自律神経とブレスコントロールと心理的解放

【こじれた呼吸と演奏のブレスコントロール】

レッスンで演奏の不調の方と会うたびにしみじみ思う。

多くの管楽器奏者の呼吸は、こじれまくっている、と。

これは私自身もそうだったので自分の体感としても感じていたこと。

吐く息を制御することに強く意識を向けてトレーニングしたことで起きた弊害でもあるし、

ブレスコントロールは演奏技術の上で重要なだけに、その影響は大きい。

人間の呼吸は自律神経と深く関わっている。
吸う＝交感神経の働き
吐く＝副交感神経の働き

交感神経は生理学的には活性化した状態。
危機に対して身を守る時もあるし、ワクワク楽しい活性もある。

脳や全身に酸素を多く取り込み、活性エネルギーを思考や動きに使う。

副交感神経は穏やかに落ち着く状態。
リラックスして安全を感じる時もあるし、緊張の度がすぎて虚脱状態になる時もある。
身体に起きた活性を解放する脱活性の働きにより、息を吐き、リリースする。

というふうに、吐く息は、人体にとっては「解放の動き」のはずなのに、
楽器演奏の修行とともに、呼吸はガマン・忍耐・ジャッジ（良いか悪いかの判定）にまみれてしまった。

演奏する私たちも生き物なのです。
交感神経と副交感神経、息を吸うことと吐くこと、
この両者のバランスが取れ、快適な行き来があることで呼吸も自由になると考えられます。

「うまくいかなかったらどうしよう」

「もっと吸わないとダメだ」
「恥をかく、怒られる、席を奪われる」
失敗への不安と呼吸は容易く繋がります。
恐怖観念と呼吸は紐付けされやすいと考えています。

この強迫観念はどうして生まれたのか？
誰かのOKをもらわないと上手くなれないのか？
一人で森の中や海を見ながら楽しく吹いているうちに自然にうまくなった人はいないのか？

こんなに演奏が大好きで音楽を愛している人たちが、
どうしてこんなに不自由な呼吸で演奏するようになってしまったのか？
なぜここまで身体に染み込んでしまったのか？

レッスンで生徒さんに身体の使い方をお伝えしているうちに抱く、このやるせない想い。

そして、不安や恐怖という心理からくる過剰活性により呼吸はこじれ、演奏時以外の生活からも根深く影響を受ける。
演奏とは無関係の日常生活の中で受けたストレスによる交感神経の過剰活性からも、呼吸の状態は影響を受けます。

「呼吸」は自律神経と深く関わり、実はさまざまな出来事から影響を受けている動きであることを、
息を使う演奏者は知っておくと良いと思います。

その不調は単なる「あがり症」「練習不足」「能力不足」とは別の原因によるものかもしれない。

【打開策はあるのか】

生理学的な観点での自己理解と、自己の使い方を丁寧に探究することが打開策になると考えます。
私自身は、AT(アレクサンダー・テクニーク）とポリ・ヴェーガル理論、SE心理療法を取り入れてきました。

まずは自分の心の平安を大切にすることから呼吸の見直しをします。

睡眠前や安静時の呼吸を味わう時間をとろう。

身体が自然に呼吸させてくれている、その静かなあたたかい波を感じよう。

この動きからスタートするブレスコントロールをイメージしよう。

人間にとって健全な呼吸を取り戻し、
ダイナミックな演奏のブレスコントロールにつなげる具体的なプロセスを研究しよう。

プレッシャーはリラックスと交互にバランス良く。
自分の身体とつながって自律神経の変化をうまくキャッチして調整することを学ぶ。

まだまだできることはたくさんあります。

昨今のスポーツ界では、特に若い人たちの教育方法に新しい風が吹いています。
音楽の世界にも変化が起きてほしいと思います。

※ 嶋村のレッスンでは、アレクサンダー・テクニークによる身体の使い方のレクチャーだけでなく、ご相談いただいた内容や生徒さんのご希望により、自律神経系や生理学的な関連性を紐解き、優しい自己理解による心理的な解放をサポートしています。

安心安全で自然な呼吸、豊かな音、自由な演奏のヒントを一緒に探究しましょう。

写真はモッコウバラと春の富士山。

好きなもの、近づいて見たり遠くを見渡して見たり。

視覚も自由に呼吸も自由に。

たまには自然の中へどうぞ。

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嶋村順子
e-mail：junko.at.lesson@gmail.com