落合誠一『会社法要説』(有斐閣、2010年)
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641135765
伊藤靖史先生による書評。
会社法要説(いとう Diary ~ academic and private)
http://blog.livedoor.jp/assam_uva/archives/51964838.html
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はしがきでは、「本書は、これから会社法を学ぶとする方々にも、また一応会社法を野勉強した方々にも有益であると考えている」(ⅰ頁)とありますが、読後感としては、一通り会社法を勉強した人向けかなと思いましたが、それでも応用的問題に触れているわけでもないですから、一通り勉強した人が、会社法の全体像、基本原理を確認するために適しているのかもしれません。しかし、位置づけは難しい本だなあと感じます。
読んでいて、「なるほど」と思った面も多いです。他方で叙述は、網羅的に取り上げられているのではなく、偏りがあり、ときに最近の判例が事案つきで詳しく紹介されている部分がある反面、(新司法試験的には重要な)組織再編はあっさり書かれていますし、さらには組織再編につき、条文の構造とは違って書かれているので、初学者の方には若干戸惑うかも知れません(これに対して、条文構造の通りでは、初学者が戸惑うという方もいるでしょう。しかし、それでも、まず条文構造を説明した上で、それでは理解が難しいから、行為類型毎に説明する、との説明が必要だと考えます)。また、随所随所に落合先生の考え方が出ています(例えば、主要目的ルールは廃棄すべきであり、(主要目的ルールは)ブルドックソース最高裁決定とも整合しないとの見解が、210頁以下で示されています)。
さらに割と重要だと思われることが書かれていなかったりします。例えば、機関につき、会社法の39通りの機関設計が可能である点は、一切触れられていません。内部統制システム構築義務をめぐる判例が紹介されている反面、一般論としての内部統制システム構築義務と善管注意義務の対応関係は、少なくとも初学者には分かりにくいと思いました。株式については、株式の概念、株式の譲渡に関する問題は、ほとんど書かれていません。
とは言え、会社法は、条文に従い、網羅的に取り上げると、それこそ条文の説明に終わってしまい、今度は通読が難しくなる危険もあるので、難しいところですが。
なお、同書の第12章の「会社グループの規制」は、読んでいて色々考えさせられました。事例問題が載っているわけではないですが、会社グループをめぐる問題は、立法論のみならず、現行法の解釈論としても最近議論のあるところてあり、かつ、現行法をベースとしても、事例問題として各種試験に出題される可能性はあるので、一読されることをおすすめいたします。
会社法入門書については、神田秀樹『会社法入門』(岩波新書、2006年)を挙げられることも多いのですが、これもまた会社法の入門としては、ちょっと難しいかな、と思ったりします(信頼はできますが)。また、神田先生の新書については、刊行から5年経過しているので、古くなった印象は否めません。
じゃあどうすれば良いかと言うと、会社法の学習は、入門書ではなくて、いきなり『LEGAL QUEST 会社法[第2版]』(有斐閣、2011年)から始めればいいのではないか、と思います(もちろん、条文を参照しながら)。
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会社法の学習も、様々なアプローチがあり、それこそ最近の問題(ファイナンス、企業買収、企業グループをめぐる問題)がたくさんあるところで、人によっては「はまってしまう」場合もあります(しかも、場合によっては、法律だけでなく、経済学、会計、企業論などにも関心が進んでしまう可能性も)。しかし、新司法試験(司法研修所入所試験)の合格を目指す場合は、それらに「はまる」前に、新司法試験の過去問(短答・論文)をみて、新司法試験が求める方向性をつかむことも大切だと思います。他方で、法学部・法科大学院時代に、企業買収に関する下級審の裁判例を、きちんとした指導者の下で、じっくり読む機会は、例え試験に直結しなくとも、有益であろうとも思いますし、そこでの経験は試験後にアピールできたり、スキルとして生きるポイントではないかと思います。