レクリエーション | ゴミブログ season7

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日々の事を書く

おれの働いている場所では、3時のおやつの前にレクリエーションという、頭を使ったり体を使ったりする催し物をやる。頭を使ったり体を使ったりするのは認知症予防の効果があるので、遊びといえども真面目に取り組まなければ老人どもに明日はない。


おれと同期の櫻田くんがその日のレクを任された。と言っても担当するのは1テーブルだけ。テーブルごとにだいたい4人くらいの老人があてがわれている。おれ達の担当するテーブルには、難聴で多少認知症のきらいがある久保田さん、難聴でそれなりに認知症のきらいがある宮下さん、難聴ではないががっつり認知症のきらいがある小島さん、難聴でもないし認知症のきらいもない、大正生まれなのにまともな会話ができる岩佐さんが座っている。みんないい婆さんだ。


実際にどんなことをやるのかというと、レクに関しては一日の長がある、どこの国出身だかわからない蔵ウ女さんという職員が考えてくれていた。関係ないが、蔵ウ女さんを見ると前の職場のセッちゃんを思い出してしまう。セッちゃんはいつも元気いっぱいで、みんなから好かれていて、股間を汗拭きシートで拭いて悶絶していたおれに「もっと拭け」と囃し立てるような女性だった。


蔵ウ女さんの考えたレク、それは「ペットボトルのキャップを積み重ねてピラミッド建設」だった。「ペットボトルのキャップを積み重ねてピラミッド建設」は、簡単にいうとペットボトルのキャップをいくつも積み重ねてピラミッドを建設するという遊びだった。蔵ウ女さんは「紙コップを積み重ねてピラミッド建設」の考案者でもある。ひょっとしたらピラミッドの持つ謎に一枚噛んでいるかもしれない。顔もどことなくアラブ系だ。


テーブルにキャップを広げ、ルール説明をし、首尾よくゲームの開始まで漕ぎ着けたのだが、喧嘩し出してたいへんだった。


このゲームは1人1個ずつ順番にキャップを置いてピラミッドを形成していくというルールなのだが、岩佐さんが置こうとしては「順番が違う!」と久保田さんが怒り、久保田さんが置こうとしては「順番が違う!」と宮下さんが怒り、小島さんが置こうとしては「順番が違う!」とおれが怒った。大人なのは大正生まれの岩佐さんだけで、彼女は複雑なルールに翻弄される周囲の人間を微笑ましく思っていた。


遠くで幡谷さんという婆さんが「もう殺し合いはたくさん!」と叫び出したので、おれ達は別のテーブルに移って別のゲームをやることにした。蔵ウ女さんではなくおれの考えた「ペットボトルのキャップでボウリング」をやらせてみたのだが、終わったあとに風間さんという婆さんが「つまんない!」と周りに聞こえる声で言った。


娯楽の少ない時代に生まれたババアをも発狂させる遊びを考えてしまった。