桜の季節が終わった。
散り際が潔いとして古より日本人から愛されてきた桜、本当に潔すぎる。
見頃はほんの数日間であろうか。その後は、惜し気もなくどんどん散り続け、気付くと緑の若葉を吹いている。これは、これで、春らしいのだが。
寝台特急「さくら」が散ってから早いもので9年が経つ。東京~長崎・佐世保間を、半世紀近くに亘って走り続けて来た「さくら」は、日本の中心である東京駅発の第1列車という名誉と責任を背負って、時代を駆け抜けてきた。一体、どれだけ多くの人の、喜びと悲しみを運んできたのだろう。列車とは、人生の縮図であると誰かが言ったけれど、本当にその通りだと思う。
寝台特急というカテゴリは、今、本当に消えつつある。昔からある、純粋な寝台列車は、もう皆無出ると言って良い。今の、「カシオペア」や「トワイライトEXP」は寝台列車というより、JRで運行するアトラクションという感が強い。目的地までの旅を楽しみましょう、というスタンスである。
勿論、それはそれで良い。しかし、たとえば親や親族の葬儀に向かう時だって、寝台列車を利用することはある。目的地までの旅は、故人を偲ぶ旅であるかもしれないのだ。かつての寝台列車は、そんな人にも利用し易い雰囲気があった。
友人の結婚式に向かう人、新婚旅行に旅立つ人、同窓会に向かう人、里帰りをする人、親戚の法事に向かう人、親の危篤の知らせを受けて故郷に急ぐ人。色々な人達の、色々な人生を乗せて、列車は黙々と、走り続けてきたのだ。
寝台特急「さくら」。
いまさら、復活して欲しいと言っても無理だろうか。
ならばせめて、東京駅から鹿児島中央駅行きの新幹線として、返り咲いて欲しい。
1979年4月
