環境エネルギー革命 | 読書雑記

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環境エネルギー革命/金子 勝/アンドリュー デヴィット
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 泥沼化するイラク情勢、高騰するガソリン価格、そして、この夏の猛暑と、いやがうえにも地球温暖化やエネルギー政策に皆の関心が高まるタイムリーな時期に、この本が出た。


 冷戦後のアメリカ一人勝ち状況は、イラク戦争で大きく揺れ動いているようだ。イラク戦争の失敗によって「国際政治の多極化傾向」が進んでいる。ブッシュ政権内のネオコン勢力が弱体化し、ブッシュ政権と共にイラク政策を推し進めてきたブレア内閣も退陣を余儀なくされ、中国、ロシア、中央アジア諸国からなる上海協力機構は「単なる資源・経済協力関係から軍事・外交面での協力関係を強め」、「欧州ではこれに対抗しようとする動きが強まっている」なかで、日本政府は、イラク政策や環境・エネルギー政策において「一つ前の米国」を支持し、「国際的に孤立状況にある」という。


 地球温暖化の問題や環境・エネルギー問題がこれほどまでに国際政治の中心的課題になっているとは恥ずかしながら認識が甘かった。世界の政策的対抗軸は、冷戦時代は、「大きな政府」VS「小さな政府」であり、冷戦後は、「クリントン米政権、ブレア英政権、シュレーダー独政権と、レーガン・サッチャーの新自由主義路線に対抗する『第三の道』が登場」し、イラク戦争開戦前までは、「ネオコン型新自由主義」VS「第三の道」が国際政治をとらえる大きな枠組みであった。

 しかし、「今や世界では、環境エネルギー政策が新たな政策的対抗軸としてますます重要性を帯びてきて」おり、そこでは、「小さな政府」か「大きな政府」か、保守か左派か等の単純な枠組みでは国際政治を捉えられないようである。


 本書は、金子勝とアンドリュー・デウィットの共著で、筆者たちはこれまでにも、「反ブッシュイズムⅠ~Ⅲ」(岩波ブックレット)等で、反ブッシュやイラク戦争批判の論陣をひいている。そして、今回は、ブッシュやアメリカ社会とは切っても切れない関係にある石油資源の問題、ひいては環境・エネルギー問題を切り口に論じられ、ブッシュ政権やそれに盲目的に追随する小泉・安倍政権がいかに歴史の流れに逆行し、国際社会が取り組む地球温暖化防止への努力を妨害しようとしているかがよくわかる。


 ブッシュ型環境政策の問題点として、環境派が温室効果ガスの影響を過大評価しているという姿勢や、総量規制や具体的な数値目標を持ち込ませないことの他に、代替エネルギーとして食料を原料としたバイオエタノールの推進も指摘されている。バイオエタノールは環境負荷の少ないエネルギーとして地球温暖化対策の一環としてとりあげられる向きがあるが、「トウモロコシや大豆の値段を急騰させ」る等、世界の食糧需給に悪影響を与えていることもはじめて知った。


 また、日本は、京都議定書の削減目標の達成が危ういそうである。「日本は京都議定書の下、2008年から2012年までの5年間、温室効果ガスを基準年(CO2は1990年度)比で6%削減する義務を負」い、政府もそれを実現する国民的プロジェクトとして「チーム・マイナス6%」などと言っているが、2005年度において、基準年の排出量から既に約8.1%増加しており、実質的には、2008年から5年間で約14%削減しなければならないとのことである。


 環境エネルギー革命が、地球環境問題や国際政治を読み解くキーワードとなることを再認識した。さらには、この革命により世界経済の「長期停滞を脱する道」を開くことにつながるとの主張など、全般にわたり非常に刺激的な本であった。