョゼフは最後まで彌生を諦めなかった。これが女性に死後もずっと好かれるかあいつ最悪だったと言われるかの違いに繋がる。
ジョゼフの死をきっかけに、仕事が多忙を極めたこともあり、彌生は精神的に参ってしまい日本に帰ることになる。
20250923 17:20 一般公開