聖也が大学を二年で中退したのは、当時の恋人に夢中になっているうちに大事な科目の単位を落としたのが決定的な理由だった。聞けば授業にもろくに出席せず、毎日のようにデートを重ねていたという。これには家族中が落胆した。ところが当の本人だけはしょうがないじゃん、とけろりとしたものだった。それも静江を大いに嘆かせた。
落第、退学の原因となったその女性に、静江は一度だけ会ったことがある。家族が留守にしていると勘違いした聖也が家に連れ込んだところに偶然出くわしたのだった。バツの悪そうにペコリと頭を下げた彼女を笑顔で迎え入れはしたが、一見して---------悪趣味な娘だ----------そう感じたことを覚えている。幼い顔立ちはたしかに愛らしく素足にミニスカートも聖也には十分に魅惑的であったのだろうが、とんがりコーンを指先にはめてきたのかと思うほど長く尖った爪は、その生活が地に着いたものでないことを証明していた。第一、学校に通うのもおろそかになる恋愛の、なにが「本気」だ。愛する男の将来を思うなら、尻を叩いてでも良い成績で学校を卒業させるのが筋だろう。ところが聖也は大学を中退した。中退してケロッとしていた。それどころか「これでいつでも彼女と一緒にいられる」と満足気であった。
そんな二人の関係なんて長く続くものではない-----静江の予感は的中した。
数週間後「聖也、フラれたらしいわよ。思ってたほどリッチじゃなくてつまんなかったから、だってさ。失礼よね」長女の洋子に知らされた時は、正直なところホッとした。とんがりコーンは放っておいても去って行ってくれた。それも「代議士の息子のわりに貧乏」と、金目当てに聖也に近づいていた事実を自ら認めたかっこうで。そんな人間などこっちから願い下げだ。 聖也は大学にはもう戻れないが、なにしろまだ若い。人生をやり直す道なら他にいくらでもある。そのための協力を惜しむ親がいるだろうか。ショックで寝込んだ聖也の絶望とは裏腹に、静江の心は晴れ晴れとしていた。
そして、その晴天もつかの間であった。
つづく
言っときますけど、DAIGOには関係ないよ?DAIGOには関係ないからね?もう本当に関係ないからね?