著名なバイクジャーナリストであり、ライティング・スクールも主宰している佐川健太郎氏の配信動画『バイクテク~コーナリング 「どこに荷重したらいいの?」』から抜粋した場面👇。

佐川健太郎ライディングアカデミー東京

 

パイプ椅子に座って「シート荷重」を説明されているところである。

 

 

 

“ライディング上級者”として視聴者の手本になろうところを捕まえて、その動作を「悪い見本」にしてしまうのは非情であるが、バイクのプロとしてメディアに立っているので、僕のようなその辺の素人からアレコレ云われるのも致し方ない。

 

 

この動画には、ケニー佐川氏の右カーブ(右荷重)への脆弱さが、よく露呈されている。

 

 

彼の動作の、見てほしいポイントは2つ。

 

①肩をすくめている(上げている)のは、コーナーのイン/アウトどちらか

②尻(骨盤)を前にしているのは、コーナーのイン/アウトのどちらか

 
 
 

 

右荷重(ダメな方)

ケニー佐川

①イン側の右肩を下げている。

②アウト側の左尻が後ろに引けてる。

※佐川氏の座り方(尻)が、最初から“ 右前/左後ろ ”になっている

 

 

右のケツでグッとシートを押し込む方法で右への傾きをつくっている(反力で体が荷重と逆方向(左)に伸び上がっている)。

ライディングならば、自分は動かずに小手先の操作で車体を動かしている状況

 

根本的には、彼は右へ行くことが不安なので、上体を左に残す手段として成功している。

身体全体がご覧のように力んでいる。

 

 

そして左荷重(良い方)

佐川健太郎

①イン側の左肩が上がっている。

②アウト側の右尻が、前に出ている。

※佐川氏の座り方(尻)が、最初から“ 右前/左後ろ ”になっている

 

左シートをケツで押すでなく、体をあずけるかたちで左への傾きをつくっている。

ライディングなら体が先行しバイクが追従した状態。

 

肩の力が抜けて、リラックスしている。頭部の水平面が地面と平行であり、制御された傾きであることを示唆している。

 

 

別動画での左カーブを連続写真にしたもの👇

リラックスの左カーブ。

なぜなら左荷重の「姿勢」ができているから。

 

 

同じく佐川氏、右カーブ👇

アウト側の左尻(腰)が引けたままなので、、体の面(胸)が進行方向に対して完全にソッポを向いている。

 

『インの肩から切り込んで行け』という昔ながらのアドバイスは良いのだが、骨盤もそのままインから行ってしまうと、このNGモーションとなる。

 

インの肩とアウトの骨盤が引き合うスパイラルラインの存在を、認識してほしい。

👇参考記事

 

 

 

 

 

佐川氏は、パイプ椅子の座り方と同じくバイクのシート上でも“ 右前/左後ろ ”の姿勢なのだ。

右利き

佐川氏に限らず、多くの人が左カーブで外尻(右尻)が前なのに、右カーブでは外尻(左尻)が後ろに引けている。

 

👇参考記事

 

 

左回りの姿勢を変えずに右回りもしているのであり、右カーブで体がしっくりこない最大の原因となる。

 

理由は後の「利き手」の項で解説する。

 

 

佐川氏、右コーナーでは内荷重の姿勢ができていないので恐怖感があり、体が力んでしまう。

右コーナーは体が入らない代わりに、バイクのバンクを深めて代償することになる。

リーンアウトの手法ともいえるか。

ライディングアカデミー東京

みんなのフロントタイヤの削れ方が右に深いのは、この理由。

 

左腕の力みは、ことさら強い。

おそらく新垣敏之氏の教えを守って、「カーブの舵取りは左ハンドルでやる」意識が働いてるんだろう。

右手はアクセル操作に集中せよという意図だが、この教えも僕らの右カーブをダメにしてきた元凶。

 

人ってのは、手を握り込んだ方に荷重が移る。

だから左コーナーで左手主導は良いのだが、右コーナーで左手主導だとこれまた右荷重に拮抗する因子となるわけだ。

 

右コーナーで旋回中に、右の小指を握り込むと体が入るから試してみて欲しい。

 

 

「荷重」の姿勢とは

動作をするとは、荷重の左右入れ替えの繰り返しなのだ。要は重心移動なのであり、それは特徴的な姿勢として現れる。

 

うちまた

荷重側は、「うちまた」姿勢となる

体の左右において、荷重されている側は股関節内旋位をとるのだ。

 

 

「うちまた」、すなわち股関節の内旋動作には2通りあるので、そこだけ説明をさせてほしい。

 

①👇足をまわす「うちまた」

今回の話に関係ない「うちまた」動作

股関節内旋その①

ポイントは、うちまたになる脚は地面から離れてソレを行ったものだという事。

 

 

 

②👇上体を回してなる「うちまた」。

今回の話のマトになる股関節の内旋動作。

股関節内旋その②

うちまたになった脚は、地面に着いて動いていない事がポイント。

 

股関節内旋

 

大谷翔平

大谷翔平

 

野茂英雄

 

マルケス

 

株式会社モト・マニアックス

ケニー佐川氏

👆なにげないワンショットに現れたこれぞ定型的な左軸姿勢(右利き姿勢)

肩は左上がりで、骨盤は右が前。

顔から下へ引いた垂線(体の重心)は、左足に片寄っている。

 

 

ケニー佐川氏の左荷重 ※良い方のフォーム

 

そして苦手な右荷重

ライディングアカデミー東京

パイプ椅子の実演同様、バイクのシート上でも尻の位置が“ 右前/左後ろ ”になったままだ。

 

この事によって、荷重足となるべき右股関節は「うちまた」ではなく、逆の「ガニ股」姿勢になっている。

ここにケニー佐川氏の“右コーナー恐怖症”の原因があるのだ。

 

👇“右前/左後ろ”の図

利き手

左股関節は内旋(うちまた)し、右股関節は外旋(ガニ股)する。

 

ガニ股姿勢は非荷重側の姿勢である。

神成文裕

 

股関節の外旋位は、いわゆる関節のゆるみの位置。

その「ゆるみの位置」で身体を乗せている不安定感を解消するため、力んで体をしめ上げる。

 

別記事に「うちまた姿勢」を解説してるので、書きかけなんだが時間があればどうぞ。

 

 

もう一つのポイント「肩が上がってるか」については、大御所ネモケンの意見に勇気を出してダメ出しした記事を読んでみて下さい。

 

 

 

どうして右荷重が苦手になるのか

右利きだからである。

 

右利きの人は手だけでなく、目や耳など、錐体交差で左脳に連結する器官すべて右側を優位に使う。足も同じである。

※たまに「手は右効きだけど、足は左効き」などという記述があるが、意味不明。

 

 

右利きだから右足でボールを蹴るわけだが、このとき体重は左足に乗せる。

「左に乗って右足を出す」となる。左に軸をつくって右足を出せば左に回転する。

 

すなわち左回りが得意になる。

 

右利きのパターンとは総じてこういうものなのだ。

👆右前/左後ろのポジション。

 

 

右利きの人がイスに座っているならば、このポジションになっているはずだ。

試しに逆の左前/右後ろで座ってみて、その違和感を確認してみてほしい。

👇この内容の記事

 

 

眼球は内(鼻)に向ける方が力を入れやすい。

右利きは右目優位で見るので、右眼に対して鼻は左方向。

 

要するに右利きは、左側へは目の動き、右側へは頭の動きで追う事になる。

👇この内容の記事

 

 

 

動作の意識は自分の体に向けるべき

ケニー佐川氏の、ライテクだけでなくそのウンチクにもダメ出ししてしまおう。

 

恨みがあるわけでは無い。

 

コーナリングでタイヤのエッジに意識を持っていく事を薦めるのは、もうやめてほしい

 

まず基本的に自分の体に集中しなければならない。そして、前に行くのだから意識も前に向けるべきだ。

 

同じバイクジャーナリストの山田純氏が、「地面の凹凸に自分を合わせるようにバイクを運転しなさい」と、後輩ジャーナリストにアドバイスしたのを雑誌で読んだことがある。

オフロードでなく、オンロードの市街地走行の話。

 

この意味不明なアドバイスを実践してみると、しかし不思議なことに運転の質がとても良くなる。

 

信号や前のトロい車に惑わされなくなる精神的効果もありつつ、身体的効果として下リンクの記事に通じてくると思われる?が、山田氏どうだろう。

 

 

とにかく、「体が何をしているのか」をちゃんと解ってないなら、人にバイクの乗り方を教える資格はない。

 

そして、「タイヤのエッジを押し付けるように」とか、「シートに荷重をかける」とか、それは「ハンドルを押して前荷重をかける」って言ってるのと同じ。

 

「押す」と「乗る(荷重)」の作用の違い、動作としての違いを、まずは明確に認識してほしい。ちゃんと勉強してから言葉にしろと言いたいのである。

 

 

昔から言われてる言葉だから疑問に思うこともなく、矛盾を検証することなくいつまでも繰り返す。

若者の取り込みをあきらめ、昔乗ってた中年にターゲットを絞ってバイクに乗らせ、でも肝心な運転を上手くさせられない。自分たちもヘタクソだから。事故を増やしてるだけ。

 

 

とにかく動作を指導するのに、自分の体でなく物に意識を向けろなんて有り得ない。しかも後ろにある物を想像しながら前に進めみたいな話とか。

👆佐川氏は「ライダーがする事」と「車体からのインフォメーション」を混同してしまっている

神経には遠心(運動神経)と求心(知覚神経)がある。

 

車体や路面からの挙動は俊敏に受けとる。そのための、自分の体への集中。

タイヤのエッジとか、シートとか、そんな道具の端的な場所に意識を向けて運転してる人はいつまでたってもヘタクソを卒業できない。

 

 

僕だってバイクの運転が上手くなりたくて、こういう人の記事を沢山読んできた人間のひとりだ。

コーナーが迫ってきたときに、脳裏に浮かぶのはそこで見た言葉達なのだ。

 

これは人類削減計画なのか?

 

バイクジャーナリストは、命に係わるアドバイスなんだから、もっと勉強してから発信して下さい。

 

おわり