マリス・ヤンソンス&ベルリンフィル(2016年3月、ドイツ・ベルリン) | クラシック音楽と食べ物と。。。

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マリス・ヤンスンスはラトビア出身の世界的指揮者で、コンセルトヘボウ管弦楽団バイエルン放送交響楽団を始め世界のトップクラスのオーケストラで首席指揮者などを務めています。2019年76歳でこの世を去りますが、今回は生前2016年のベルリンでの演奏会からです。

 

この日は、午後からハンブルクを出発しベルリン駅に着いてから、今週誕生日の友人に何かプレゼントを思い、フリードリッヒ通りにあるギャラリー・ラファイエットへ向かいました。ちょっと買い物をしてから、フィルハーモニーへ向かいます。歩いて20分ほどでしょうか。

 

最初の曲は、

エクトル・ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」

Hector Berlioz: Le Carnaval romain op.9

 

ベルリオーズと言えば、まず頭に浮かぶのは幻想交響曲。その8年後、彫刻家「ベンヴェヌート・チェッリーニ」の生涯に心を打たれたベルリオーズはオペラ「ベンヴェヌート・チェッリーニ」を書きますが、これが散々な結果に終わります。リハーサル不足、オペラ座との不和、音楽業界関係者との不和、時代より先を行き過ぎていたなど、様々な理由があるようです。この曲に愛着があったベルリオーズがいくつかの主題を用いて作ったのが「ローマの謝肉祭」です。イタリア民俗舞踊のサルタレロのリズムに乗った、とっても陽気な曲です。1844年に作曲され、同年2月3日パリのサル・エルスベルリオーズ自身の指揮で初演されています。こちらは大盛況だったようです。近代管弦楽法の父と言われるベルリオーズらしい、素晴らしいオーケストレーションです。ベルリンフィルでの初演は、1883年4月5日カール・クリントヴォルト(Karl Klindworth)の指揮で演奏されたものです。

 

2曲目は、

アンリ・デュティユー:チェロ協奏曲 遥かなる遠い国へ

Henri Dutilleux : Tout un monde lointain..., Konzert für Violincello und Oechester

 

アンリ・デュティユーは、1916年フランス西部のアンジェで生まれ、パリ音楽院で学びます。20世紀後半のフランスを代表する作曲家の一人で、エコールノルマルパリ音楽院でも教えていました。2013年に97歳で亡くなっています。同時代のどの音楽家のスタイルにも流されず、一方、伝統的なフランス音楽の継承者とみなされることも嫌い、独特の世界を作っています。アンリ・デュティユーの曽祖父は画家でドラクロワとも親交があったようで、曽祖父やドラクロワの作品が残されていたようです。そういった環境も彼の音楽に影響を与えているのでしょうか。1970年に作曲されたこの曲は、チェリスト ロストロポーヴィチのために書かれた曲です。

1. Enigme(エニグマ/謎)
2. Regard(ルガール/眼差し)
3. Houles(ウレス/大波)
4. Miroirs(ミロワール/鏡)
5. Hymne(イムン/賛歌)

の5つの楽章からなっており、ボードレールの詩からインスピレーションを受けているようです。

1970年7月25日エクサン・プロヴァンス音楽祭で、ロストロポーヴィチのチェロ、セルジュ・ボド指揮、パリ管弦楽団の演奏で初演されています。ベルリンフィルでの初演は、1981年12月19日ハンス・ツェンダー指揮、ヴォルフガンフ・ベッチャーのチェロで行われています。

 

今回のチェロは、トルルス・モルク(Truls Mørk)。ノルウェー出身のチェリストで、現代の名手の一人です。

この人、本当にでかい!!そして、なんとも渋いチェロでした。アンコールも1曲弾いてくれました。J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調 BWV1008よりサラバンド。

 

三曲目は、

ディミトリ・ショスタコービィチ:交響曲第10番

Dmitri Shostakovich: Symphonie Nr. 10 e-Moll op.93

 

8番、9番で、ソビエト当局、スターリンの怒りを買ったショスタコーヴィチは、その後当局の意向に沿った作曲を続けます。当時は、当局に目を付けられると、捉えられて殺されてしまうような世の中だったんですよね。そして、スターリンが亡くなり、「雪解けの時代」に発表されたのが、この10番です。凍てつくシベリアの大地を思われる第一楽章、とてもご機嫌な(ある面暴れまわる)第二楽章、なんだか不気味漂う第三楽章、そして第四楽章では盛り上がりに盛り上がって終わります。第二楽章はショスタコーヴィチ自身が「スターリンの肖像」と言っているようで、スターリンが生きていた、すさまじい時代を表してしているようです。初演は、1953年12月17日エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団(現在のサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団)の演奏で行われています。ベルリンフィルでの初演は、1959年3月1日ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮で行われています。

 

今日のコンマスは、ノア・ベンディックス=バルグリー、そしてダニエル・シュタブラーヴァも出演し、1stコンマス3人のうち2人が出演。チェロもマイテ・スーク清水直子、クラリネットのヴェンツェル・フックス、イングリッシュホルンのドミニク・ヴォレンヴェーバーなどオールスターメンバーって感じでした。現代のショスタコーヴィチ指揮者としても世界トップクラスのマリス・ヤンソンスの10番、素晴らしい演奏でした。

 

全部の演奏が終わったのが21時15分くらいで、このままではハンブルクまで帰り着けなくなるため、泣く泣く拍手の途中で退席。なんとかベルリン中央駅発ハンブルク行き最終列車に乗れました。