東京学芸大学個人研究員として美術教育を研究しつつ、中高の美術教師として教壇にも立つ著者は、「13歳」が美術を好きになるか、嫌いになるかの分岐点であり、「技術・知識」偏重型の授業スタイルが、中学以降の美術に対する苦手意識の元凶ではないかと考え、「美術=アート思考」は大人が「13歳」に戻り「最優先で学び直すべき科目」であると力説する。
「アート思考(アート的なものの考え方)」とは、
①「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、
②「自分なりの答え」を生み出し、
③それによって「新たな問い」を生み出す
思考プロセスだという。
VUCAの時代において、アート思考は、「自分のものの見方」「自分なりの答え」を手に入れるための考え方で、すべての人に役立ち得るものとしている。
19世紀のカメラの登場により、写実的な表現というアートの目的が見失われてしまった時代において、20世紀のアーティストたちは、自分自身のなかに「興味のタネ」を見出だし、そこから「探究の根」を伸ばすことで、「表現の花」を咲かせるというプロセスに自覚的に取り組むようになっている。
アート思考を育む題材にふさわしい、20世紀の代表的なアート作品を取り上げたエクササイズを通じて、「写実的な表現」「遠近法」「具象物を描くもの」「視覚で味わうべきもの」「イメージを映し出すためのもの」といったアートの常識が次々と覆され、「これがアートだ」と考える『確固たる枠組み』さえ存在しないのではないかというところまで行き着く。
「アートなんてものは存在しない。ただ、アーティストがいるだけだ」(歴史家・美術史家のエルンスト・ゴンブリッチ)
「自分の興味・好奇心・疑問」(=自分の愛すること)を皮切りに、「自分のものの見方」で世界を見つめ、好奇心に従って探究を進めることで「自分なりの答え」を生み出すことができれば、誰でもアーティストであると著者は言う。
アートに触れる敷居が下がると同時に、その奥深さにも気づかせてくれる。
