日本自動車工業会がまとめた2023年二輪車市場動向調査によると

新車購入者の実に89.5パーセントが40代以上だった

50代から上に絞ってもなんと73.2パーセントをも占め

オートバイはもはや老人の趣味と云ってもよいと思われる状況だ

実際に乗っている人はどうなんだろう

たぶん同じような傾向なんだろう

ヘルメット脱ぐと禿アタマなんてのによく出くわすし

事故の記事でもライダーが50代というのをよく目にする

オートバイはむかしは若者の乗り物なんて云われていたし

速くてスポーティーなモデルの人気があった

馬力がいくつだとか

気筒数がとかDOHCエンジンだとか

0-400なんて気にする人も多かった

ずばりスペックがそのまま性能を表していた時代だった



それから何十年も経った今

工業製品の進化は行きつくところまで行ってしまって

スペックだけでは他社との差別化が出来なくなっている

どの製品が優れているのか分からないとも云えるし

どれも優れているから各自の嗜好によって選択できるようにもなったわけだ

しかしその結果

単に売れるということが性能になってしまったようにも見える

モーターサイクルショーに行くと各ブースの混み具合で人気がわかるが

近頃のホンダブースの人気はすさまじくて

天邪鬼なジジイは「そんなにいいか?」と近寄りもせずに帰ってくるくらいだ

ライダーのニーズはホンダにあるのだろう

けどね

オートバイは趣味の乗り物ですよ

マジョリティって必要なんですかね

それはメーカーは営利企業なので売れることはトッププライオリティでしょう

だからといってホンダのオートバイが良いとはならないのが趣味の世界のはず



モーターサイクルショー

いろんなモデルに跨ってみたけどポジションも楽なものが多かったように感じる

その辺りは流行りもあるのだろうが

購入者の年齢的なことも理由にあるのだろう

でも外見だけは派手な方が好まれるようで(というかカネが獲れる)

押し出しの強いデザインが主流だ

タイヤも太すぎる

カッコいいけどね

あと、ケツがシャチホコみたいになってるとか

逆にケツをごっそり取っ払ったボバースタイルとか

デザインバランス崩れる程長いスイングアームとか

妙なものが流行る

でもね

いちばん気味が悪いのは「ヘリテージモデル」かな

購入者の大多数を老人に占められてる以上当然の帰結なのだろう

「売れそう」なのだ



ハーレーダビッドソンには古くからヘリテイジと名付けられたモデルがあったが

復刻というより継続に近い本来の意味を持っていた

ヤマハのSRなんかに近い

時代が変わっても絶対に変わらない魅力はある

まあ最近は老い先短いユーザーにおもねていると

売り上げが先細りするのは必至なので(なんせ売り上げ至上主義だから)

ハーレーダビットソンなんかはユーザーの若返りに必死だ

はっきりいって伝統ってだけではもう生き残れないと思っているのだろう

ヘリテイジの潮流はハーレーダビットソンから生まれて

BMWモトラッドのRnineTで完全に1ジャンルとなった

ピアッジオのグループではモトグッチが

インドではロイヤルエンフィールドが

そしてイギリスの栄光はトライアンフが

それぞれ昔の名前で出ています、まるで場末のクラブホステスのように

ヘリテイジとかネオレトロとかで括られるモデルの何たる不気味さ

それもこれも購入者のニーズの反映だということらしい

ニーズは性能か



資本主義経済とは大河の流れに似ている

低い方へより低い方へ

穿ちやすく浸食しやすい方へ

より多くの水源を集め巨大な流れを作る

その姿が果たして本当に求めていた姿なのか

当の本人にも分からないしそんなことはどうでも良いらしい

存続だけが目的なんだろう

ニーズの反映は資本主義では当たり前だが

それだけでは確実に魂を失くしていくように見える

アグスタの最新3気筒エンジンを載せたスーパーヴェローチェに目を奪われても

XSR900「GP」には失笑しか出ない

プライスタグはまあ半額以下なんだけどね



ボクのオートバイたちを面倒見てもらっているテックMCは不思議な空間で

店の前にスズキのGT750があったりピカピカのZ1300がいたりする

クラウザーのR100とかちょっと古いモトグッツィのカリフォルニア

愛知県の限定解除ジジィには馴染みのスズキGSX750Eもいる

こんな奴らが当たり前のように並んでいる

オートバイの本質と魅力は「機能」にあるべきとボクは思うが

スペック至上主義のこの時代のオートバイたちも

実は相当に個性的な魅力を持っていたことに改めて気づかされる



自分のSR400で走っているとよく感じるが

いろいろな場面でSRが話しかけてくるのだ

もちろん言葉を発するわけじゃなく

ボクの五感をとおしてSRが伝わってくる

キツイ勾配でクランクに負荷がかかった時

ハイスピードでコーナリングする時

低い回転からスパッとスロットルを開いた時

様々な場面で様々な反応を返してくる

スロットルからシートからステップから

そんなオートバイが発する声に耳を澄まして

一体となって自在に操ることに没頭できるよろこび

オートバイは単なる移動の道具ではない

モビリティ?まさか

「キリン」

ポイントオブノーリターンのキリンがなぜ「カタナ」で空冷ポルシェに挑んだのか

それは恐怖と自信のアンビバレントの平衡に自身を置きたかったからだ

90年代の空冷デスモたちがクリッピングポイントへ切れ込みながらライダーを試す

それで操っているつもりなのか、と



XSR900は面白そうだけど

XSR900GPを見た時ほんとうに笑ってしまった

「そこまでして売り上げが欲しいのか」

感想はそれだけだ

エンジンが、とか操安が、とか何をどう云われても後付けにしか聞こえない

そしてそうやって稼ぎ出した利益は何を生み出すのだろうか

タイやインドのストリームを日本へ持ち込むストーリー作りにメーカーは一生懸命だ

所得水準がまだまだ低い国で安く作ったものしか日本で売れないのだ

日本人はあんなにカネを持っていながら給料が足らないとうそぶく

贅沢で自堕落な生活をしながら上ばかり見上げて足元を見ない

セレブたちのカネに寄生しているだけのプロダクトが羨ましくて仕方がない

幸せになれないのはカネがないからだと本気で思っているみたいだ

はっきりいってこんな連中が作り出すニーズなんてクソだ

燃料計、要らないね

ギアポジションインジケーター(長!)、カッコ悪い

ライディングモニター、クソが

インカムで楽しくおしゃべり、反吐が出る

スマホホルダー

ドライブレコーダー

USB端子

おえっ(吐きました)

楽しむなと云いたいのではない、むしろその逆で

オートバイはもっと楽しいんだよと伝えたい

豊田章男もかつて云っていた

「僕はね、ガソリン臭くてね、燃費が悪くてね、音がいっぱいでる、

野性味あふれるクルマが好きなんです」

クルマもオートバイも原点はそこに在るべきだと思う

メーカーはレガシィーとかヘリテイジとかアイコンとか持ち出す前に

オートバイを主張するべきではないのか

それでは売れる前に会社が潰れてしまう?

趣味の世界のファンタジーを提供する会社の云う事じゃない

原付が飛ぶように売れた頃と比べても仕方ないが

主婦層までターゲットにするクルマとは違うのだ

自転車を積みたい、みたいなニーズはないのだよ

それでもマツダにはできたのだからきっと不可能ではない筈だ

着せ替えしてまで利益を獲りに行きたいなんてすでに終わっている



そもそもカネで買えるモノの価値なんて買った瞬間にゼロだ

なぜならそれは消費することですべてが完結するからだ

マスプロダクトのプレミアムって何?

今はまったくつまらないカワサキなんだけど

これまでのカワサキの市場戦略はいつも新鮮だった

ゼファー、ニンジャ250

やりすぎたと思っている時にそんな風を吹かせてきた

そしてそれはいつも「原点回帰」の提案で

オートバイの場合、そんなモノづくりの方が支持されるべきだと思う

懐古趣味ではなく原点

ただボクたちむかしライダーにも少し責任はある

ネットを見ると用語すら出鱈目になりつつある

エンジン始動することを「エンジンをつける」と云ってみたり

単なるアイドリングを「暖気」と云ってみたり

ユーチューブには素人のしかもキャリアも浅い乗り手による

インプレッションや比較動画があふれ

「やっぱりホンダを買うのが無難」という論調が目につく(カネもらってるのか)

そんなクソメディアの影響力は強い

メーカーとがっちり手を組んでいるのか

オートバイが売れないと困るというような表現が多い

そもそもオートバイそのものでなく

移動していった後の楽しみを訴えてばかりだ

そしてその背後には間違いなく利益をむさぼろうとする輩が潜む

つまりボクら年寄りが正しくオートバイを伝えられてこられなかったのだろう

メーカーも減少し続ける販売台数に苦しみ

安易にマーケティングに頼りすぎ

売れるモノが良いモノいう方程式になっていないか

ハンターカブもレブル250も(ついでに女子も)見かけないテックMCの店頭

(いやもちろん店の大将はそこにこだわってるわけじゃないとは思うけどね)

なんだかボクには居心地がいいと感じる

ガラガラと引き戸を開けて店に入ると

ガソリン臭が鼻をくすぐり

「こんちわ」と人懐こい笑顔で大将が迎えてくれる

これを時代遅れの懐古趣味と一蹴するのは簡単だろうが

工業製品が進化し続けるなどという

もはや神話のような考え方もどうかと思う

あのころも実はスペックが性能ではなかったのだ

オートバイの持つ魅力を正しく残していってもらいたと

老いぼれは禿げたアタマを掻いているのだ




田んぼではすでに稲穂が重たく垂れさがり

セミたちの声もすこし大人しくなったかな

いつもならアブラゼミからツクツクボウシにスイッチしている頃だが

なんだかツクツクボウシの忙しない声が今年はまだ聞こえない

台風が接近してきている

夕べは床に就く頃土砂降りの雨になって

激しい雷鳴にハッと目覚めてしまうほどだった



クロ介のオカメ(エンジンフロントカバー)の下からオイルが滲んでいた

おそらくジェネレーターのシャフトのシールが劣化したのだろうが

先日、ジェネレーターの修理の時に一緒にやってもらおうか否か迷っていたのだ

テックMCへ寄って見てもらったら

予想どおり経過観察にしましょうという事だった

確かにまだオイルが滴り落ちるようなレベルではない

オカメから漏れたオイルがじんわりと広がってオイルパンまで汚し

そのオイル染みに砂ぼこりが付いてとても汚くなるってだけだ

家に戻ってとりあえずフクピカで拭き拭きしておいた

それにしても今年の夏はさすがに暑かったようで

テックの大将もみんな乗ってないと云っていた

店の前が国道1号線なのだけど休みでもオートバイが少なかったようだ

最近では会うひと会うひと皆「暑すぎて乗れない」があいさつ代わりだ

夏はオフシーズン

熱帯の日本の常識となりつつある





先日北海道を走った時

十数年前に走った時と比べて明らかに平均スピードが上がっていると感じた

ボクの平均スピードではなく北海道の人たちのスピードだ

とてつもなく速い

80km/hを中心として70~90km/hくらいだった

その横スレスレを120km/hで追い越していくキチガイもいる

北海道の道路はほとんどの場所が制限速度の設定がないので

法定速度の60km/hが決まりだが

老若男女関わらず軽自動車でもワンボックスでもとてつもなく速い

トラックやダンプも結構速くて

信号待ちで道路幅の広さよろしく「ちょっと失礼」とスルスルと前へ出ようものなら

そのあと高確率で3桁(スピード)で煽られる羽目に陥る

いい悪いでなくあの広さならまあそうなんだろうと納得はできる

因みに北海道民の運転は事故の多さから受ける印象よりはマナーがいい

流れの速さをみんながわかっているので

とにかく無理に横から出てくる輩とか横切ろうとするじいちゃんはいない

100mくらい手前でも決して入ってはこない

逆に、信号が変わって動き出す時の加速がとても遅い

そのあとの怒涛の巡行とは対照的だが

多分、冬の凍結や積雪に合わせたアクセルの踏み方が身に染みているのだろう

出足が遅いからといって追い越すと絶対に後で3桁で煽られる

まあとにかく巡行スピードが速い

今回SR400で北海道に行ったわけだが

もちろん非力とはいえSR400でも流れには十分乗れる

けれど正直スロットル開度が大きくてそれを維持するのが結構苦痛だったり

その苦痛から逃れるために握り直す面倒臭さがある

SRって本当は3000rpmくらいで流すのがいちばん気持ちがいい

でも3000rpmでは5速でも70km/hしか出てない

あと上りのワインディングなんかでは意識していないとどんどん車速が落ちる

積極的にガソリンを送り込んでいないとマッタリしたがるのんびり屋さんなのだ

もちろん意識的にスロットルを捻っていれば良いだけなんだけど

そこでみんなが良く取り付けているハイスロプーリーを付けてみることにした



アントライオンのフルパワープーリー

この5型のSRは規制クリアのためにスロットルが全開にならない仕様だけど

これを付けると全開になるらしい(それはどうでもいいけど)

だからプーリーが少し小振りで結果ハイスロになっているようだ

取り付けには何のひねりもなくて

取って付け替えるだけだ

10分くらいでワイヤーの遊び調整までできた

径が小さくなっているので

リターンスプリングが重く感じるらしいが(弱スプリングセットもある)

ボクは全然平気で云われなかったら感じなかったと思う

付けてからもう300kmくらい走らせている

正直ものすごく改善した感はないけど

実際スナッチ(握り)を変えなくても高速で巡行は可能になっている

高速道路やそれこそ北海道のツーリングにはあっても良いかもの部品だった



「あんまり走らないと無駄にいろいろなモノを買いがち」という

オフシーズンあるあるをもうひとつ

「etc」といえば以前は「エトセトラ」と読んで

「その他いろいろ、様々」という意味の言葉だった

ラテン語だったと思うが明治以降こういった言い回しが知的でモダンだったのだろう

けれど21世紀の日本では「etc」とは大文字の「ETC」のことで

高速道路の料金自動徴収システムをあらわす

NEXCOはいろんな理由をつけてこのETCを普及させてきたようにみえるが

もちろんユーザー側の利便性も高いので今では9割以上のクルマが

ETCレーンを利用しているようだ

けれどクルマ全体で見ると装着率は5割以下

オートバイを複数所有するボクたちのような人は

なかなか全部にETCを付けるのはコスト負担が大きい

だからSR400にはまだ車載器を取り付けていなくて

そんなに高速を利用することもないので積極的には考えていなかった

それに北海道へ行ったとき久しぶりに一般レーンを使ったけど

それほどメンドクサク感じなかったね

以前はそれが当たり前だったし料金所の係の人としゃべるのも好きだ

けれど最近増えてきたスマートICみたいに

2025年には全国のインターチェンジの8割ほどがETC専用になるようなのだ

そして2030年にはそれがほぼ100パーセントに達し

事実上ETCの付いていない車は高速道路を利用できなくなるという

つまり高速道路を使いたいならETCがマスト!

それでも利用頻度と車載器の購入費用を天秤にかけると

複数台所有するユーザーには負担が大きいのは事実だ

それでNEXCOが一方的なETC専用化の批判をそらすためか

毎年のようにETC車載器購入助成金キャンペーンを打ち出してくれている

ボクの地域では8月9日から今年のキャンペーンが始まった

「ETC車載器購入助成キャンペーン2024 東海エリア」



少し条件はあるけど基本1万円が出る

このETC

実はセキュリティ規格の変更が予定されていて

おおよそ2030年には規格変更が実施される

しかも予期せぬセキュリティの脅威が生じればその時期が前倒しされる可能性もあるので

余裕があるうちに新セキュリティ規格対応の車載器に換えておいた方がいい

車載器管理番号の頭が「0」から始まるものは新規格に対応していない

おそらく2輪車用の車載器は現行機種でなければ駄目だと思う

2輪車用の車載器は種類も少なく価格も高いので

キャンペーンは有効に利用したほうがいいね

SR400は40年以上の使い回しなので

様々な追加装置で見えないところはギチギチに詰まっている

ETCなんて収まる訳ないんだけど

シート裏のプラスチックの突起(多分書類入れを留める)を切り落とせば

フェンダーの後ろの方にピッタリ入る



メーカーは左ステップにステーをかませて取り付けるよう推奨している風だが

ここでも問題ないだろう

フェンダーの振動が思いほか大きいことと

ETCカードの出し入れのたびにシートの取り外しの手間がかかることは

自己責任の上折り込み済みだ

それにしてもETCの取り付けって

自分ではやらせてくれないよね

付けてもらって後から手直ししなかったことないんだけどね

ケーブルの取り回しとかステーの位置とか瞬時には決められないでしょ

だから今回もケーブル固定せずに剥き出しで返してもらったよ

どうせ後からやり直すならその方が楽だからね



ハンドルのところに丸見えなのがちょっと気になるけど

スッキリ収まってはいる

新東名でテストしてきたら大丈夫だったよ



激しい雷雨の一夜が明けて

それでもなんとか日中は天候が回復した

台風が南の海上をウロウロしているから

いつ雨が降るか予想がしづらい

今朝の上空はすっきりと青空が広がっていてまだまだ真夏ような暑さ

バックにカッパを放り込んで走り出した

やはり空気はもう真夏のそれとは違っていて

日陰に入れば秋を感じる程だった

いつもの川沿いの木陰は少し寒いぐらいだ

気付けばツクツクボウシが盛んに鳴いていた

すっかり大きくなったツバメの子たちも旅立ちの準備に忙しくとびまわり

すっかり実った田んぼでは稲刈りが始まっている

秋がもうすぐそこまで来ているね


 



立秋を過ぎても連日の暑さ

もちろんボクたちオートバイ乗りは知っている

日陰に秋の空気が淀んでいることを

信号待ちでジリジリと聞こえてくるような日差しに焙られても

ボクたちはこの瞬間を味わいたくてじっと夏に耐えて走るのだ

もう秋は目の前に来ている



またメジャーリーガーの話なんだけど

大谷翔平がドジャースに移籍が決まったころ

高校時代のエピソードとして目標達成シート(マンダラチャート)が話題になっていた

本人の発想だったのか周囲の助言だったのか

彼の目標「ドラフト1位指名を8球団から」に対して

一般的にアスリートに必要だとされる「心・技・体」を網羅した8個の題目と

その題目ごとにそれぞれ8個の具体的な行動目標が書き込まれていた

球速160キロ、コントロール、キレといったピッチャーの本質に関わる事だけでなく

ドラフトでより多くの指名をもらうためには

人間性や運も大切だと考えていたことが見て取れた

感謝、礼儀に始まり、道具を大切に使うとかゴミ拾いとか

一見野球とか、トッププレーヤーとかにマストとは思えない項目が並ぶ

けれど世界中の人が知っている

大谷翔平の素晴らしさはそのプレーだけでなくむしろ人間性の方だと

彼に目を奪われない人間なんておそらく一人もいないだろう

「神は細部に宿る」とはドイツの建築家ミース・ファンデルローエの言葉だが

大谷翔平の細部にはまさしく神が宿るようだと云えば持ち上げすぎか



大谷選手の話をしながらふと我に帰ると

本当にイヤになるくらい自分を恥ずかしく感じる

もちろんあれほどの存在は奇跡に近い

ボクたち(あなたも?)市井の人間には切ない話だ

けどね

市井の民には市井の民なりの努力もある

その価値や大きさは比べられるものではないはずだし

少なくとも得られるものだってあるだろう



ボクはオートバイが好きだから

オートバイで死にたくないと思っている

それと同時にオートバイに乗っている人みんなに死んでもらいたくないと考えている

大好きなオートバイに乗って死んではダメだよ

だから走る時は交通安全に留意し

いつもオートバイを確実に整備しておくように努力している

正しい経験を積んで予測運転の精度を上げたりすることも大切だ

けれど正直なところ事故に会う会わないはやはり「運」だったりもする

大谷翔平のマンダラチャートにも「運」というキーワードがあったように

あれほどの資質と実力を持つ超一流プレーヤーでも

人間である以上「運」の部分があると考えている訳だ

その具体的な行動目標として大谷選手は

あいさつ、ゴミ拾い、部屋そうじ、道具を大切に扱うなどを挙げる

これらは野球とはなんの関係もないようにも見えるし

逆に人間として社会人として当たり前だとも感じる

ボクたちオートバイ乗り

「運」を上げる必要はないか?

いや多いにあるだろう

なぜなら事故は「運」の部分もあるからだ



実際には何をどうすれば運が良くなるのかはわからない

お祓いを受けたりお札を授かるのもいいかもしれない

左足からブーツを履き左手からグローブをはめるとか

ジンクスやルーティーンなんかもある

正直逆に何もしていなくても

結局のところ「運」はどうなるものでもないのかもしれない

大谷くんだってゴミ拾いしたり部屋の掃除をしたりしたって

それでチャンスにクリーンヒットを繰り出せるとは思っていないだろう

それだったらバッティング練習に励み、対戦ピッチャーを研究した方が

遥かに効果的だと素人のボクでも思う

でも何か人知れず務めるストイックさに意味を感じることはある

かのイエス様も云われた

「自分の義を見られないために人の前で行わないように、注意しなさい」

さらには「右手のしていることを左手にさえ知られるな」と仰る

そうしてこそ神が細部に、ほんの少し宿らないかな、と思う訳だ

けれどオートバイの事故だって「運」まかせではなく防げるものも実は多い

単独の自爆事故や一旦停止無視みたいな自殺行為の事故もある

右直の事故でもニュース映像で原型が無くなるほど潰れたオートバイを見る

オートバイを操る技術

雑多で混沌とした混合交通を走る経験値

本来はそういった具体的な取り組みで事故にあう確率を下げるべきだ

そんな姿勢でオートバイに向き合っているだろうか

そこでボクが思うのはこんなことだ



誰かの後ろに付いて走っていたり

すれ違うオートバイを見送ったりしていると

とても気になることがある

「爪先」だ

爪先が外に向いて開いたいわゆる逆「ハ」の字になっていたり

これも案外多いんだけど

その爪先がステップより下に(シフトアップの時みたいに)突き出したようになっている

これは全くの個人的な印象だが

オートバイへの向き合い方があの爪先に見て取れるような気がするのだ

なにも教習所で習ったことを蔑ろにするな、と云いたい訳じゃない

あの爪先のみっともなさ、だらしなさ、無頓着さに寒気がするのだ

何度も云うけど個人的な印象に過ぎないと念を押す

ご本人がどういう意識でああなっているのかは知らないしどうでも良い

でもボクはとてもあんなみっともない格好で

大好きなオートバイに向き合いたくはないと考える

それこそ「運」が逃げていきそうだ

第一、あれは本当にカッコ悪いよ



土踏まずをステップに乗せて爪先を前へ向けペダルの上に置く(ペダルに触れてはいない)

素早く踏みかえられるなら母趾球でステップを踏んで踵をフレームに当ててもいい

疲れてくるとどうしてもああなるというなら休憩すべきだ

爪先を前へ向けると自然に股関節が閉まる

大切なのはむしろこっちで

股関節を閉めることで下半身全体がオートバイに自然に密着する

爪先を前に向けていればニーグリップを意識する必要はない

技術的にも理にかなっているし

とにかくオートバイ乗りとして真摯にオートバイと向き合っている感じに

好感が持てるし憧れてしまう

もちろん好感を持たれたくてやっているつもりはないんだけどね

ステップに置いた爪先を前へ向ける

それはボクのオートバイへの敬意と畏怖、愛情と恐怖の表現だ



まあとにかく事故にはくれぐれも気を付けよう

むかし読んだ本にオートバイに乗る人の寿命は乗らない人より7年短いとあった

これは病気にかかるのではなく事故で命を落とすという意味なのだろう

特に若い人は周りの人の人生をも大きく変えてしまうことが多い

オートバイで死んではだめだよ

気を付けて、気を付けて

今日も大切な人が待つ家へ帰り着こう




猛暑日という言葉もそろそろ定義を変える時期に来ている気がする

35℃なんて当たり前なんだからただの夏日でいいんじゃない

もうこれからは37℃以上で猛暑日だね

やっぱり体温越えてるかどうかは明確に違う

体温越えの気温ではヒトのホメオスタシスは機能しない感じがしている

オートバイは真夏はオフシーズン

エアコン効かせた部屋の中で妄想は膨らむばかりだ



サンディエゴ・パドレスのピッチャー ダルビッシュ有と

元WBC日本チーム監督の栗山英樹との対談記事をネットで読んだ

印象的だったのは多くは野球経験者であるコーチではなく

データ収集や分析が役割のアナリストをスペシャリストと云っていたこと

自分の感覚と科学的分析を照らし合わせ

そこから課題を見つけ改善点を探っていくやり方は

今のメジャーリーグでは普通のことだと教えてくれる

経験も大切だがその裏付けに科学的なものを持っている必要があると

ダルビッシュは云い切っていた



オートバイのコーナリングは奥が深い

それはヒトの感覚と物理法則という相容れ難い要素を持つからか

またはライダーとマシンそれぞれの重心と運動系を持つからか

ライディングがスポーツであるなら

やはり科学的な分析や裏付けは必要ではないかと思う

恥ずかしいからあまり大きな声では云わないけど

オートバイのことがなんでそこまで好きなのかと云えば

操ることの面白さなんだと思っている

上手くいったり下手クソだったり

どこかで何かをカジってきてはそれを試しながら走る

そんなことをもう40年近くやっているような気がする

辻司、根本健、和歌山利宏

ボクの理論の柱はこの人たちの「言葉」だ

どうにもしっくりこないのは

佐川健太郎(ケニーとか自分で云ってる痛いオッサン)、柏秀樹

あとはほとんどの元レーサーたち

そもそもレーサーなんて科学以前に自分の感覚だけで走れている人が多い気がする

あの人たちにひとを教えることなど所詮無理なのだと思う

そもそも感覚を表現する「言葉」(理論)を持ち合わせていない

ライダーは進入で「Dive into the corner」して

「Get the inside」で旋回する、なんて文章に寒気がする

云っていることは感覚としてはわかる

でもこれが「ライディングの科学」の一節とは到底信じがたい話だ

そもそもヒトの感覚はめいめい大なり小なり異なっているものだ

だからライディングにも科学的な根拠が必要な時期にそろそろ来ている

コーナリングとはオートバイの運動なのか

それともヒト(ライダー)の動作なのか



ヤマハのモトボットの研究は

コーナリング論争に大きな楔を打った

オートバイが直進の安定状態から

どうやってリーンを開始し旋回に移ろうとするかを「科学的」に解明した

それどころかライダーの体重移動が実は不要だとも結論付けていた

旋回へ移行したオートバイが自分で曲がっていく(セルフステア)ことも

ステアリング軸とフロントフォークのオフセットや

キャスターアングルなどの操舵系の構造や

キャンバースラストやスリップアングル

オーバーターニングモーメントなどのタイヤが生む様々な作用で説明可能

グリップの強度もセルフアライニングトルクの増減でライダーは知ることが出来る

しかし本当にジオメトリーだけでオートバイが走るなら

ライディングのミスはなぜ起こるのだろうか

オートバイの動きだけにフォーカスされすぎて

体重移動なしに可能というだけで

ライダーがそこに関わるファクターを蔑ろにしていないだろうか

たとえは唐突だけれど

愛のない結婚は可能だとしても

そのことが男女間の結びつきに愛が不要だとは云えない

この位レベルの低い論理に聞こえるのはどうしてなのかな

読めば読むほど突っ込みどころがまだまだ満載な結論に感じるのだ



とりあえずこのステアリングのトルクステア制御に関しては

以前から倒し込みの方法として云われてきたもので

逆操舵とかカウンターステア、フェイントステアなんていう

クルマのドラテクでは別の意味に使われている言葉で表現されていた

辻司の「ベストライディングの探求」(1985年刊)

ボクのライディング探求はここから始まっているけど

その中にすでに「あて舵」と紹介されている

モトボットを引き合いに出して

オートバイのコーナリングは体重移動ではなく

このあて舵とセルフステアのバランスをとってコーナリングするのだ

と云い張る人は一定数いるが本当にそんなことが可能だろうか

もしくは速度域が人の認知能力をはるかに下回る極低速での話をしているのだろうか

公道のほとんどのコーナーがブラインド(出口まで見渡せない)の状況で

一瞬たりとも状況判断を遅らせられずもちろん見誤ることもなく

コーナーに合わせてステアリングトルクをコントロールするなど

コンピューターとセンサーなくして不可能だ

たとえ50km/hでも1秒間に14mも進んでしまうんだよ

鈴鹿の130Rに180km/hで進入してみたらいい

ちがうかな、どうだろう

ベストライディングの探求の辻さんのすごいところは

ただステアリングを押すのではなく

体重移動のための身体の移動と同時にグリップを押せと書いているところ

これは感覚と一致した動作に思える

だけどね

その辻さんもライダーが筋肉を動かしてすることと

そのフィードバックを感じることを混同してしまっている

これ、よくある「ライディングテクニック表現の誤謬」

運動神経を使ってすることとその結果、感覚(知覚)神経が感じるフィードバックを

同一視、もしくは混同している

しかも辻さんは(ボクは辻さんリスペクトしていますけど)

コーナリングのきっかけはイン側ステップへの荷重だ、と断言している

ご丁寧に、荷重と踏んずけるは違うから気を付けてとまで書いている

意図するところは間違ってないのだろう

でも、踏んずけずに荷重するは正直わかりにくい

なぜか

それはイン側ステップへの荷重は体重移動の結果であって

イン側の足からの感覚神経のリアクションに過ぎないからだ

言葉が定義されてもおらず使い方も曖昧

それよりももっとダメなのは

イン側ステップに荷重はしないでしょ?

イン側の足って基本ぶらぶらだよね、だってライダーは基本シートに乗っかてるから

極低速での車体コントロール以外でイン側ステップに乗る事ってないと思うけど

ちがう?

身体がロールしていく動きをイン側ステップへの荷重と感じて(考えて)しまっているだけで

内尻(ほんとは股関節)か外側の膝とか脚とかに荷重されてないかな

(オートバイに触れているのはそこだけだから)



佐川何某のライディングメソッドにダメだしするというブログ記事をたまたま見つけた

(佐川健太郎氏「バイクテク」にダメだし☆はじかれる反論)

おそらく骨格とか筋肉なんかの運動学を学んだ人だと思うんだけど

(ご本人は動作研究者、パフォーマーと名乗られておられる)

この記事に出会ってボクは興奮した

それはコーナリングの科学とはヒトの動作の科学だとうっすら感じていたからだろうか

コーナーへ向けてライダーが重心を移す動作は

彼が書いていたとおり「背骨を弓なりにする」ことが必要だろう

左へ重心を移動するのなら(左コーナーへ向けて)左の脇腹を開くような格好になる

(ここが重要なんだけど)特に意識は必要ない

意識するなら左肩関節(左上腕)が内旋し肩甲骨がずり上がることと

その結果として上半身のスパイラルライン(筋膜の連鎖)によって

骨盤の右側が肩に近付こうとする(引き上げられる)こと

つまり骨盤は左足の股関節を軸にして左へ回旋する



わかりにくいね

左カーブへ進入する時

背骨を弓なりにして左脇腹を付きだす(左に凸)ってこと

その時、左の肩と骨盤の右側が互いに引き合うような動きになっているかがポイント

違うかもしれない

でもこうするだけですべての辻褄が合う

イン側の肩を内旋する動きはあて舵になるし

イン側の肩がずり上がりアウト側は下がる

イン側の股関節に荷重を感じ

タンクがあればアウト側の膝や脚全体を介してそこに荷重が乗る

ただし下半身は実は何もしなくてもいい

骨盤は上半身の動きに合わせて動くはずだからだ

しっかり重心移動の動きが出来ていると

オートバイは経験したことがないほどスムースにコーナリングしていく

これは右利きの人が左にコーナリングする時顕著に分かる

どこにも力みのない、だから恐怖心や疑念もない

無重力のような気持のよい世界にいられる

力みが無いので対向車や路面の変化にも落ち着いて対処が出来るし

そもそもコーナリングスピードがあきらかに上がっているのを感じる

深く突っ込んで一気に向きを変えて旋回を楽しめるのだ

手足の使い方や頭の位置

ブレーキングだったりトラクションだったり

各論的なものも知識としてはあった方がいいと思うけど

そこではそんなすべてが完成されたパズルのようにピタリと嵌まっていることに気付くだろう

コーナリングを科学的に解析するとはいえ

コーナリングをあまり複雑に考えるのはやはり違う

鈴鹿8耐を久しぶりに最初から最後まで見たけど

ライダーたちの動きはみんなシンプルでナチュラルだった

コーナリングに必要な科学的根拠

それは結果的に気持ち良いコーナリングになっているはずだ



ただもちろんこれは結論ではない

なぜかといえば

やはりオートバイがそれ自身で曲がろうとするメカニズムは確かにあるからだ

そしてそこへライダーが動きを合わせているだけなのだという感覚もある

けれど直進状態の安定からコーナリング状態への安定へ移行するためには

絶対にヒト(ライダー)の意志とアクションが必要だ

オートバイが曲がるのか

ライダーがオートバイを曲げるのか

と云えばやはりライダーがコーナリングさせているのではないのだろうか



ながながと独りよがりな机上の空論をお読みいただきありがとうございます

興味がある方は一度お試しあれ

交差点の左折で左の脇腹を付きだすだけで

(無意識なのに)ステアリングが大きく右に振り出され

次の刹那には何事もなく左へステアしていくのを体感した時

確実な重心移動の大切さを目の当たりにしてしまって興奮したって訳です



オートバイは基本的には雪や氷の路面はむずかしいので

冬には走りに行く場所が限られてしまっていて

なんとなく「オフシーズン」みたいな感じになるけど

逆に夏は夏で、どこへだって行けるんだけど

日中は暑くてとてもじゃないけど長い距離は遠慮したいね

アタマをすっぽりヘルメットで包み

足には革の分厚いブーツとくれば

狂気の沙汰にも見える

剥き出しのエンジンやマフラーからは容赦なく熱が襲い

水冷オートバイなんてことになると

渋滞で嵌まっている時にかぎって冷却ファンが止まらない

股間をマジで火傷することがある

走っていられれば良いのだけれどね

およそ市街地を炎天下に走ることは避けたい



けれど見方を変えれば

夏の暑い時期に太陽に焙られながら

オートバイで走るのも実はそう悪くない

(でた!アマノジャック!)

走り出した瞬間の涼しさは格別で

「ああ、夏だ」

と実感させてくれるし

夏の暑さは冬の寒さと一緒で

厳しければ厳しいほど楽しい

実際、ヘルメットの中を伝い落ちる汗に思わず笑ってしまうなんてこともある

やれ水分補給だ、やれこまめな休憩だ

ヤイのヤイのうるさい昨今だけど

これくらいの暑さを乗り切れるくらいの体力と健康は持っていたい

良く食べ、良く汗をかき、よく眠る

これは良い生き方、良い人生にもつながる

「異常気象」とか云ってないで健常者なら普通に乗り切れ

ましてやこんな夏にオートバイで走り回りたいならなおさらだ

ライダーは身体が資本

このあいだ北海道へ行ったとき

フェリーで乗り合わせたライダーはご多聞に漏れず

ほぼ中高年だったんだけど

長年乗り続けた彼らの年季の入った相棒といい、その無駄のない立ち回りと云い

みなベテランの雰囲気が好ましかった

そしてやはり一様に大柄でがっしりとした身体つきをしているように見えたが

これこそが長くオートバイに親しむための資質なのだと改めて感じた

ロートルライダーたちがライディングの腕を磨きながら

老いていく身体のケアにも努力しているとはよく聞く話だ

燃料、荷物を含めて250㎏超の車体を

坂や段差にも対処しながら押し引き出来る筋力は必須だし

一日中炎天下や風雨の中を走り切る体力気力もいる



クロ介(BMW R100)

ジェネレーターのコイルが死んで交換した

修理に出す間にタイヤの交換もしてもらった

ミシュランのバイアスタイヤ ロードクラシック

現在のタイヤの選択肢は基本的にはこいつかブリジストンのBT46の2択

ミシュランは今回2回目だ

少し操縦感にクセのあるタイヤで気に入っている



口コミなんかを見るとファーストインプレッションで

切り返しや起すのが重いとか

セルフステアが強いといった

おそらくネガティブな感想が多い

たしかにいつもどおりコーナーに入ろうとすると

身体が反応しないうちにフロントが切れてそのまま切れ込もうとする動きを感じる

またその動きに身体を追従させると今度はそのあとにリアが妙な動きをする

する、というか感覚的に受け入れがたい挙動に感じるみたいだ

けれど、もしそう感じるならフロントの動きを少しだけ弱めて

リアが旋回するリズムにフロントを追随させると

目からウロコの旋回を見せてくれると思う(RSC=リアステアクラブ員なもんですから)

フロントの動きをコントロールする(ステアトルク制御)というと難しく聞こえるけど

これは感覚的にできる動きなので

無意識ではなくそれを意識的にやる気になることが大切だ

(実際は意識するだけで特に何もしなくても、そうなってくれることが多い)

旋回のはなしがしたいけど、ちょっとここで飛行機のはなし


(自衛隊HPから画像拝借)

旋回する飛行機が空中でバンクしているのを見たことがあると思うが

体重移動でバンクしてるわけでなく(当たり前)

エルロンという補助翼を使ってバンク(ロール)させている

ラダー(方向舵)を操作するだけだとヨー方向に機体をよじるけどほとんど曲がらないが

機体を進みたい方向へバンクさせながらラダーを切ると滑らかに旋回していく

パイロットは横滑り計(ボール)をみて(ベテランは感覚的に分かるけど)

バンクと旋回の効率を最適化(バランス)させている(実際にはエレベーターも使う)

すなわち飛行機の旋回はロール、ヨー、ピッチすべてを同時にコントロールすることで成立しているのだ。



バンクするだけ、舵を切るだけ、では旋回しない

そうオートバイと同じだ

オートバイもバンクだけでは旋回できず舵角が必要

さらには遠心力の反力であるグリップ力(内向力)なんてものもある

しかもセルフステアとバンク角がリニアにリンクしているわけではなく

ともすると寝かせれば効率が上がると思いがちだがそれがそうでもない

やはりスピードとバンクと舵角の関係は複雑なのだ

だからバンクさせ遠心力につり合い舵角をつけて旋回する一連の動きは

すべてがほぼ同時に進行していく

どこでバンクを止めどこから旋回を強め、とコマ送りのようには進まない

けれど人間のセンサーは案外正確で

効率の良い旋回は気持ちいいと感じられるような気がする

そしてそれを繰り返すことでこの複雑な力学を無意識に操れるようになる



舵が切れる力(セルフステア)を舵を保持すること(保舵)でコントロールする

その動きはそのままリーンアングルをコントロールすることになる

カウンターステアとか逆操舵とかいう怖ろしい言葉とやっていることは同じだけれど

リーンアングルを作るための体重移動と保舵はみな無意識にやっていることだ

けれど路外逸脱や正面衝突の事故の記事を目にするたびに

ただ何となく曲がれているライダーが多いのかも、とも思ってしまう

前にも書いたけどライディングテクニックの記事の用語はかなり危うい

「加重」なのか「荷重」なのか「反力」なのか

感覚を言葉にする難しさが未消化のまま

プロライダーの肩書でそれらしい造語を使われると

それだけでその意味不明な用語がまかり通ってしまうように見える

「イン側のステップに荷重をかける」

これ、意味わかります?

もっとひどいのだと「イン側のステップを踏む」って書いてある

ステップを踏んずける?

どこを支点にして踏むの?

椅子に座った状態で言葉のとおり試してみればわかるけど

右足で床を踏むと左の尻が硬直する(左足が浮くかも)

この時右足に掛けた力と左の尻にかかった力は釣り合っているはずだ

これでは体重移動にならない

だから「イン側のステップに荷重をかける」では伝わらない人がいるってことだ

まともな人ほど頭の中が「?」でいっぱいになる

(イン側ステップへ荷重するのはないと思うけど、基本ぶらんぶらんでしょ)

「タンクに当たった外側の膝を内へ押し込むように荷重する」

これも一緒だ

そもそもやり方が分からない

片側だけニーグリップを強めるのと何が違うのか?

コーナリング中に外側の膝に力を入れてタンクを押している人がいると思う

膝を内側に閉めると爪先が外にけられるから

そうね、これもプラマイゼロで荷重はのらない

(でも深いバンク角ならここへの荷重は実はかなり強い)

そもそも「荷重」って何?

構造物にかかる力(重さ)のことだ

だから荷重は間違ってない

ただ「加重」はちょっと違うかも



とにかくコーナリングはすべてが同時進行する

同時進行だけど進入と旋回では明確に異なる

ツインリンクもてぎのダウンヒルストレートから90°コーナーを見ていると

フルブレーキングからコーナーに向けて進入する動作から

ある一点で急にバンク角を深めグリっと向きを変えるのがわかる

セルフステアを殺しながらコーナー深く進入し

一気に保舵を緩めて(0ではない)セルフステアを優位にして旋回力を強める

ここがまさに向き変えポイントになる

 

なんかロードクラシックの性格を説明したかっただけなのに

メンドクサイ話になってしまったな

ロードクラシックのやや強いセルフステアを活かすには

コーナー進入での保舵(ステアトルク制御)を少し意識的に強め

いつもより少し奥へ向き変えポイントを設定してはどうか

そうすれば旋回ポイントでそれを一気に解き放った時

持ち味の鋭い旋回力を活かせませんか?という提案だ

スーッと弧を描くようにフロントが意外な速さで回り込んでくる感覚は快感を伴い

リアタイヤと車体の動きにリンクした効率の良い旋回を生んでくれる

これをわかってもらいたいな、と思っただけなんだけどね

とにかくクイックな向き変えばかりを意識していると

ついそのタイミングが早くなりがちだ(インに付くのが早すぎる)と思う

このロードクラシックのセルフステアが強いのは事実なので

それをしっかり活かす組み立てで走れば

BT46なんて味も素っ気もないと感じると思うけどなー