最高裁のホームページで公開されました。
今年の修習予定者の方は、熟読することが必要に思います。
(弁護士会等は給費制の維持を訴えていますが、財政再建、支出見直しの論調が強まる中で、給費制の復活なかなか厳しいものだと思います。ゼロ(政府側の態度)か100(弁護士会などの態度)かではなく、バランスのとれた解決策は見出させないものか、と思います)
司法修習生の修習資金の貸与等について(最高裁ホームページ)
http://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/taiyo.html
「当初から修習資金の貸与を受けることを希望する新64期司法修習生採用予定者は,平成22年9月9日(木)から10月4日(月)(必着) までの間に,申請必要書類を提出してください」
とあり、修習の申込みとは分離した手続になります。
FAQもかなり詳細になっています。
修習資金貸与FAQ ~これから貸与を受ける方へ~
http://www.courts.go.jp/saikosai/sihokensyujo/taiyo_faq1.html
興味深い事案。
事件番号 平成20(あ)720
事件名 詐欺被告事件
裁判年月日 平成22年07月29日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集等巻・号・頁
原審裁判所名 大阪高等裁判所
原審事件番号 平成19(う)1776
原審裁判年月日 平成20年03月18日
判示事項
裁判要旨 第三者を搭乗させる意図を秘して国際航空運送に係る航空会社関係係員から自己に対する搭乗券の交付を受ける行為が詐欺罪に当たるとされた事例
決定文全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100802104349.pdf
「(2) 本件において,航空券及び搭乗券にはいずれも乗客の氏名が記載されているところ,本件係員らは,搭乗券の交付を請求する者に対して旅券と航空券の呈示を求め,旅券の氏名及び写真と航空券記載の乗客の氏名及び当該請求者の容ぼうとを対照して,当該請求者が当該乗客本人であることを確認した上で,搭乗券を交付することとされていた。このように厳重な本人確認が行われていたのは,航空券に氏名が記載されている乗客以外の者の航空機への搭乗が航空機の運航の安全上重大な弊害をもたらす危険性を含むものであったことや,本件航空会社がカナダ政府から同国への不法入国を防止するために搭乗券の発券を適切に行うことを義務付けられていたこと等の点において,当該乗客以外の者を航空機に搭乗させないことが本件航空会社の航空運送事業の経営上重要性を有していたからであって,本件係員らは,上記確認ができない場合には搭乗券を交付することはなかった。また,これと同様に,本件係員らは,搭乗券の交付を請求する者がこれを更に他の者に渡して当該乗客以外の者を搭乗させる意図を有していることが分かっていれば,その交付に応じることはなかった。
2 以上のような事実関係からすれば,搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかは,本件係員らにおいてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから,自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘して本件係員らに対してその搭乗券の交付を請求する行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず,これによりその交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかである。被告人の本件各行為が詐欺罪の共同正犯に当たるとした第1審判決を是認した原判断は正当である」
real or fictional?(hopping around)
http://www.law.tohoku.ac.jp/~hatsuru/hop/2010/08/real_or_fictional.html
「たとえば,会社法を学ぶときは,「会社」っていう訳の分からないモノが存在していて,なんて考えるよりは,株主・債権者・経営者っていう3人のアクターの間をどういうふうに利害調整するか,って考えることの方が単純明快なわけ。で,実際,たいていの会社法の教科書は,そういう視点から書かれているはずだ(そうじゃないのもたまにあるwww)。ちなみに,会社法を教えるときは,「会社法ってこの3人しかアクターがいないから,もっとたくさんのアクターが登場する民法なんかと比べると,単純明快で楽だよねー」って最初に言うことにしてるんだけど,どうもあまり実感されていないっぽいorz」
同感です。利害関係者の利益調整の法と考えると、会社法が体系的に見えるような気もしますし、あらゆる問題を良い意味でシンプルにすることができると思います。
ただ・・・。
「けれども,そういう国とか地方公共団体っていうのは切り離された存在じゃなくて,僕ら国民・住民の税金で運営されているものだよね,っていうことになると,「そのように追加給付をするなら,その分,消費税(でなくてもいいけど)を上げるんですか」っていう話になるし,あるいは,「そのように基準を緩めるなら,不可避的に不当な受給者の割合も増えて,その分,無断な給付にたくさんの税金が回ってしまう(そしてその分,また増税する)けど,それでもいいんですか」っていう話になる。後者の例は,生活保護とか水俣病認定基準とかに当てはまる可能性があって,ひょっとすると,現行基準っていうのは,その辺のコスト・ベネフィットのバランスを考えて作られているのかもしれない」
と、生活保護などの社会保障や国家補償の面でもコメントしていますが、(国の責任を問わず、国民の生活水準次第で支給される)生活保護と、(国に一定の責任がある)水俣病の認定基準を同列に並べるのは疑問。生活保護などの社会保障は国家財政をある程度考慮してもいいと思うのですが、水俣病の認定基準の国家補償の局面では、国家財政の点を簡単に前面に出していいのかは難しいところです。ただ割り切ってしまうと、不法行為債務者に財産がなければ、被害者たる不法行為債権者はその無資力リスクを背負わなければならないわけでもありますが・・・。
ただ、これまでの社会保障や国家補償の局面で、「原資は国民の税金」、「多額の支給は増税に導く可能性がある」という視点が抜け落ちていたのは事実だと思います。でもそれが強調されすぎると、「国に支給を求めたり、賠償を求める人たちを、税金でまかなうなんて不公平だ」という論調が出てくると、そういう訴訟の原告ないしその代理人に対するバッシングを誘発する危険も。森田先生もそこまで言っているとは思いませんが・・・。
さらに・・・
「他にも,「増税するなら法人税」なんてことをおっしゃる人々も,法人の背後にいるのは株主・債権者・経営者だよ,っていうことを理解していれば,「法人税増税したら,給料減ったり,解雇されたり,会社が外国逃げたりするでしょ」という予測がつくはずなんだけどね。いや,そういう帰結でも構わない,と腹をくくっているのならいいんだけど(いいのかw)」
とコメントされており、この点については、法人税減税派の人たちがよく言うのですが、本当にそうなのかなあと私は考えています。
例えば、税金は安いけど、犯罪に巻き込まれる危険があるとか、有能な人材が確保できないとか、国家ぐるみの謀略に巻き込まれるようなリスクもあるわけで、法人税を増税したからといって、そう簡単に「法人」が外国に逃げちゃうのかなあと思います。ただ、増税されれば、やっぱり派遣切りや、給料カットはありそうな気も。でも、それは労働規制次第かも。法人税増税派の人たちの多くは、労働規制強化派なので、表向きの解雇とか給料カットは起こらない可能性も(ただし、偽装請負とかの「抜け道」は起きうる)。この辺については、直感に過ぎないので、実証研究があったら見てみたいです。
でも、法人税を下げれば、会社に競争力がついて利益が出て、その結果従業員に利益が還元され、国民はハッピーになれるとも思いません。株式会社の利益は、「会社の所有者」(厳密な意味での所有者ではないですが)たる株主に還元されるものが会社法の建前ですから。そして、そこで言う「株主」っていうのは、結局は株式を持ち合いしている法人だったり、ファンドだったりで、一般市民とは遠く離れた人たちです。だから、法人税を下げれば、万事うまくいくかのような議論には賛成しかねます。
まあ、法人税を上げても、節税のテクニックが駆使されそうな気がするので、やっはり効果はないんだろうとも思います。他方で、法人税を下げて、消費税を上げれば、モノが売れなくなるわけで、法人の利益は結局上がらないんじゃないかと。
考えてみると、よく分からなくなる問題です。
行政訴訟でも実体判決が増えてくれると、判決効が問題となる局面が多くなるように思います。
興津征雄『違法是正と判決効-行政訴訟の機能と構造』
http://www.koubundou.co.jp/books/pages/31213.html
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判例は否定説のようです。
最判昭和57年1月19日判時1032号55頁
「原審は、被上告人に対し、上告人から貸金債務の弁済を受けるのと引換えに、右貸金債務の弁済を担保するために上告人所有の不動産について経由された被上告人を抵当権者とする抵当権設定登記の抹消手続をするよう命じている。しかしながら、債務の弁済と該債務担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは、前者が後者に対し先履行の関係にあるものであって、同時履行の関係に立つものではないと解すべきであるから(大審院明治三七年(オ)第三〇七号同年一〇月一四日判決・民録一〇輯一二五八頁、最高裁昭和四一年(オ)第六三三号同年九月一六日第二小法廷判決・裁判集民事八四号三九七頁参照)、原審が、右とは異なる見解のもとに、債務の弁済と引換えに抵当権設定登記の抹消登記手続を命じたことは、同時履行の抗弁権に関する民法五三三条の規定の解釈適用を誤った違法があるものといわなければならない。そして、右の違法は原判決の結論に影響を及ぼすものであるが、本件では、被上告人からの上告の申立がなく、原判決を上告人の不利益に変更することが許されないので、上告人の上告を棄却するほかはない」
しかし、理由付けはなされていません。
この判決の原審 がどのような理屈で引換給付判決を下したか興味深いところですが、原審は調べることができませんでした。
事件番号 平成20(行ツ)202
事件名 白山比?神社御鎮座二千百年式年大祭奉賛会損害賠償請求事件
裁判年月日 平成22年07月22日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 判決
結果 破棄自判
判例集等巻・号・頁
原審裁判所名 名古屋高等裁判所 金沢支部
原審事件番号 平成19(行コ)11
原審裁判年月日 平成20年04月07日
判示事項
裁判要旨 神社の鎮座2100年を記念する大祭に係る諸事業の奉賛を目的とする団体の発会式に地元の市長が出席して祝辞を述べた行為が,憲法20条3項に違反しないとされた事例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=80471&hanreiKbn=01
判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100723103621.pdf
最高裁は「市長としての社会的儀礼を尽くす目的で行われたものであり,宗教的色彩を帯びない儀礼的行為の範囲にとどまる態様のものであって,特定の宗教に対する援助,助長,促進になるような効果を伴うものでもなかった」と述べていることから、従来の判例である目的効果基準を採用していると思うのですが、結論の最後の方に述べるに留まり、目的の要件、効果の要件に直接事実をあてはめているわけではないように感じます。判決文を読んだ印象論に過ぎないのですが、「目的が○○だからOK→効果が○○だからOK→だから合憲」という単純な論理構成ではなく、様々なファクターを考慮した上で、結論として目的・効果基準をクリアするとしているようです。
実はリーディングケースとされる津地鎮祭の最高裁大法廷判決(最高裁大法廷昭和52年7月13日判決民集31巻4号533頁以下)でも、
「憲法二〇条三項は、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と規定するが、ここにいう宗教的活動とは、前述の政教分離原則の意義に照らしてこれをみれば、およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、そのかかわり合いが右にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであつて、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうものと解すべきである」(a)
と目的効果基準について述べたのに続いて、
「ある行為が右にいう宗教的活動に該当するかどうかを検討するにあたつては、当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか、その順序作法(式次第)が宗教の定める方式に則つたものであるかどうかなど、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従つて、客観的に判断しなければならない」(b)
とも述べており、様々なファクターを考慮に入れるべきとの考え方を示しています((b)の部分は、目的効果基準のあてはめの際の留意点と読むのが素直でしょうか?)。
なお、「市長の祝辞が政教分離違反となるか?」というblogタイトルをつけておきながら、次のようなことを言うのは矛盾かもしれませんが、この判決から、「市長が祝辞程度述べるのであれば、政教分離違反にならない」と単純化するのは禁物で、合憲判断に至るには、行事の性質、行事の態様、祝辞の目的、影響力など多数の事情を考慮して判断されていと考えるべきでしょう。他方で、地方自治団体の首長が、新興宗教団体の活動の促進のために、「市とても全力挙げてバックアップしたい」などと祝辞を述べるようなことでもあれば、それは政教分離違反となる可能性が高いように思います。この判決を素材とした事例問題が、今後法科大学院の授業や、予備校の答案練習などで出題される可能性が高いと思いますが、その際は、おそらく判決の事実関係と若干異なっている可能性もありますので、その点には十分に留意すべきだと思います。
で、この事件は、住民訴訟です。「新司法試験的には、住民訴訟は・・・」と言う意見も多かったのですが、今年の公法系第2問からすれば、もはやそんなことは言っていられなくなってしまったように思います(なお、法実務における住民訴訟の重要性については、斎藤浩=小山剛=中林暁生=榊原秀訓「新司法試験問題の検討2010 公法系科目試験問題」法学セミナー668号42頁[斎藤発言]を参照)。憲法は実際の訴訟や実務でどのような形で発現するのかがつかみにくいところでありますので、判例や事例問題を通じて、憲法問題がどのような形で訴訟に現れるのかを同時に考えることも必要であると思います。
日弁連ホームページより。
環境法に関する法科大学院サマースクール(日弁連ホームページ)
http://www.nichibenren.or.jp/ja/event/100904_2.html
環境法に関心がある人にとって、興味深いプログラムになっていると思います。
なお、環境法つながりですが、大塚直『環境法 第3版』の発売日が8月6日に決まったようです。
大塚直『環境法 第3版』(有斐閣)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641135611
羽鳥書店から出版。
内田貴『制度的契約論――民営化と契約』
http://www.hatorishoten.co.jp/56_82.html
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