「小さな政府」の落とし穴 | 読書雑記

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「小さな政府」の落とし穴―痛みなき財政再建路線は危険だ/井堀 利宏
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 井堀利宏東京大学大学院教授によって書かれた財政改革に関する一般向けの本である。


 社会保険庁による年金記録の記入漏れ、大阪市の過剰な福利厚生など、中央・地方政府の不祥事は後を絶たず、公務員に対する信頼は大きく崩れている。井堀教授によれば、多くの国民は、今の政府は非効率で、無駄な歳出がまだたくさんあり、サービスの質を落とさなくても歳出を削れるはずだと考えている。こうした無駄な歳出に対する批判は、わかりやすい反面、無駄さえなくせば、増税しなくても、必要な経費は賄えるだろうという甘い期待を国民に持たせてしまう弊害があるが、増税しないで財政危機が解消するほど、日本の財政状況は甘くないと指摘している。


 歳入確保よりも歳出削減を優先する小泉改革の手法が正しかったとしても、そろそろ増税等の歳入面も含めた一体的な財政再建を具体的に議論すべき時期であり、増税を伴う財政改革に対して有権者あるいは納税者の理解・支持をどのように得るか、公平で透明な財政運営により結果として国民全体にとっても有益な形で税金が使われるような財政改革の手法はあるか、なんらかの形で有権者が税金の使い道について関与できる仕組みはあるのか、といった点が本書の問題意識である。


 本書のキーワードは、「受益と負担のリンク」である。日本の政府規模は、歳出面ではそれなりの規模であるのに対して税負担面では相当小さな規模であることが、受益と負担の乖離をもたらし、その乖離が巨額の財政赤字を生んでいる。「受益と負担のリンク」を回復させてこそ、「大きな政府」か「小さな政府」かという政府規模に関する冷静な議論が可能であるとしている。

 北欧三ヵ国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)の国民が25%もの消費税率を受け入れているのも、「受益と負担のリンク」が確立されているため、わが国で想像されているよりも国民の負担感が少ないからだという。


 そして、「受益と負担のリンク」を回復し効率的な政府を実現するには、公共事業評価、納税者番号制度、納税者投票、予算制度改革等の制度改革を行ったうえで、結論的には、消費税率10%を上限とする政府規模を提言している。