庭で山鳩が鳴いている。

  ホホーッホッホー     ホホーッホッホー  ホホーッホッホー……。

  優しい声だ、と静江は思う。

  かつての彼女にとっては、夏の太陽が傾き始める時刻に聞こえるこの鳴き声は、そろそろ夕食の準備に取りかかり、また幼い子供達には散らかしたおもちゃの片づけのタイミングを知らせる合図でもあった。三人の子供たちは、おもちゃ箱を開け閉めするだけでも可愛い嬌声をあげてじゃれあっていた。それは台所で肉が焼ける音や香りとともに、主婦としての確実で幸せな生活を彼女に実感させてくれるものだった。



あれから三十年も経ったのか……。

静江は大きくため息をついた。

ため息の原因は、末の息子の聖也にあった。



 

 

   三人兄弟の中で一番片付けの苦手だった聖也は、もう三十七歳だ。すらりとした体躯に母親譲りの甘い顔立ちで、昔からよくモテた。

  誕生日。バレンタインデー。体育祭。卒業式。高校時代のアルバムにはどのページをめくっても、彼の周囲で熱い視線を送る複数の女の子の姿が写り込んでいる。そして成人してからというもの、酒場で狙いを定めた女を彼は必ず落としてきた。狙っていない女まで自分から落とされに近づいてきた。

  女には不自由しない________    。  我が息子ながら、そんなセリフが彼以上に似合う男がいるだろうかと静江は思う。

  それでも、この年になってもそれらの恋愛が一つとして成婚に至らなかった理由は何だったか。ここに思いを馳せるたび、静江の胃にはどんよりした気体が生まれ、やがて大きな靄となって胸につかえる。これまでは聖也が繰り返してきた場当たりな恋愛に家族中で気を揉んではいたものの、いずれ時が満ちれば彼も上手に相手を見定めるだろうと大きく構えてきた。それだけに、今の彼が溺れる「最後の恋愛」は、かつてないほどのっぴきならない問題として、静江だけでなくこの石坂家の者すべてを悩ませているのだった。



 食卓で一人ぼんやりと沈んでいる間に、 山鳩は飛び去っていた。

 あたりを夕闇が包み始めていた。

                                                                                                    ~~ 続く   (すべてフィクション。 )          

暇だ。。。DAIGOどうしてっかな。いや別に気にしてないけども。