出展:http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/c1fc37ce07869ee329e8f6db88d5b559/


●世界に先行するEUの温暖化対策案

 EU(欧州連合)は今年1月に、ポスト京都議定書(2013~20年)での画期的な温暖化対策包括案を発表しました。この対策案は温室効果ガスをめぐる世界の流れを大きく変えていくでしょう。


 包括案には3つの注目するべき政策があります。第一に、2020年までに1990年比で温室効果ガスを20パーセント削減するとの目標の下で、各国ごとの温室効果ガスを定めました。第二の柱として、再生可能エネルギー(太陽光や風力発電など)の利用拡大を、各国に数値目標を定める形で設定しています。


 そして最も注目すべきは、排出権の有償化です。2012年までは排出権は過去の実績を参考に対象企業に「無償」で配分され、実際の排出量がそれを上回れば罰金が科せられる仕組みになっています。しかし、13年からの対策案では、企業が排出枠を入札によって

「有償」で購入しなければなりません。過不足が出た場合、欧州・排出量取引制度の枠内で調整することになります。


 つまり排出権が「タダ」で手に入る時代は、終わりそうです。高値だから排出権を買いたくない、あるいは買えないでは、企業は活動できなくなります。温室効果ガスの排出権の量が企業の経済活動を決める時代、すなわち「CO2本位制」の時代が到来するのです。


 包括案がもたらす規制対象企業の新たな負担はEU全体で、年間当たり最高600億ユーロ(約9兆円)になるとの試算があります。その負担額を払えない企業の中には、市場から退出を迫られるものも出てくるでしょう。


 だが、否定的な面ばかりではありません。有償化がもたらす国家の収入増加分が、産業構造を戦略的に組み替える財源にもなります。また企業の変化をうながして温室効果ガスをあまり排出しない「低炭素経済」への移行を促進します。


 ヨーロッパに広がる温暖化への危機感を考えれば、この対策案の政策の多くが実現する可能性が高いと、私は考えています。そして、それは日本にとって遠い世界の話ではありません。温暖化問題での対応が遅れた国の製品に、EUは貿易規制を行うことも検討しています。


●企業経営の「今そこにある」リスク

 温暖化防止は、「地球環境を破壊しない」という次世代への責任という次元だけではありません。別の側面として、どの国が21世紀の環境外交、そして温暖化をめぐる国際政治で主導権を握るのかという覇権争いの性格もあるのです。これは各国の政府だけでなく、それぞれの産業でも同じことが言えます。


 EUの対策案の驚くべき点は、「世界のルールはわれわれが作る」との意志の下に、50年先を見据えたその戦略の長期的視点にあります。そして、政治が長期の方向性を示せば示すほど、ビジネスは動きやすくなるでしょう。EU域内の企業は、ある意味では幸せとも言えます。政治のサポートの下で、温室効果ガス削減であれ、再生エネルギーへの投資であれ、「低炭素経済」につながる事業に安心して取り組めるからです。


 ところが、日本では政治が進むべき方向を政治が示していません。そして日本では、温室効果ガスの削減を各業界が設定した目標に基づいて行う「自主規制論」が依然として根強く、排出枠の設定に反対する意見が政府、産業界の主流となっています。そして、企業ごとの削減の義務付けについて、断固反対しています。


 先行するEUだけでなくアメリカの大手企業も含め、先進工業国の産業界の流れは温室効果ガスの排出量規制に大きく傾いています。その中で日本の「自主規制」はいつまで持ちこたえられるのでしょうか。


 日本も、削減義務まで踏み込んだ規制を行う時期が来たのではないでしょうか。産業界も具体的政策作りに積極的に参加する方が得策であると、私は考えます。「海図なき」まま国際競争という荒海で航行する日本の企業は、無謀といっては言いすぎでしょうか。


 温暖化対策を誤れば企業の将来はありません。温暖化の被害そのものに加え、前倒しで始まる世界規模の規制に適応できなくなるためです。そして温室効果ガス削減に関心を向ける消費者の動きにもついていけないことになります。


 ビジネスの世界では、いかに早く社会の変化の方向性を読み、他社より早く動くかで勝負が決まります。皆が動くまで待つことは、経営上のリスクなのです。日本の個別企業やビジネスパーソンは、既に始まっている「温室効果ガスの有償化」という世界の流れに乗り遅れてはいけません。対応するために、残された時間はあまりありません。



出展:http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/af970e7c1d625925c67386ad2dffd1e4/



●「CO2本位制」がビジネスシーンを変える

 「CO2(二酸化炭素)を出すのは悪いことだ。減らすのは良いことだ」。

 地球温暖化が危機的な状況に向かう中で、新しい価値観が生まれました。この明瞭かつ単純な座標軸が地球社会のあらゆる場所で、そして全ての局面で適用されることになります。21世紀の人々の生き方、そして当然にビジネスのあり方を根本から変えていきます。


 CO2を増やすことは悪いことですから、そんな企業は消費者から嫌われ、資本市場からも敬遠されます。一方、CO2削減に取り組む企業は歓迎されます。言うまでもなく、そこで働く人々の人生をも変えていくことになります。この現実を、私は6回の連載でビジネスパーソンの皆さんとともに、考えたいと思います。


 毎日の情報の洪水の中で、表面的な出来事ばかりを追っているとなかなか気付かないことがあります。その一つが「21世紀の国際社会を運営するルール作りが進行中」という事です。その中心にあるのが「地球温暖化問題」です。いま世界で多くの人々が「CO2を減らさなければ、未来はない」という強烈な危機感を共有し、具体的な行動を始めました。


 私の造語ですが、地球社会はいま「CO2本位制」に入りました。使えるCO2の排出量の大きさが人間活動や経済活動の大きさを決めてしまう時代に入り、人類は地球環境が許す範囲内でしかCO2を排出できなくなりました。かつての「金本位制」の時代には、国家の金の保有高が通貨発行量、ひいては経済の規模を決めました。それと同じように、限られたCO2排出量の下で経済活動が制約を受け、その条件の下で利益やベネフィットを極大化する競争が始まったのです。


 CO2本位制の下では「パラダイムの逆転」が数多く生れます。これまでは「good」だったものが「bad」になります。その一例を示しましょう。「CO2を大気汚染物質とみなす」という判決が、米国連邦最高裁判所で2007年4月に下されました。この訴訟はカリフォルニア州政府などが原告となり、連邦政府に自動車の排気ガスに含まれるCO2を規制すべきだ、と主張した訴訟での判断でした。


 ブッシュ大統領の姿勢だけを見ていると「米国は温暖化対策に後ろ向き」と捉えがちですが、実態は違います。やがて米国ではこの最高裁の判決に沿った動きが活発になります。そうなると自動車産業はもとより、多くのビジネス、更には世界各国にこの判決の影響は及ぶでしょう。


●「ルール」を押し付けられるだけでいいのか

 国際社会をコントロールするためのルールは大国の首脳会談などの表舞台だけで、決まるものではありません。外からは見えない長いプロセスが隠されています。

 世界ではさまざまな分野で、いろいろな会議やセミナーなど、その分野の専門家などが顔を合わせる機会がたくさんあります。そこでお互い顔なじみの人々が「あの問題はどう思う?」と意見交換を始めます。そんなやり取りを何回かするうちに「やはり、あの問題をしっかり議論する必要があるね」となります。


 そうなると「あの問題」についての正式の会議が生まれます。ここまでのプロセスは「アヒルの水かき」のように表面には表れない努力です。こんな水面下での動きが重要で、正式に会議が始まるころには中身は大方固まってしまいます。ですから、「アヒルの水かき」の仲間に入るのか、外されるのかが決定的に重要になります。


 私は国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP・FI)に参加し、世界の金融界の自主的ルール作りや、温暖化防止のための議論やプロセス作りに参加してきました。そこで日本勢のルール作りの場での存在感の無さを見てきました。恐らく他の分野でもそうでしょう。温暖化問題では、各国政府やグローバル企業が、ルール作りの主導権争いを始めています。しかし、日本は政府も産業界も存在感を示していません。


 世界の中で日本の利害をはっきりといい、世界にも貢献する姿勢もちゃんと示す。それには、早い段階からの「アヒルの水かき」をいとわぬ志とガッツが必要です。ビジネスパーソンに訴えたいのは、自発的にルール作りに取り組み、世界の議論に参加してほしい、ということです。少なくとも、そういった視点から世界の動きを見て、その動きに敏感であってほしいのです。


 温暖化への対応は「次の世代と地球を守る」という倫理上の責務です。それに加えて、ビジネスパーソン個人にとっても、生き方とキャリア形成での「将来」を左右する重要な問題なのです。


 スズキは、電気自動車(EV)の開発に着手した。軽自動車がベースで、小型・高性能のリチウムイオン二次電池を搭載する。発売時期は未定だが、燃料高が長期化する中で、三菱自動車や富士重工業が投入するEVの売れ行きをにらみ、即座に追撃できる体制を整えておく。同社がEVを開発するのは、2003年に販売を打ち切った「エブリイEV」以来となる。

 現在、複数の二次電池メーカーと協議し、製品評価や性能要件などを詰めている。同社は過去に「アルトEV」「エブリイEV」を開発・販売した経験を持つほか、03年1月には軽自動車初のハイブリッド車「ツイン」も開発した。直流電力を交流に変換するインバーターや駆動モーター、制御などの技術は一定の蓄積がある。



<コメント>電気自動車の老舗「スズキ自動車」。過去の鉛バッテリーのトラウマから早く抜け出して、世界に冠たる電気自動車を開発して欲しいところだ。




新型二次電池

出展:
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080423/299888/

写真●東芝の新型リチウムイオン電池「SCiB」
 電気自動車の普及の鍵を握る産業用二次電池に新製品が登場した。東芝が3月に量産を開始した新型リチウムイオン電池「SCiB」である。


 SCiBは急速充電が可能で、わずか5分間で電池容量を90%以上にできる。さらに、急速充電と放電を3000回繰り返しても、電池容量の減少はわずか 10%未満。通常の充電であれば、1万回以上使える。東芝SCiB事業推進統括部の河津象司統括部長は、「通常のリチウムイオン電池は500回程度で性能が劣化し、急激に容量が小さくなる。SCiBの特長は、急速充電に加え充放電を繰り返しても長寿命なこと」と説明する。


表●東芝「SCiB」の長寿命性能
充放電を3000回繰り返しても電池の容量は使用開始時の90%を超える。一般的なリチウムイオン電池は数百回で容量が下がってしまう。

 ターゲットは、電気自動車やハイブリッド車、電動バイク、非常用電源、風力発電用などの産業用。東芝は2015年までに同市場が1兆円規模になると予測しており、売上高1000億円、シェア10%を目標に掲げる。3月に長野県の佐久工場で月産15万セル(電極と電解質からなる電池の最小構造)の量産ラインを稼働させた。価格は既存のリチウムイオン電池より割高になりそうだ。


 急速充電と長寿命を生み出したのは、負極材料にチタン酸リチウムを採用したことが大きい。リチウムイオン電池の負極は炭素が一般的で、チタン酸リチウムを使う製品はSCiBが初だという。正極には、携帯電話用電池などで一般的なコバルト酸リチウムを採用した。


負極にチタン酸リチウムを採用組み合わせの妙が生んだ安全性
 チタン酸リチウムを採用したきっかけは、炭素の電極よりも急速充電に向くことに気付いたからだ。炭素を使ったリチウムイオン電池を急速充電しようとすると、電極付近にリチウム金属が析出、絶縁膜(セパレータ)を突き破り電池内部でショートし発火の原因になる。チタン酸リチウムなら、急速充電してもリチウム金属は析出しない。炭素を使うものに比べてセル当たりの電圧が低いのが欠点だが、急速充電を優先して、あえて負極に新材料を採用した。


 一方、実使用を考えるとセルを小型化できるメリットもある。二次電池は、電池がフルの状態からある程度放電するまでは、高出力を維持できる。だが、その後、じりじりと出力は下がる。SCiBは充電状態を問わず、高出力の電気を出し入れできる。炭素を使う電池と比べると、高出力を確保できる幅が広いため、その分容積を小さくすることが可能だ。


 材料の組み合わせが、高い安全性も生んだ。負極材料を変えたことで、電極を浸す電解液を引火点の高いものに変えることができた。セパレータも耐熱性の高いものを採用。その結果、外部からセルが破壊するほどの衝撃を加えても発火しない電池に仕上がった。通常のリチウムイオン電池なら破壊すれば1秒以下で放電し発火につながる。だがSCiBは完全に放電するのに15分かかるため発火しないという。新電池が、実際の使用現場でポテンシャルを十分に発揮できるか注目したい。



<私のコメント>

リチウムイオン電池が高価なのは、セル自体もそうだが、電池制御装置(BMS)が高い事も見逃してはいけない。その為に安いバッテリーを造るにはセル自体の大型化が必要ではないでしょうか?





(出展) http://www.ohmynews.co.jp/news/20080426/24055


 「近い将来、間違いなく電気自動車(EV)の時代が来る」などと言われはじめてから何年経ったでしょうか。1990年代には日本のほぼすべてのメーカーが熱心に開発に取り組み、大変な盛り上がりを見せていたものでした。

 ところが今では、時折どこかの大学がとても実用化できそうもないEVを開発し、それをマスコミが報道するのを見かけるくらいです。


未来の車(撮影:高根文隆) 有限責任中間法人電動車両普及センターに問い合わせてみると「トヨタさんの『RAV4』、日産さんの『ハイパーミニ』など、各社ほんの数年前まではEVを生産しておられましたが、いまは、皆無だと思いますよ」

とのことでした。


 つまり、日本の大手自動車メーカーは、実際に公道を走れるEV実用車からは手を引いてしまっているのです。なにしろ、現在市場に出ているEVの実用車は、原動機付自転車を除くと、軽自動車のみのわずか5種類。手がけているのは中小企業ばかりです。


 さらに、電動車両普及センターのウェブサイトから電気自動車保有台数統計を見ると驚きます。EV保有台数が急速に減少(原動機付自転車を除く)しているのです。2001年(平成13年)から2006年(平成18年)で、1260台から505台へと半減以上です。購入しようにも、上市されているめぼしいEVがほとんどないのですから、当然なのかもしれません。


 しかし、最近、オートイーブィジャパンというEVメーカーを訪れる機会があり、思いのほか進化しているEVの現状と、世界的に見た日本のEV普及への取り組みの圧倒的な遅れを実感しました。


 例えば、同社がイタリア車をベースに開発に成功し、昨(2007)年発売した「ジラソーレ」(2人乗り)というEVを見てみましょう。最高時速は65キロ。いわゆる「ゼロヨン」は3.1秒と2000ccクラスのガソリン車と同等レベル。家庭のコンセントで5、6時間充電して、120キロの走行が可能。手軽な街乗りのための車としては十分な性能です。


 価格は260万円。かなり高額にも思えますが、「エネルギー自動車導入補助金」の対象車両になるので、最大77万円の補助金が交付されます。さらに自治体によっては上乗せの補助金を交付しているところもあり、そうなると、通常の軽自動車と変わらない価格で購入できます。また、燃費は1キロ1円ちょっとと激安なので、多少割高でもすぐに元はとれてしまいます。


イタリアでは警察車両としても採用

 しかし、そんな状況のなかでも、ジラソーレをはじめ既存のEV実用車はかなり苦戦しているようです。もちろん大手メーカーのような派手な宣伝広告を打てないこともありますが、何より大きいのは有力なお得意先と考えていた地方自治体など行政機関からの需要がさっぱりなことです。どうも行政には、1980~90年代に大手メーカーの高額な電気自動車を大量に購入して、その使い勝手の悪さに苦労したトラウマが残っているようです。


 一般自動車として国土交通省に認知されるためには、安全性やエンジン性能、耐久性など、資金力のない中小企業にとって極めて高いハードルを超えなければならなりません。懸命の努力で、そのハードルを乗り越えたEVが、まったくの孤立無援では悲しすぎるのではないでしょうか。ちなみに、ジラソーレは母国イタリアでは警察車両としても採用されているようです。


2人乗り。公道を走れます(撮影:高根文隆) 「行政は環境環境と、ただ、かけ声をあげるだけでなく、率先垂範してEVを導入すべきでは……」とオートイーブィジャパンの高岡祥郎社長は主張しています。


 中小メーカーの電気自動車への取り組みは、「儲からないことにはあまり関心がない」大手メーカーを補完するという社会的意義もあります。日本が、地球温暖化など環境問題に本気で取り組む気があるなら、このような事業を手厚く支援する必要があるのではないでしょうか。



<私のコメント>

結局、日本の大手電気自動車会社はエンジンに多額の開発費を出しているので、電気自動車にするのはかなり抵抗があるのではないでしょうか?




日米逆転か、自動車向け電池を巡る攻防

自動車向けリチウムイオン電池は開発競争に勝利すると思われていたが、今は戦国時代

出典:http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20080108/144405/

最近まで、自動車向けリチウムイオン電池はパナソニック EVエナジーや三洋電機が開発競争に勝利すると思われていたが、今は戦国時代

2008年1月15日 火曜日

GMが開発中のリチウム電池採用のハイブリットカー「シボレー・ボルト」


◆リチウムイオン電池の開発最前線に異変 1月15日 白水徳彦

2007年の自動車産業におけるトップニュースの1つにトヨタ自動車が安全性の問題を理由に、次世代技術として注目されるリチウムイオン電池のハイブリッド車搭載を少なくとも2年遅らせるという苦渋の決断をしたことが挙げられる。

 それと並んで大きなニュースだったのが、米ゼネラル・モーターズ(GM)が現在、開発中のハイブリッド車に日本製リチウムイオン電池の採用を見送ったことだ。

GMはその代わり米国製もしくは韓国製のリチウムイオン電池を搭載し、フル充電で10マイル(約16キロ)電気走行ができる「プラグインハイブリッド」を早ければ2009年までに投入するという。

 そして40マイル(約64キロ)の電気走行が可能なプラグインハイブリッドを2010年までに投入するという。

リチウムイオン電池搭載でGMがトヨタに先んじる可能性
 この2つの決定は何を意味するのか。

 トヨタにとってリチウムイオン電池の導入遅延は、ハイブリッド戦略でトップを独走してきたその地位が脅かされていることを意味する。トヨタがもたつく間に、ハイブリッドの技術開発に力を入れ始めた GMがリチウムイオン電池の導入では先を越す可能性が出てきたからだ。

 さらにこれらの出来事を国単位で見ると、先端バッテリー技術の開発でこれまで世界をリードしてきた日本が米国に逆転される可能性が出てきたとも言える。

 リチウムイオン電池は、小型でも高出力を発揮できるのが特徴だ。この高エネルギー密度を誇る電池の先駆的な研究は、もともとそのほとんどが欧米で行われてきた。欧米に後れを取っていたにもかかわらず、日本がリチウムイオン電池市場で世界トップの座を築けたのは、研究室で開発された欧米の技術の実用化にいち早く着手したからだ。

 欧米勢がリチウムイオン電池の事業化に対する投資に躊躇するのを尻目に、ソニーを皮切りに三洋電機、松下電池工業などの日本企業は1990年代前半に実用化のための技術や製造ノウハウを確立、以来、生産設備の積極投資に踏み切ると同時に市場開拓に力を入れてきた。 

 おかげで今や世界で販売される携帯電話やノートパソコン向けのリチウムイオン電池は日本製コバルト酸リチウムイオン電池が圧倒的なシェアを誇る。米国など競争相手どころか、日本製リチウム電池を買い続けてくれるお得意様に過ぎない存在だ。少なくとも今まではそうだった。

 ところが、トヨタがリチウムイオン電池の次世代ハイブリッド車への搭載を延ばしたことで、この構造に変化が生じ始めていることが明かとなった。きっかけは、2006年から2007年にかけてノートパソコンや携帯電話用のリチウムイオン電池が大量にリコールされたことにある。限られた件数ではあるが、オーバーヒートし、火災が発生したケースが問題視されリコールされた。

 確かに、現在リチウムイオン電池の主流となっているコバルト酸リチウムイオン電池はオーバーヒートしやすく、電池の中に不純物が入っていたり、事故で電池自体がつぶれたりすると、ショートして「熱暴走」と呼ばれる爆発につながる危険があることが分かっている。だが、そうだとしても実際に引火したり、爆発する可能性は極めて小さいという。

お流れとなった次世代「プリウス」への搭載
 トヨタは、日本製コバルト酸リチウムイオン電池の技術を進化させた自動車用リチウムイオン電池を開発し、2008年後半に発売を予定していた次世代「プリウス」に搭載しようと計画していた。実現すれば、既に低燃費である「プリウス」の効率性をさらに向上させ、他社の追随を許さないクルマに仕上がるはずだった。

しかし、自社が採用を検討しているリチウムイオン電池が基本的にはコバルト酸系であることから事態を重視、安全性を確認できるまで採用を遅らせることにしたのである。(中略)

今や電池は日米、国を挙げての開発競争に突入
 リチウムイオン電池開発で有望な米国企業は A123システムズだけではない。そのほかにも、ネバダ州リノに本社を置くオルトエアー・ナノテクノロジーズ、テキサス州オースティンに本社を置くベイランスなども注目を集めている。

 こうした新興企業がここへ来て台頭しているのは、米エネルギー省(Department of Energy)が中心となって研究資金を国家プロジェクトを通して供給、育ててきた背景がある。

 もちろん、日本も負けてはいない。 経済産業省は、もともと太陽パネルや風力発電に分かれて動いていた先端電池プロジェクトを2006年、「次世代蓄電システム実用化戦略的技術開発プロジェクト」という1つの国家プロジェクトに統合した。このプロジェクトには49億円の予算がついた。A123 システムズなどの新興勢力を育成する米国政府の動きに対して、ある経済産業省の幹部は「どうぞやってくださいという感じ。まあお手並み拝見というところ」と平静を装う。

 これに対して、米国の産業政策の日本に対する対抗意識は強烈だ。A123 システムズのある経営幹部の言葉を借りれば、「米政府は、日本企業と対抗し、米デトロイト3(GM 、フォード・モーター、クライスラー)を支援する気があるなら、米国企業でなくても韓国企業でもフランス企業でも誰にでも資金援助は拒まないという姿勢だ」という。

 ほんの最近まで、自動車向けリチウムイオン電池はパナソニック EVエナジーや三洋電機が開発競争に勝利すると思われていた。だが、今や勝負は全く見えなくなっている、と言っていい。誰が勝ってもおかしくない状況にあり、当面は複数の勝者、つまり複数の種類のリチウムイオン電池メーカーが用途に応じて市場に存在する「戦国時代」の様相を呈するだろう、というのが米国の関係者の一致した見方だ。
 
 今年はリチウムイオン電池の開発最前線から目が離せない年になる。