の続きです
 
 
 
 
 
 
 
崎山家の幸せに変化が訪れたのは
 
私が出張施術にお伺いするようになって
 
半年ほど経った、季節が秋から冬へと
 
変わろうとしていた頃でした
 
 
 
 
急に崎山さんのお父様の体調が悪くなり、入院
 
それに伴って、崎山さんのお母様が
 
病院に詰める日が多くなり
 
崎山家の雰囲気はガラリと変わりました
 
 
 
 
今まで、お母様が手伝いに来られていたお家は
 
どこか雑然とした感じになり、
 
玄関のシューズボックスの上に
 
飾られていた季節ごとの飾りも、
 
夏のままになっていました
 
 
 

 
 
崎山さんは、今までのようにご両親のサポートを
 
受けられなくなり、明らかに疲れておられました
 
 
 
 
イライラしている様な仕草も増え
 
それが1番感じられたのは
 
息子のゆうすけ君に対する態度の変化でした
 
 
 
 
 
牛乳が大好きなゆうすけ君が、
 
自分で椅子を移動させてコップを取り、
 
いつもおばあちゃんに言っていたように
 
「ママー!ミルクちょうだい!」
 
と言うと、崎山さんは
 
ハァ~ッと大きなため息をつき
 
とてもしんどそうに牛乳を取りに行きました
 
 
 
 
そして、無言で牛乳をグラスに注ぐと
 
無言でゆうすけ君に渡しました
 
 
 
 
「ありがと!」
 
 
 
 
と大きな声で言って、ミルクを飲みながらも
 
目はお母さんの表情をじっと見つめているのは
 
 
 
 
彼も何か変化を感じているんだろうなと
 
私は、少し切ない気持ちになりました
 
 
 
 
 
 
お父様が緊急入院してから数日間は
 
会社に事情を話して、お休みしていた
 
崎山さんでしたが、翌週からは
 
ゆうすけ君を保育園に預けて
 
出社するようになり、
 
 
 
そんな環境の変化もあって、
 
とても疲れておられたのでしょう
 
崎山さんは、だんだんと
 
口数が少なくなっていきました
 
 
 
 
それに反比例するように、ゆうすけ君は
 
たくさん私に話しかけて来るようになり
 
 
 
「あのね。おじいちゃん、おなかのびょうきなの」
 
「おなかを切るんだって!こわいねー」
 
「おじいちゃんもどってきたら、
 
        ひつじさん書いてもらうんだよ」
 
 
 
 
 
 
と、私が帰り際に玄関から出ていく寸前まで
 
ずっとお話してくれ、私もゆうすけ君と
 
話すことはとても楽しくて、
 
 
 
 
 
「おじいちゃん、早く帰ってくると良いね」
 
「ゆうすけ君が待ってるから、きっと良くなるね」
 
と答えていました
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
崎山さんのお父さんが戻られたのは
 
その1月後
 
 
 
 
 
 
しかしそれは、お元気な姿ではなく
 
亡くなられてからのことでした