京大カンニング事件の影響でしょうか?


司法書士試験における途中退出について(法務省ホームページ)

http://www.moj.go.jp/content/000071958.pdf


京大カンニング事件の報道はすっかり小さくなりましたが、今後、国家試験、入学試験、そして各種学内の試験において、監督体制が強化されることは、必至でしょう。


定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて(法務省ホームページ)

http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/saigai0012.html


一般論としては法務省の示す通りだと思いますが、被災の程度は場所によって異なりますから、被災した=延長が認められる、とは常に認められるとは言えないでしょう。また定款で定められた時期から、どの程度まで延長することが認められるのか、はなかなか難しい問題であろうと思います。



落合誠一『会社法要説』(有斐閣、2010年)

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641135765


伊藤靖史先生による書評。

 

会社法要説(いとう Diary ~ academic and private)

http://blog.livedoor.jp/assam_uva/archives/51964838.html


会社法要説/落合 誠一
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はしがきでは、「本書は、これから会社法を学ぶとする方々にも、また一応会社法を野勉強した方々にも有益であると考えている」(ⅰ頁)とありますが、読後感としては、一通り会社法を勉強した人向けかなと思いましたが、それでも応用的問題に触れているわけでもないですから、一通り勉強した人が、会社法の全体像、基本原理を確認するために適しているのかもしれません。しかし、位置づけは難しい本だなあと感じます。


読んでいて、「なるほど」と思った面も多いです。他方で叙述は、網羅的に取り上げられているのではなく、偏りがあり、ときに最近の判例が事案つきで詳しく紹介されている部分がある反面、(新司法試験的には重要な)組織再編はあっさり書かれていますし、さらには組織再編につき、条文の構造とは違って書かれているので、初学者の方には若干戸惑うかも知れません(これに対して、条文構造の通りでは、初学者が戸惑うという方もいるでしょう。しかし、それでも、まず条文構造を説明した上で、それでは理解が難しいから、行為類型毎に説明する、との説明が必要だと考えます)。また、随所随所に落合先生の考え方が出ています(例えば、主要目的ルールは廃棄すべきであり、(主要目的ルールは)ブルドックソース最高裁決定とも整合しないとの見解が、210頁以下で示されています)。


さらに割と重要だと思われることが書かれていなかったりします。例えば、機関につき、会社法の39通りの機関設計が可能である点は、一切触れられていません。内部統制システム構築義務をめぐる判例が紹介されている反面、一般論としての内部統制システム構築義務と善管注意義務の対応関係は、少なくとも初学者には分かりにくいと思いました。株式については、株式の概念、株式の譲渡に関する問題は、ほとんど書かれていません。


とは言え、会社法は、条文に従い、網羅的に取り上げると、それこそ条文の説明に終わってしまい、今度は通読が難しくなる危険もあるので、難しいところですが。


なお、同書の第12章の「会社グループの規制」は、読んでいて色々考えさせられました。事例問題が載っているわけではないですが、会社グループをめぐる問題は、立法論のみならず、現行法の解釈論としても最近議論のあるところてあり、かつ、現行法をベースとしても、事例問題として各種試験に出題される可能性はあるので、一読されることをおすすめいたします。

会社法入門書については、神田秀樹『会社法入門』(岩波新書、2006年)を挙げられることも多いのですが、これもまた会社法の入門としては、ちょっと難しいかな、と思ったりします(信頼はできますが)。また、神田先生の新書については、刊行から5年経過しているので、古くなった印象は否めません。


じゃあどうすれば良いかと言うと、会社法の学習は、入門書ではなくて、いきなり『LEGAL QUEST 会社法[第2版]』(有斐閣、2011年)から始めればいいのではないか、と思います(もちろん、条文を参照しながら)。


会社法 第2版 (LEGAL QUEST)/伊藤 靖史
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会社法の学習も、様々なアプローチがあり、それこそ最近の問題(ファイナンス、企業買収、企業グループをめぐる問題)がたくさんあるところで、人によっては「はまってしまう」場合もあります(しかも、場合によっては、法律だけでなく、経済学、会計、企業論などにも関心が進んでしまう可能性も)。しかし、新司法試験(司法研修所入所試験)の合格を目指す場合は、それらに「はまる」前に、新司法試験の過去問(短答・論文)をみて、新司法試験が求める方向性をつかむことも大切だと思います。他方で、法学部・法科大学院時代に、企業買収に関する下級審の裁判例を、きちんとした指導者の下で、じっくり読む機会は、例え試験に直結しなくとも、有益であろうとも思いますし、そこでの経験は試験後にアピールできたり、スキルとして生きるポイントではないかと思います。


落合誠一『会社法要説』(有斐閣、2010年)186頁。

「株式会社という形態を使ってビジネスを始めたいとする人がいるにもかかわらず、国が1000万円を用意しなければそれはできないという必要が本当にあるかは、そう簡単な問題ではない。さらに株式会社形態は皆が広く容易に活用できるものとすべきであり、そうすることにより、私人の起業精神がよりエンカレッジされ、トータルとしてわが国経済の活性化・発展にとって有益となるかもしれない。そう考えると、最低資本金制度を廃止した会社法の立場は、適切なものであったとみるべきであろう

 このようにいうと、すぐに株式会社形態の濫用が増えるのではないかとの反論があがる。しかしそもそも最低資本金制度が株式会社の濫用の防止に有用であったかは、それ自体相当な疑問がある。また会社を場として活動する様々なステークホルダーは、慈善あるいは公益のためではなく、基本的にそれぞれの自由意思で各自の利益の最大化を求めてステークホルダーになるのであるから、自らの責任において行動すべきが原則(ビジネスにおいて自己責任が基本である)である。したがって、法人格の濫用により皆が迷惑を受けるようになることが心配されることを理由として、『株式会社形態の利用を望む場合には、少なくとも1000万円を用意すべし』として国家がその利用に事前的な介入をする必要はないはずである。もし介入することがあるとしても、それは一般的に事後的なもの(例えば、裁判所による法人格濫用の法理の適用)にとどめるべきものであろう。国家によるパターナリスティック(paternallistic)な積極的な介入は、ビジネスの世界においては基本的に好ましいものではないからである」


賛成です。


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以前速報でお伝えした判決 につき、最高裁のホームページでアップされました。


最判平成23年03月24日
裁判要旨
1 居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約は,敷引金の額が高額に過ぎるものである場合には,賃料が相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,消費者契約法10条により無効となる
2 居住用建物の賃貸借契約に付されたいわゆる敷引特約が消費者契約法10条により無効ということはできないとされた事例

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81180&hanreiKbn=02


この判決が言う、


「賃貸借契約に敷引特約が付され,賃貸人が取得することになる金員(いわゆる敷引金)の額について契約書に明示されている場合には,賃借人は,賃料の額に加え,敷引金の額についても明確に認識した上で契約を締結するのであって,賃借人の負担については明確に合意されている。そして,通常損耗等の補修費用は,賃料にこれを含ませてその回収が図られているのが通常だとしても,これに充てるべき金員を敷引金として授受する旨の合意が成立している場合には,その反面において,上記補修費用が含まれないものとして賃料の額が合意されているとみるのが相当であって,敷引特約によって賃借人が上記補修費用を二重に負担するということはできない。また,上記補修費用に充てるために賃貸人が取得する金員を具体的な一定の額とすることは,通常損耗等の補修の要否やその費用の額をめぐる紛争を防止するといった観点から,あながち不合理なものとはいえず,敷引特約が信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであると直ちにいうことはできない」


という論理を普遍化できるとした場合、現在消費者契約法10条に反して無効かが下級審で分かれ、一部事件が最高裁で審理中の更新料につき、最高裁は原則有効の立場を示す可能性が高いように思いました。というのは、更新料がある賃貸借契約の場合も、更新料の反面、賃料が(更新料がない場合に比して低額に)設定されているわけでありますし、また、それに基づいて、契約当事者が合意し、かつ、賃料+更新料をトータルで評価でき、かつ、更新料の負担が不当なものとは言えないからであり、上記で引用した論理は、更新料の場合にもあてはめることが可能だからです。

ただし、貸主等が更新料の存在を開示していない場合は、更新料の特約そのものの不成立と判断される可能性はあります。また、借地借家法上の法定更新制度からすれば、要件が充足すれば更新されなければならないのであるから、別途、更新料という負担を借主に強いることは許されない、という論理も成り立ち得ます。その意味で、更新料が無効になる可能性も、否定はできません。


※アンダーライン、強調はESP。