グレッグ先生の授業「まずは原理を」 | 音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

音楽家のためのアレクサンダー・テクニークレッスン〜フルート奏者嶋村順子

♪アレクサンダー・テクニークを演奏に生かすレッスン♪
~ココロを自由に、カラダも自由に、自分らしく生き、演奏する~
アレクサンダー・テクニーク教師&フルート奏者の嶋村順子です。
演奏者の心理的・身体的問題を解決する方法を探求しています。

いま、BODY CHANCEにはオーストラリアからグレッグ・ホールダウェイ先生が来日して、

プロコースの授業やレッスンをしてくださっています。

 

グレッグ先生は元バレエダンサーでもあり、

オーストラリアの大学や音楽学校などで、

長年ダンスとアレクサンダー・テクニークを教えています。

また、生物学、解剖学、運動生理学、スポーツ科学、心理学など、

人間のあらゆる側面に科学的に精通していらっしゃいます。
 

そのたたずまいは穏やかなのに一分の隙もなく、

紳士的でチャーミングなスマイルを絶やさないまま、

鋭く正確な分析力と的確なレッスンで、私たち生徒に新しい気づきをポンポン与えてくれます。

 

先日受けた授業の中で印象に残った言葉は

 

『アレクサンダー・テクニークというものは、

そもそもすでに起きていることに協力的になること』

 

 

ここでいう「そもそも起きていること」とは、人間に備わっている「反重力反射」などです。
反重力反射というと難しそうですが、

地球の重力の中で人間が直立して姿勢を制御できるために備わっている

バランス機能だと言えばなんとなく理解できますでしょうか。

この機能が備わっているおかげで、

私たちは自然に起き上がり、座り、立ち、動くことができるのです。

 

そういえば、わざわざ上に向かって(重力の反対方向に)立とうと思わなくても

自然にやっているなぁ。

立ったり歩いたりし始めた赤ちゃんなんて、

誰にも教わっていないのにすっくと立つもんなぁ。

ですよね。

これって、重力との関係で自然に起きることだったのね。ふむふむ。

と改めて思い出します。

 

前置きが長くなりましたが、グレッグ先生は

 

「アレクサンダー・テクニークは何かを『する』ものではなく、

そもそも人間に備わっている機能に『協力する』」ことだ」

 

と繰り返していました。

 

例えば、私がフルートを吹く時の腕の使い方が気になっていたとします。

そこで、

「腕はまず指先から動きだして、二の腕の仕事は最後にする。

腕は鎖骨と肩甲骨も含めてダイナミックに動ける。

腕の動きに肋骨も柔軟についていって動ける。」

など、身体の作りに沿って効率的に使おうとしたとします。

これはこれで大事な「動きのプラン」です。

 

でもその時、頭や、それに続く身体のどこかが

少しでも重力に引っ張られて下へ落ちたり固まっていたりしたら、

腕どころか、身体全体に下向きのプレッシャーがかかり始め、

『動きのプラン』はうまくいかなくなるのです。

 

逆にいえば、


頭と首と背中が自由になって、姿勢制御のシステムが完全に使える状態であれば

『動きのプラン』はその知識通りに勝手にうまくいくということです。

 

グレッグ先生曰く、

 

『身体の部位(パーツ)を適切になるように「いじる」ことはできるけれども、

それだけではすぐに元のクセのある使い方に戻ってしまう。

プライマリー・コントロール(※アレクサンダー・テクニークで最優先すること。頭と脊椎の自由な協調状態のこと)をうまく使うことで、

部位(パーツ)の適切な状態を持続しやすくなる。』

 

『まずは首が緩んで頭が動いて背中が広く長くなって、

それらに続いて身体全体が反重力反射に協力し続ける。

(これはATの原理であり、「アレクサンダー・プラン」ともいいます)
そして、「動きのプラン」をやってみるという順番。』

 

過去のグレッグ先生のレッスン記録を見てみました。

 

20125

「アレクサンダー・テクニークとは、何をするにあたってもまず原理がある。」

「原理に従えば、あとは自然についてきて、ふさわしいバランスがやってくる。」

 

20102

「身体のコーディネーションを作ってから動きをやってみる。」

「コーディネーションが良ければ自然に良いことが起きる。」

「やっている動作に注目してしまう習慣をやめて、全体のコーディネーションに注目する習慣をトレーニングしたい。」

「行動の前に余計な準備をして結果的にそれが邪魔になっている場合、アレクサンダー・テクニークはその不必要な準備を予防するテクニックになる。」

 

20087

「頭を見つけるだけ。頭の位置をコントロールするのではない。」

「自然の動きと協力して、頭を見つけ、動くことを許可する。」

「無意識にやっている不必要な動きなのか、自然と強調した動きかどうか。どちらを選択するのか。」

 

ずっとさかのぼっても同じことをおっしゃっています。

 

「まずは原理を」「まずはプライマリー・コントロールを」

「まずはアレクサンダー・プランを」
 

グレッグ先生だけでなく、ほかの先生方もみなそうです。

「動きのプラン」への提案には先生によって個性や違いもありますが、

「アレクサンダー・プラン」に関しては、伝え方は色々あっても、

とにかくみなさん繰り返し繰り返し同じことを伝えていらっしゃいます。

 

まったくもってアレクサンダー・テクニークとはそういうものなんですね。

同じことを繰り返し言い聞かせることが本当に必要な私たちなんです。

 

私が今回の授業でグレッグ先生から受け取ったメッセージは、

 

『人間に本来備わっている機能に協力することで、間接的に動きがうまくいく。

それは自然に起きることなんだ。

 

それをうまくいかせるように、本来の機能をあなたは理解しなくちゃいけない。

自分の為に。

 

そして、一番大事なのは、

その機能が本当に自分にもちゃんと備わっているという事を

完全に信じきることなんだよ。』

 

 

今回日本にいらっしゃる間に、

もっともっとグレッグ先生から学びたいと思います。