「あなたの尊敬する人は?」と訊かれて直ぐに答える人物の一人が、宮脇俊三氏である。
50歳にしてサラリーマンをきっぱりと辞め、残りの人生をフリーの鉄道作家として歩みだした生き方は、すごくカッコいい。中央公論社の常務取締役という役職を捨てての作家への転進となれば尚更である。
彼は、もともと凄腕の編集者として知られていた。北杜夫氏の作品を世に送り出したのも宮脇氏である。しかし、何より作家に転進してからの作品が素晴らしい。
「時刻表2万キロ」は、サラリーマン時代に国鉄全線を乗りつぶす過程を記録した作品だが、愚直なまでに全線走破に取り組んでいる姿が、何より素晴らしい。しかも、その事を自分では恥ずかしい事と思い、周囲に隠している姿がいじらしい。こんな立派な作家先生に向かっていじらしいとは失礼に当たるかもしれないが、私はそんな「愚直でいじらしいおじさん」になりたいと思う。
彼の文章の上手さは、誰もが認めるところであるが、その中で本人は至極真面目でいて、しかもウィットに飛んだ表現をちりばめている。
そんなお茶目な宮脇先生を、私は心から尊敬している。