ネットと愛国 ~在特会の「闇」を追いかけて~ | 読書雑記

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ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて (g2book)/講談社

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「在日特権を許さない市民の会」(在特会)は、在日韓国人・朝鮮人に与えられた特権を日本から無くすことを目的として設立された「右派系市民団体」だ。

ネット上の掲示板等で人種差別的・排外主義的な書き込みを繰り返すネット右翼の存在は以前から知られているが、ネットの世界から飛び出して、街頭演説やデモ行進を行う「行動する保守」として活動するのが在特会の特徴である。ネットによる簡易な登録が可能とはいえ、会員数は1万人を超え、年間1000万円もの寄付が集まるという。

「ゴキブリ朝鮮人を日本から叩き出せ!」
「シナ人を東京湾に叩き込め!」
「おい、コラ、そこの不逞朝鮮人! 日本から出て行け!」
「死ね!」
彼らは、子供のケンカ以下の聞くに耐えない罵詈雑言を叫びながら、街頭を練り歩く。
匿名が基本で相手が見えないインターネット空間は、攻撃的・暴力的な言葉で溢れているが、そうしたネット上での言語感覚が、そのまま現実の世界に持ち込まれてしまったように思える。

在特会が在日コリアンに付与された「在日特権」として指摘しているのは、
①特別永住資格
②朝鮮学校補助金交付
③生活保護優遇
④通名制度
だそうだ。
しかしながら、在特会が主張する「在日特権」なるものは、「一つひとつ事実を検証すれば、『特権』というよりは、在特会やその賛同者が従来の制度を思いっきり拡大解釈した上で、彼ら独自の見解や根拠の怪しいデータを付け加えた、いわば彼らが後から『発見』したもの」のようだ。
「真実に目覚めた」「真実を知った」など、在特会に関係する者は「真実」という言葉を好んで使うらしい。「新聞、雑誌、テレビによって隠蔽されてきた真実が、ネットの力によってはじめて世の中に知られることになった」というのである。インターネットは既存メディアよりも情報量が豊富な分、情報の確度や価値において玉石混交だ。ネットから自分たちに都合のよい情報ばかり吸収しているのだろう。

「理不尽で、荒々しい力で、彼らを駆り立ててやまないものは何なのか。彼らが口にする憎悪の源には何があるのか。いったい彼らは、かくも過激な在特会の活動のどこに魅了されているのか。」

在特会やその関係者、既存の保守運動家、在日コリアン等への1年半にわたる取材を通して、筆者はこの問いに答えようとする。

街頭で憎悪を剥き出しにして荒々しく叫ぶ在特会のメンバーを取材するために、身構えて一人ひとりに会ってみると、筆者は拍子抜けの連続だったという。とても真面目で礼義正しい人物が多いのに驚いたということだ。

在特会を至近距離から見てきた人物が言う。
「連中は社会に復讐してるんと違いますか?私が知っている限り、みんな何らかの被害者意識を抱えている。その憤りを、とりあえず在日などにぶつけているように感じるんだな」
現代社会で「うまくいかない人たち」が、本来なら自分たちが享受するはずのものを「奪われている」という喪失感、被害者意識を持っている。これが外国人嫌いと結びつくと、外国人を略奪者にたとえるシンプルな極論が一定程度の説得力を持ってしまうのではないかと筆者は分析している。

社会への不満を持つ者の馬鹿げた非常識な行動だと斬り捨てるのは簡単である。その意味である在日コリアンの次の言葉が印象的だ。
「でもね、本当に怖いのは、在特会じゃないような気もするんです。」「在特会ってわかりやすいですよね。腹も立つし、悲しくもなるんやけど、あまりにわかりやすいだけに恐怖を感じることはないんです。僕が怖いのは、その在特会をネットとかで賞賛している、僕の目に映らない人たちなんです。いっぱい、おるんやろうなあと思うと、正直つらくてしかたないんですよ」

在特会とは何かと聞かれるたびに、筆者はこう答えるという。
「あなたの隣人ですよ。
人の良いオッチャンや、優しそうなオバハンや、礼義正しい若者の心のなかに潜む小さな憎悪が、在特会をつくりあげ、そして育てている。街頭で叫んでいる連中は、その上澄みにすぎない。彼ら彼女らの足元には複雑に絡み合う憎悪の地下茎が広がっているのだ。」