ドミノ | 読書雑記

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読書日記。

ほとんど自分のためのものです。

ドミノ (角川文庫)/恩田 陸
¥580
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 締切直前に契約書の到着を待つピリピリムードのオフィス。

 競争率の高い子役のオーディション会場。

 自分を捨てようとしている男に復讐を企図する女。

 俳句仲間との待ち合わせ場所にたどり着けない老人。

 ミステリー同好会の次期幹事長の座を争う大学生。


 およそ関連のない複数の物語が真夏の東京駅を舞台に「ドミノ」のように連鎖していくドタバタコメディである。

 筆者は、わずか文庫本376ページの中で、交錯する多くの場面設定と登場人物を巧みに操る。個々の物語が進行するにつれて相互の関係性と加速度を増していき、最後一気に終結する様はなかなか読んでいて気持ちが良い。


 一日に何十万人も行き交う東京駅で、すれ違う人々のほとんどとはまず関わりあうことがない。それがちょっとした偶然で人と人との関係が生まれ、物語を結びつける手段となっている。途中、結びつきかけた物語は何度もそのつながりを失いそうになる。しかし、あるときは登場人物が追いかけ追いかけられ、探し探され、またあるときは再度の偶然により、物語は結びつきを取り戻す。

 

 一生に出会う人はほんの一握り。ちょっとした偶然あるいは必然により、いろんな濃淡を持って、人は関係していき、関係しなくなっていく。そんなことを感じつつ、楽しめた一冊だった。