「背中がこって痛い」~楽器の構え方にひそむクセ(腕)→ http://ameblo.jp/espressivo1214/entry-11291356926.html で腕の使い方のクセについて書きました。
これを具体的に解剖学の情報と共に振り返ってみたいと思います。
まず、腕の構造を見てください。
薄い茶色に色がついている、鎖骨、肩甲骨、上腕骨、橈骨、尺骨、そして手の骨、
これら全てが腕の構造です。
自分の腕の動きが鎖骨や肩甲骨の動きも含んでいることを知らなかった私は、
なにしろこの実際の構造からとっぱずれた腕の使い方をしていました。
痛めるはずです。無知ってコワイですね。
肩甲骨についてはまたいずれ他の話題でも登場すると思いますが、
今回は「肩甲骨は結構自由に動ける骨である」ことをお伝えしておきたいと思います。
肩甲骨は体幹などとの結びつきがゆるやかな骨なので、
肋骨の上で想像以上に大きくスライドするように動けるのです。
「鎖骨も肩甲骨も腕の動きと共にダイナミックに動ける」という情報を覚えておいてください。
その様子が下の図です。
水色が肩甲骨です。
右の図では腕を前に持って行った時に肩甲骨もスルッと前方へ移動していますね。
薄い緑色の鎖骨もググッと前に動いています。
腕を動かすと、鎖骨も肩甲骨も一緒に動いてくれるのです。
骨の可動域を知ることは、腕を動かす際にとても助けになります。
フルートを構える、カバンを持つ、読書の本を持つ、飲み物を口に運ぶ、など
腕を持ち上げる動作をする時に私がやっていたクセは、
まず一番最初に二の腕、つまり上腕から動かし始めることでした。
この上腕部を持ち上げる仕事をしているのは、三角筋です。
身体の地図の話になると、どうしてもガイコツ君が頻繁に登場します。
お好きでない方、ごめんなさい。
三角筋は次の真横から見た図のように、
肩と上腕部の前から後ろまでをぐるっと包んでいます。
前部・中部・後部の三つからなっていて、
それぞれの場所で重いものを持ち上げる仕事などをやってくれます。
これは三角筋 こちらは僧帽筋
三角筋の後ろの部分は肩甲骨と繋がっているのですが、実はここがポイントなのです。
重いものを持ち上げる時、
しっかりと持ち上げられるように、後部の三角筋が収縮すると同時に、
僧帽筋という大きな筋肉などが肩甲骨を固定します。
肩を傷めないように防御してくれているのです。
え? 後部の三角筋を使うと肩甲骨が固定される?
・・・ということは、
本来はダイナミックに動けるはずの肩甲骨が
後ろ側に引き寄せられて固定されてしまうってことですね。
腕の可動性がここで大きくダウンしてしまいました。
その状態のまま楽器を持ち上げ続けたり、
腕を高いところで使い続けたりしたらどうなるかと言うと・・・
痛めるか、疲れやすいか、かなり効率の悪い使い方になってしまうのは確かです。
それでは今度は改善パターンを説明します。
二の腕(上腕)ではなく、肘の下(下腕)をまず曲げる動きを先にやるようにします。
上腕部分は休ませたまま(三角筋が働かないので肩甲骨はフリーです)
肘だけをたたむように曲げてみます。
この時に使っているのは肘の屈曲の仕事をする上腕二頭筋です。
下の図の通り。biceps = 上腕二頭筋です。
力こぶを作る筋肉と言えば分かりやすいですね。
上腕二頭筋だけで持ち上げてみて、
高さがまだ足りない分を、次の段階で三角筋によって持ち上げるのです。
その時、
肩甲骨と鎖骨の可動性を思い出しながらやってみると、もっと肩周りが楽な感じになります。
後部の三角筋にはあまり任せないで、
腕を身体の前で使うことを意識してやってみると良いと思います。
こうすれば、肩甲骨がまだフリーな状態で持ちあげることができます。
筋肉の収縮も効率的なので疲れにくくなります。
これで必要以上の筋肉緊張を手放すことが可能になりました。
何かを持ち上げる動作をする時、
以前の私のように肩周りや二の腕が大活躍してやっている方、
今回ご紹介した肘を曲げることから始める動作に変えてみてください。
きっといいことがありますよ!
まず最初に「頭と首が楽で自由に動けるように~」と意図してから、さあどうぞ。
実は、私と同じように二の腕から使い始めるクセを持っていて、
ATのレッスンでアドバイスを受けていた方が他にも結構いらっしゃいました。
楽器を持って演奏する管楽器や弦楽器の方、
楽器に手を伸ばして演奏するピアニストや打楽器奏者、
そして腕を上げて仕事をする指揮者の方。
みなさんの改善された後の動きは、本人にとって楽で演奏しやすいだけでなく
響きが豊かになり、その姿はとても優雅で
より繊細かつダイナミックな音楽的表現が可能になったように見えました。
腕のことを理解すると、他に呼吸などにもよい影響が出てきます。
その話題もいずれご紹介したいと思います。