グリゴリー・ソコロフ リサイタル(2015年4月、ドイツ・ハンブルク) | クラシック音楽と食べ物と。。。

クラシック音楽と食べ物と。。。

ヨーロッパでの生活を振り返るブログ。

今日は、2015年4月のドイツ・ハンブルクからです。

 

グレゴリー・ソコロフ(Grigory Sokolov)は1950年ロシアレニングラード出身のピアニストです。

5歳でピアノの学習をはじめ、16歳の時にはチャイコフスキー国際コンクールで優勝を果たしています。ロンドンフィルコンセルトヘボウニューヨークフィルミュンヘンフィルウィーン交響楽団スカラ座モスクワサンクトペテルブルクのオーケストラとの共演をしてきましたが、現在はソロ活動に専念しているようです。ソコロフは、ヨーロッパの有名なコンサートホールに定期的に出演する数少ないピアニストの一人です。

 

今回のホールは、ライスハレです。

 


バッハ: パルティータ 第1番 BWV 825 変ロ長調


最初の曲は、

バッハ: パルティータ 第1番 BWV 825 変ロ長調

Johann Sebastian Bach: Partita Nr. 1 B-Dur BWV 825

 

BWV825~830パルティータは1726年から1731年に一連のシリーズとして書かれました。平均律クラヴィーア集の雰囲気を持つプレリューデイム(Praeludium)に続き、落ち着いたアルマンド(Allemande)、クーラント(Courente)、曲の真ん中には優雅で、よく計算されたサラバンド(Sarabande)が、その後に伝統的な書法で書かれた2つのメヌエット(Menuet I, Menuet II)、最後には激しい手の交差を伴うピアニスティックなヴィルトーゾ的な要素満載のジーグ(Gigue)が演奏されます。6つのパルティータの中で最も典型的な舞踏組曲の形をとっています。

 


ベートーヴェン: ピアノソナタ第7番 ニ長調


2曲目は、

ベートーヴェン: ピアノソナタ第7番 ニ長調

Ludwig van Beethoven: Sonate Nr. 7 D-Dur op. 10 Nr. 3

 

1796年から1798年に書かれた3つのソナタは、ブロウネ伯爵夫人アンナ・マルガレーテに献呈されています。ブロウネ伯爵オーストリアにおけるロシアの代理人を務め、ベートヴェンのパトロンの一人でしたが、その夫人アンナ・マルガレーテもまたベートヴェンのパトロンの一人でした。プレスト(Presto)、ラルゴ・エ・メスト(Largo e mesto)、メヌエット:アレグロ(Menuetto:Allegro)、ロンド:アレグロ(Rondo:Allegro)の4楽章を持つこの曲は、特に2楽章で多用される減七、半音階が何か深い悲哀を感じさせる曲です。

 


シューベルト: ピアノソナタ第14番 イ短調


休憩を挟んで3曲目は、

シューベルト: ピアノソナタ第14番 イ短調

Franz Schubert: Sonate a-Moll D 784 op. posth. 143

 

1823年に書かれ、シューベルトの3つの創造的な期間の2番目の時期あたります。この曲ではピアニスティック部分は控えめになり、ある面ベートヴェンの後期のソナタにも通じるものがあります。なんとも不気味なアレグロ・ジェスト(Allegro Guisto)、どことなく内省的なアンダンテ(Andante)、そしてこれまでと打って変わるアレグロ・ヴィヴァーチェ(Allegro vivace)の3楽章で構成されています。

 


シューベルト: 楽興の時


最後の曲は、

シューベルト: 楽興の時

Franz Schubert: Moments musicaux D 780 op. 94

 

1823年から1828年にかけて、シューベルトは楽興の時というタイトルを付けた小品を6曲作曲します。

ファンファーレのような両手のオクターブ奏から始まる一番のハ長調:モデラート(C-Dur:Moderato)。哀愁的なメロディーに満ち溢れている2番の変イ長調:アンダンティーノ(As-Dur:Andantino)。「エール・リュス」とも呼ばれる3番は、この6曲の中で最も有名で親しまれている一曲です。バッハプレリュードのような4番の嬰ハ短調:モデラート(cis-Moll:Moderato)。行進曲風の5番のヘ短調:アレグレット・ヴィヴァーチェ(f-Moll:Allegretto vivave)。最終楽章は、変イ長調:アレグレット(As-Dur: Allegretto mit trio)。

 

ソコロフの演奏、ロシア的な力強さ、そしてとってもやわらかい音。少し強めのコントラスト。手を大きく振り上げる所作以外は何か無表情なところから紡ぎだされる素晴らし音楽。音があまりやわらかいので、本当にスタインウェイかと思って休憩のときに舞台の前まで見に行ってしまいました。れっきとしたスタインウェイ。そして、ほぼノーミスの完全な演奏。何かのインタビューの時に、「時間が空いた時は何をされているのですか?」という質問に「ピアノを弾いています」と答えたというソコロフ。今回演奏、どれも素晴らしい演奏だったのですが、その中でもシューベルトは特に素晴らしい演奏でした。

そして、ソコロフのコンサートの楽しみの一つが、アンコールの曲数。今回も6曲弾いてくれましたが、昔誰かが10曲聞いたなどと言ってました。今回のアンコールは、本日のプログラムの中からの抜粋、ショパンのエチュードから何曲か。次から次へと弾いてくれるので、観客も思わずアンコールの拍手してしまうんですよね。既に64歳(当時)ですが、これからも元気に次から次へと繰り出すアンコールに期待です。

 

(今回はなぜかコピーしただけのようなプログラムでした。。。)