また一人、偉大な巨匠が消えた。
私は若々しいイメージをずっと抱いていたが、先日指揮者クラウディオ・アバドが他界した。80歳であった。
私が初めてアバドを聴いたのは高校生の時。友人からコピーしてもらった、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」であった。当時、音楽監督を勤めていたロンドン交響楽団との最新のデジタル録音であった。
一つ一つの楽器が、はっきりと独立していて、しかも輝いていた。高校生の私は、いたく感動し、振るえた。素晴らしい演奏であった。
アバドの指揮は、決して奇をてらったりしない、実直で真っ直ぐな演奏である。まるで、教科書のような演奏に面白みが無いという人もいるかもしれないが、私は好感を持っている。自分の個性を誇示する為に奇をてらうような演奏をするより、作曲者のスコアに愚直なまでに忠実に演奏する姿勢が素晴らしい。
ヨーロッパ室内管弦楽団とのモーツアルトの演奏も素晴らしかった。小編成のオーケーストラの特徴を生かし、一つ一つの楽器の音色がきらきら輝いていた。私は、とても感動した。
これらの活躍が輝かしいキャリアとなり、ウィーン国立歌劇場の音楽監督や、ベルリンフィルの音楽監督を歴任する事になったのだろう。
でも、私はこれらの超一流オーケストラとの共演より、今にして思えば個性的であったロンドン響やヨーロッパ室内管での演奏に感動を覚える。意外にも、若い頃の彼の演奏は個性的であったのだと後になって気付いた。実直で真っ直ぐな演奏の中に、彼のきらきらした個性が輝いていた。
とにもかくにも、素晴らしい名演であった。
惜しい人がまた一人、亡くなった。